マーケティングの成果は従来、リーチによって測られてきた。インプレッションが多いほど、より大きなリターンの兆しと見なされていたのである。だが現在、ブランドはそうした見栄えのよい指標から、質、リテンション、エンゲージメントへと軸足を移しつつある。
デロイトは2026年版の「Digital Media Trends」レポートで、自分をファン(音楽、ビデオゲーム、スポーツ、テレビ番組、映画などのファン)だと考える消費者と、そうではないと考える消費者の支出の違いを測定した。動画ストリーミングサービスに加入しているファンは、サブスクリプションに月平均71ドル(約1万円)を支出しているのに対し、非ファンは56ドル(約1万未満円)で、その差は27%に上る。ファンのほぼ半数は、人生のさまざまな局面を通じて、自分のファンダムに一貫して時間と支出を投じていると回答している。
この支出の差は、ブランドがファンを真剣に受け止めるべき理由となる。スーパーファンやロイヤル顧客は主導権を握っており、多くの企業にとってそれを受け入れるのは容易ではない。
ブランドは誰のものか
人々とブランドとの関係をつくるのはコミュニティである。しかし多くの企業はその逆を行い、まずメッセージを構築し、それを受け取るオーディエンスを探す。だが、オーディエンスがあなたの製品をどのように、なぜ使うのかは、あなたがその製品をどう使うべきだと伝えることよりも大きな意味を持つ。
企業はコミュニティの価値を認めることはできても、それをどう築くべきかを知らない場合がある。ブランドと、そのブランドを愛する人々は、中間地点で出会い、ともに成長しなければならない。
テイラー・スウィフトが卓越したマーケターである理由はここにある。彼女は熱心なファンのコミュニティを築き上げ、いつでも彼らを動かすことができる。
その愛着はどこから生まれるのか
そうした愛着が生まれる理由は構造的なものだ。つまり、つながるための習慣や機会が体験の中に組み込まれているということである。人々には定期的に参加する理由があり、同じ関心を持つ他者と関係を築く方法がある。日曜の礼拝の後、参加者が一緒にコーヒーを飲む場面を考えてみてほしい。習慣は人々に行く場所を与え、会話は互いを結びつける。
ペロトンはトレーナーを中心にブランドコミュニティを築き、受講するセッションを通じて、人々が所属感を得られるグループを提供した。メンバーはフォローしているトレーナーについて語り合い、完了したセッション数を比較する。これはまさに、礼拝後にコーヒーを飲みながら交わされるような、共有体験に根ざした会話である。
最高の広告とは、自分が一員であると感じているものについて、人が他の人に語ることだ。企業名がその会話の一部となるのは、コミュニティが人々にそれを話題にする理由を与えているからだ。
注目を得るにはインフラが必要だ
ブランドには、人々が何に参加しているのかを把握し、その情報を使って次の接点を適切なものにする仕組みが必要である。それは、ある人がどのようにコミュニティを見つけ、何に関心を示してきたのかを知ることから始まる。
女性が所有する企業に資金調達とメンターシップの支援を提供する私の会社の財団では、創業者たちがウェビナー、紹介、ピッチナイトを通じて私たちにたどり着くことが多い。私たちは彼女たちの参加状況を追い、関連性のある別の機会を案内できるようにしている。あるコミュニティメンバーは、会員であることを「温かいハグ」と表現してくれた。それは継続的な支援から生まれるものだ。
こうした仕組みを構築しようとするブランドは、まず誰かが初めて参加した後に何が起きるのかに目を向けるべきである。その人が何に関心を持ったのかを記録し、それを使って関連性のあるフォローアップを計画する。また、メンバー同士が互いのイベントに参加したり、互いのビジネスを知る機会を共有したりしやすい環境を整え、相互支援を促進することも重要だ。
コミュニティに問いかけて意思決定することも、多くの企業が見落としている要素である。新しいフレーバーを検討している食品ブランドなら、コミュニティに意見を求めることができる。投票した人々は、自分たちがその決定に関わったと感じられる。
創業者主導ブランドの優位性
創業者主導のブランドは、価値観の一致という点で優位に立ちやすい。創業者は多くの場合、自らが何を大切にしているのかを共有できるほどコミュニティの近くで活動しており、しばしばそのコミュニティの実際の一員でもある。ブランドがより大きな組織の一部になると、応えるべき株主が存在し、達成すべき利益目標が生じる。その結果、意思決定はエンドユーザーから遠ざかる。一方で創業者は、SNSや店頭デモでオーディエンスと直接対話することが多いため、その意思決定の近くにとどまりやすい。
企業が成長するにつれて、その近さを維持することは難しくなる。何百ものブランドを抱える消費財コングロマリットの内部では、ブランドマネジャーが今年はあるブランドを担当し、翌年には別のブランドを担当するかもしれない。枠組みは紙の上には存在していても、新しいマネジャーごとの個人的な色付けがコミュニティを弱めることがある。引き継ぎのたびに、つながりは薄まっていく。
ブランドを引き継ぐマネジャーは、何を変えるかを決める前に、人々がそのブランドの何をすでに愛しているのかを理解することから始められる。コミュニティや購入者と話し、そうした会話が生まれる店頭デモの場で時間を過ごすべきである。前任チームはその紹介を行い、人々がなぜ戻ってくるのかを説明できる。企業が成長しても、その直接的な接触はブランド管理の一部であり続けなければならない。
語る前に聞く
真のコミュニティを築くブランドは、消費者に語る前に耳を傾けなければならないことを理解している。まず人々に、自社製品をどのように使っているのか、何が再び戻ってくる理由になっているのかを尋ねる。そして、その答えを自社が発信しているメッセージと照らし合わせる。彼らが製品に価値を見いだしている点は、あなたが訴求対象として選んだ点とは異なるかもしれない。
私は自分の事業にも同じ基準を課している。出入りの激しい20社のクライアントを抱えるよりも、5社のクライアントが毎年継続し、ともに成長していくほうがよい。私は以前、教育を基盤にしたコミュニティは、競争戦略では再現できない形で複利的に価値を生むと書いたことがある。これは、その主張を実務に落とし込んだものだ。リーチはいまも測定しやすく、レポート上では見栄えがよいことが多い。しかし、現代のどのブランドにとっても本当に重要なのは関係性なのである。



