経営・戦略

2026.10.21 09:43

従来のHRの終焉:次に訪れる未来とは?

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前回の記事で論じたように、HRの伝統的な「4本脚の椅子」モデルは、人工知能(AI)時代においてはもはや十分ではない。CHRO(最高人事責任者)にとっての大きな問いは「次に何が来るのか?」ということだ。

その答えは、HRをコンプライアンス最優先の事務処理エンジンではなく、データ駆動型でAIを活用し、体験を重視する戦略的パートナーと位置づける、根本的に異なるオペレーション構造にあると筆者は考える。

HRの次世代モデルは、旧来の椅子の脚であるHRシェアードサービス、センター・オブ・エクセレンス(COE)、HRビジネスパートナー(HRBP)、フィールド/現地HRチームを、ビジネスの課題とイノベーションサイクルを中心に編成された新たな柱へと置き換える。その根幹にある「HR 4.0」は、全く新しい一連の機能と能力(コンピテンシー)を必要とする。

HR 4.0:超高速で「良好」から「卓越」へ

HRには、AIを導入すると同時に、組織のAI活用を支える人材中心の推進要因を展開するという二重の使命が課されており、時間は刻々と過ぎている。両方を達成するには、以下の熟達度を備えた、根本的に異なるHR機能スタックが必要となる。

• AIリテラシー:意思決定の支援、体験のパーソナライズ、人材インサイトの獲得のためにAIツールを活用する

• エクスペリエンスデザイン、能力構築、ワークフォース・アーキテクチャ:デザイン思考、行動データ、フィードバックループを用いて従業員ライフサイクルの体験を共創し、エンゲージメントを向上させる。スキルのギャップを特定し、学習戦略を有効化して、未来に対応できるチームの構築に向けリーダーを支援する。ワークフォース・アナリティクス、スキルデータ、予測モデルを分析・解釈して人材戦略を変革と整合させ、計画、異動、パフォーマンスの指針とする

• チェンジ・イネーブリングとアジャイル実行:変革の取り組みを主導し、混乱期におけるリーダーのコーチングを行い、チーム全体の適応力を高める。スプリント単位で行動し、部門横断型のポッドで協働し、ビジネスニーズに合わせたソリューションを開発・反復改善する

• ステークホルダーへの影響力と倫理的ガバナンス:データに基づくストーリーテリングと戦略的な枠組み構築を通じ、信頼を構築し、前提条件を再考させ、経営幹部に影響を与える。特にAIやデータが関与する人材の決定において、公平性、透明性、責任あるガバナンスを確保する。

これらの機能は、HRが提供する価値の本格的な方向転換を意味する。これらを獲得するには、HRが受動的な部門からビジネス成果を能動的に推進する部門へとシフトする必要がある。困難を伴うものの、HRのリーダーたちはこれらのコンピテンシーを速やかに構築し、「良好」から「卓越」したレベルへと引き上げなければならない。

HRの新たなフロンティアを支える「4つの柱」

「人事課」の時代(HR 1.0)、ビジネスパートナーの時代(HR 2.0)、戦略的人材リーダーシップの時代(HR 3.0)を経て、HR 4.0は「ワークフォース・フューチャリズム(労働力の未来主義)」を提唱する。このモデルにおいて、HRリーダーは精鋭のビジネスパートナーとして機能しつつ、以下の役割と推進要素を通じて、HRを「社内ビジネス」として運営する。

1. デジタル・ピープル・チーム

HRテクノロジーがシステムやアプリケーションの枠を超えてAIエージェントへと拡大するなか、これらのデジタルワーカーは、現在HRの専門職が担っている管理業務やオペレーション業務の大半を引き受けるようになる。特化型AI(ナローAI)は人間によるパフォーマンスの要約作成を支援し、生成AIソリューションは職務記述書や採用通知書の作成を行う。自然言語AIツールは制度や福利厚生に関する質問に回答し、AIエージェントは昇進、異動、給与変更などの各種手続を開始する。

2. グローバル・ピープル・サービス

この部門は、従来HRビジネスパートナーやスペシャリストが担当していた、より複雑な管理・オペレーション業務を取り扱う。これらは、デジタルワーカーに任せるにはあまりに複雑であったり、リスクに敏感であったり、人間の判断を必要としたりする業務だ。

このチームは単にコンプライアンスに焦点を当てるのではなく、以下の5つの領域で卓越した成果を追求する、HRの次世代の「機関室」として機能する。

• サービスマネジメント、ナレッジマネジメント、手続実行の提供

• 国別の規制や言語要件への対応

• HR業務実行のプロアクティブな監査、外部監査や報告要請への対応、人材および規制関連リスクの軽減

• HRテクノロジースタックの有効性向上

• ピープルプロダクト・オーナーと連携した、HRプロダクトの革新と改善

3. ピープルプロダクト・オーナー

この機能は、現在COE(センター・オブ・エクセレンス)で行われているプロセス実行の大半に取って代わるものである。このチームは、ビジネス価値を高める新しいHR「プロダクト」を設計する。

HR 4.0のプロダクトポートフォリオには、以下のようなカテゴリーやソリューションが含まれる。

• ワークフォース・イネーブルメント:スピード感と規模感を伴うリスキリング、AIリテラシーと準備状態、リーダーシップ開発、人材育成(L&D)など

• 戦略的組織設計:組織設計、AIを活用した役割設計、戦略的人員計画、ピープル・アナリティクスなど

• ビジネスパフォーマンス:スキルおよび人員配置計画、報酬、コーチングとメンタリング、キャリアパスなど

• ワークフォースの活力(バイタリティ):福利厚生、ウェルビーイング、労使関係、レコグニション(承認)など

• カルチャーとエクスペリエンス:組織文化、エンゲージメント、従業員リスニングと意識調査、デザイン思考など

4. エグゼクティブ・ピープル・ストラテジスト

数は少なく費用も高額だが、この精鋭のHRリーダーたちは、ビジネスパフォーマンスに最も大きな影響を与えるエグゼクティブと直接協働する。従来のHR指標ではなく、共有された主要なビジネス成果に基づいて評価されるエグゼクティブ・ピープル・ストラテジストは、ビジネスのバリューチェーンにおける人材関連の脆弱性に対処しつつ、部門横断的なチームを編成してこれらの課題やその他の問題を解決する。

確実なのは、これがAI活用型の組織における唯一のHR運用ブループリント(設計図)ではないということだ。プロダクトマネジメントの手法を取り入れた「ジャーニー中心」のモデルを好むCHROもいるかもしれない。

降格リスクの軽減

この再設計は容易ではない。Protivitiが近く発表する「AI Pulse Survey」は、HR、財務、オペレーション、ITの各分野におけるAI浸透度を調査しているが、あらかじめ言っておくと、HRはこれらのどの分野よりもAI導入で遅れている。

さらに、大半のHR部門には大きな変化への対応が遅く、ビジネス側がどのように変化を乗り切るかを見てから後追いで対応してきた長い歴史がある。HRが単なる事務処理中心の「人事課」へと降格されるのを避けるには、この慣習とマインドセットのリセットが必要だ。しびれを切らしたCIO、COO、CFOたちは、自社のHR部門がまだ提示できていない組織設計、職務の再設計、スキルに基づく人材戦略、動的なワークフォース計画といった施策を求めて、すでに外部の専門家に頼り始めている。

新たな指標とマインドセットが助けとなるだろう。HRの管理範囲内にある主要なビジネス成果は、後継者カバー率、人材投資対効果(ROTI)、マネージャーNPS(ネットプロモータースコア)、ワークフォース活力指数といった指標で管理できる。パフォーマンスがこれらの尺度で追跡されるようになれば、HRチームは市場シェア、生産性、タイム・トゥ・マーケット(製品の市場投入期間)といったビジネス用語をより使いこなせるようになるだろう。

おわりに

CHROとしては、自部門のプロフェッショナルに対し、HRを受動的でコンプライアンス最優先のサポート機能と捉えるのをやめ、価値創造をミッションに掲げ、プロアクティブな人材インサイトを提供する「ビジネス最優先」の組織として活動するよう促すべきだ。それに成功したHRリーダーは、ポリシー遵守に不可欠という「安全地帯」を越えて、ビジネスの成長とイノベーションにとって真に不可欠な存在へと進化するだろう。

(forbes.com 原文)

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