NBAのスポンサーシップが、主にユニフォームに企業ロゴを掲載することを目的とした時代は終わりつつある。ブルックリン・ネッツとアリババ・グループの契約は、このビジネスが向かう先を示す好例である。
新たな複数年協定に基づき、アリババはネッツの公式テクノロジーおよびクラウドパートナーとなる。また同社は、ネッツの創立60周年記念シーズンにおいてユニフォームのパッチ(胸ロゴ)枠を確保する。財務条件は開示されていない。
今回のパートナーシップはブランディングにとどまらない。バークレイズ・センター内では、アリババのクラウド技術を活用したリアルタイム360度リプレイシステムが導入される。さらにファンは、「ネッツ・フィギュア・ラボ(Nets Figure Lab)」と呼ばれるアリーナ内体験を通じて、パーソナライズされたコレクターズカードを作成できるようになる。
こうしたアプローチは、チームとスポンサーの双方にとって魅力的なものになりつつある。テクノロジー企業はユニフォームパッチを通じて認知度を獲得すると同時に、ファンがお金を払って参加する体験そのものに自社製品を組み込むことができるのだ。
ネッツの取引は、テクノロジー企業によるスポーツスポンサーシップへの本格参入が加速する動きと合致している。このシフトは、特にNBAで著しい。同リーグのチームは長年にわたり、ユニフォームパッチを活用して新たなカテゴリーのスポンサーを開拓してきた。
多くのスポンサーにとって、テレビ中継、SNSコンテンツ、写真などを通じて露出が得られるパッチの価値は依然として高い。だが、クラウドインフラや人工知能(AI)ツールを販売する企業にとって、その方程式は異なる。彼らの製品は、パートナーシップそのものを通じてデモンストレーションできるからだ。
アリババは他のスポーツでもこのモデルを活用してきた。同社は2017年からワールドワイドオリンピックパートナーを務めており、大会向けにクラウド技術を提供している。また、NBAチャイナや欧州サッカー連盟(UEFA)、その他のスポーツ団体とも連携し、デジタルなファン体験を提供してきた。
2026年冬季オリンピックでは、アリババがリアルタイム360度リプレイシステム向けの技術を提供した。同社はまた、オリンピックムーブメント初となる公式の大規模言語モデル(LLM)の基盤技術も供給した。
ネッツとのパートナーシップは、これと同様のコンセプトをNBAのアリーナに持ち込むものだ。アリババの名前を単にブルックリンと結びつけるだけでなく、同社のテクノロジーが会場内で実際に稼働することになる。
リプレイシステムはその最も明確な例だ。ファンは、リプレイをより迅速に配信するよう設計されたシステムを通じて、マルチアングルから試合のプレーを見ることができる。これにより、アリババは選手たちのユニフォームにブランドが表示される一方で、自社製品のデモンストレーションを行うことができるのだ。
ネッツもまた、創立60周年記念シーズンに向けてこのパートナーシップを活用している。「フィギュア・ラボ」では、アリババの技術を使ってファンが自分だけのコレクターズカードを作成できるようになる。
両社にはもう一つの繋がりがある。ジョー・ツァイ(蔡崇信)はネッツの筆頭オーナー(ガバナー)であり、ブルックリン・スポーツ&エンターテインメントの会長を務めている。彼はまた、アリババ・グループの会長でもあり、創業当時から同社に関わってきた。
このような関係性が、スポーツとテクノロジーに対するツァイのアプローチと今回のパートナーシップとの結びつきを、より強いものにしている。
露出以上の価値を求めるチームとテック企業
スポンサーシップとテクノロジーを連携させているNBAチームはネッツだけではない。ゴールデンステイト・ウォリアーズは、AIクラウドインフラを運営するオーストラリア企業のIRENとユニフォームパートナーシップを締結した。ニュースメディアのAxiosの報道によると、IRENはウォリアーズのユニフォームパッチに年間5000万ドル(約79億1000万円)以上を支払っているという。この契約には、WNBAのゴールデンステイト・バルキリーズやサンタクルーズ・ウォリアーズも含まれる。
重要なのは、IRENが何を求めて投資していたかという点だ。同社は単に一般消費者に知られるブランドになろうとしていたわけではない。同社幹部がAxiosに語ったところによると、その目標はベイエリアのテクノロジーコミュニティや、将来的に顧客となり得る企業にアプローチすることだった。
ウォリアーズは他のテクノロジー企業もスポンサーポートフォリオに加えている。グーグル・クラウドやヒューレット・パッカード・エンタープライズなどが、同フランチャイズと提携している企業に含まれる。
NBA自体も同じ方向へ動いている。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、2025年に発表された複数年協定に基づき、同リーグの公式クラウドおよびクラウドAIパートナーとなった。このパートナーシップには、試合データを放送やデジタル製品向けの情報へ変換することを目的としたプラットフォーム「NBA Inside the Game」が含まれている。
このことは、クラウド企業が従来の広告主とは異なるアプローチでスポーツに関与できる理由を示している。価値はテレビにロゴが表示される回数だけに限定されない。テクノロジーそのものが、ファンが実際に利用するプロダクトの一部となり得るのだ。ネッツとアリババの契約は、チームレベルでこのモデルを踏襲している。アリババはユニフォームパッチを通じて認知度を得る一方で、ネッツはアリーナでの体験に組み込めるテクノロジーを手に入れる。
チームがこうした取り決めを追求するのには現実的な理由がある。テクノロジーパートナーシップは設備のアップグレード資金の調達に役立つと同時に、ファンや法人顧客にアピールできる新たな機能をアリーナにもたらす。
この関係は時間とともに発展していく可能性もある。アリババとネッツは、試合日か否かを問わず、シーズンを通じてさらなるテクノロジーやマーケティングの活用法を検証・拡大していく計画だと述べている。
スポンサーにとって、これはスポーツをより効果的なマーケティングチャネルに変える可能性がある。従来のスポンサーシップは一定期間の露出を提供するものだったが、テクノロジーパートナーシップは顧客が実際に触れ合える体験を創出できるのだ。
この違いは、人工知能、クラウドコンピューティング、デジタルサービスに多額の投資を行っている業界でNBAチームがスポンサーを探す際に重要となる。それらの企業の多くは、他の企業に向けて複雑な製品を販売している。スポーツパートナーシップは、単なる従来の広告キャンペーンに終わらせることなく、自社製品を実演・提示する手段を彼らに提供できる。
ネッツとアリババの協定は、依然としてユニフォームスポンサーシップである。ファンはシーズンを通じてチームのユニフォームに刻まれた同社のロゴを目にすることになる。しかし、それは取り決めの一部にすぎない。アリババはアリーナ向けにテクノロジーを提供し、ファン向けの体験を開発し、チームとともにさらなる活用策をテストしていく。
まさにこれこそが、NBAのスポンサーシップが変化しつつある点だ。チームは企業に対し、自社ブランドを実際のスポーツビジネスそのものと結びつけるための、より多様な方法を提供している。
ネッツにとってそれは、テクノロジーを活用してバークレイズ・センターの体験を変革することを意味する。アリババにとってそれは、自社のクラウド能力が実際に作動する様子を観客の前で示すことを意味する。ユニフォームパッチは今もそこにある。ただ、それがもはや取引のすべてではないというだけなのだ。



