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Jason Kempin / gettyimages

言われる前に自分から認めてしまう。我が社の社名は変わっている。BodeTreeという社名は仏陀が悟りを開いたとされる菩提樹の木を意味するBohdi Treeからとったもので、Fintech(ITを駆使した金融サービス)の会社としてはやや常識外れかもしれないことは認めざるを得ない。

しかし、こうした変わった企業名にもいろいろとメリットがあることは、身をもって経験してきた。もちろん、何事も一長一短ではあるわけだが、上手に使えば変わった社名は、よい意味でビジネスを差別化することができるのだ。

埋没しない社名
ラップ歌手のカニエ・ウエストとリアリティ番組等で人気のタレント、キム・カーダシアンの赤ちゃんの名前をご存知だろうか。セイント・ウエストである。セイントは英語で聖人を意味する。もちろんダイナミックな生き方をしているこの2人が、普通な名前を付けるとは誰も思っていなかったが、聖人という名前にはいささか驚かされ、様々な反応が噴出した。

例えばチャド・ウェストといった普通な名前であれば、これほどの反応はなかったと思われる。この命名には意図があったのだ。両親はこの子に(よい意味でも悪い意味でも)有名人としての人生を授けたのである。名前自体に賛否両論はあれど、五万といるセレブの赤ちゃんの中でもピカイチに目立つ存在となったことは確かだ。

私たちの同業者はどこも「あなたの金融情報のダッシュボード」や「分析」といった要素の含まれた名前だったため、私は、我々の独特な視点を的確に表現しつつ目立つ名前をつけたいと考えた。当社は他の金融関連企業とは異なった視点でものごとを捉えている。社名からも想起されるように、禅の思想の枠組みの中で活動しているのだ。もっと普通な方針をとっていたら、競争の激しいこの業界で抜きんでることは、かなり難しかったのではないかと思う。

問題提起を秘めた社名
BodeTreeが身を置く金融テクノロジーの世界は、おもしろみがなくて退屈なことも多く、ある意味ネガティブな世界である。ほとんどの会社は、その中でいかにして最も賢く、組織力に優れ、影響力を高められるかに注力している。
しかしBodeTreeの根底に流れる信念は、ビジネスの中で悟りを開くことである。この悟りの概念では、総体的で、バランスのとれた、正直で誠意あるアプローチで事業の財務管理を行うことこそが、関係する全ての人にとって最善の途であると考える。

BodeTreeという名前は、どう考えても変わっているが、それと同時に問題を提起することも意図しているのだ。名前に込めたメッセージは、我々の業界に広がる根深い課題に光を当て、我々がそこで果たすことのできる役割を浮き彫りにするものなのである。議論は我々も得意とするところで、機会があればいつでも既成概念や組織に一撃を食らわせる準備はできている。

何よりも、記憶に残る社名
キム・カーダシアンとカニエ・ウエスト一家の話に少しだけ戻る。たとえセレブの子どもであっても、名前がチャド・ウエストであれば、生まれた時は大騒ぎになったとしても、ほどなくして名前ごと忘れられてしまうだろう(世間のチャドさんたちの名前を否定するものではない)。

カーダシアンとウエスト(と彼らのマネジメントを行うチーム)は、世間に忘れられることのない名前をつけることで、今後もいろいろな意味で発展していく一家に、これまで以上の注目が集まる仕掛けを作ったのだ。カーダシアンらのマネジメントをしている人たちは、戦略をもって動いていると思われる。そして、ラッパーのジェイ・Zと歌姫ビヨンセ夫妻が子どもの誕生後ほどなくして名前を商標登録したように、もう少しするとセイント・ウエスト®という表記をたくさん目にする日が来るに違いない。

我々がBodeTreeという名前を選んだのは、私たちの製品、チーム、そしてミッションを記憶に残してもらいたいと思ったからである。名前から事業内容がわかるかといえば、わからない。読み間違える人が多いかといえば、否定できない。

しかし、人の記憶に残るかというと、確実に残る。我々が何をする会社なのか皆目見当すらつかない人でも忘れない名前で、今、この時代だからこそ、それが大切なのである。カーダシアン一家について、好き嫌いはあるだろうが、なかなか抜け目なく賢いビジネスマインドを持った人たちだと思う。

無形の素材を使って 名声の帝国を作り上げるのに、これ以上有効な方法があっただろうか。これは、一家の見事なブランディングの証左であり、ある意味すべての起業家が学ぶべきマーケティングの好事例と言えるだろう。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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