働き方

2026.10.20 08:07

目の前に隠された競争優位性、アプレンティスシップ(見習い制度)の真価

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多くの企業が、従来型の採用手法の限界を感じている。世界経済フォーラムの報告によれば、雇用主の63%がスキルギャップを組織変革の大きな障壁として挙げており、2030年までに労働者のコアスキルの39%が変化すると見込んでいる。

企業は経験豊富な候補者を奪い合う一方で、十分な時間や仕組みがないままキャリア初期の従業員を育成しようと苦心している。多くの企業が今なお、同じ資格要件、フィルタリング、採用の前提にとらわれ、狭い同一の人材プールの中で探し続けているのが現状だ。

アプレンティスシップ(見習い制度・育成型雇用)は、これとは異なるアプローチを提供する。自社が実際に必要とする能力に合わせて体系的に人材を育成する仕組みを企業にもたらすのだ。しかし、多くの組織はいまだに様子見の段階にとどまっている。

ためらいは理解できる。多くのビジネスリーダーは、アプレンティスシップが機能するかどうかを疑っているのではない。自社にそれを首尾よく導入するための時間、能力、そしてインフラがあるかどうかを懸念しているのだ。障害となっているのは人材や関心の有無ではなく、多くの場合「実行力」である。

「実行」のギャップ

アプレンティスシップは、求める資格をすべて備えた候補者だけを奪い合うのとは異なり、学ぶ素養のある人材を見極めることで活用可能な人材プールを拡大できる。また、人材研修とビジネスのニーズをより強固に結び付ける。従業員は現場で適用が求められる能力を磨くと同時に、組織自体のシステム、期待される役割、業務環境を習得していく。

課題は、そのすべてを機能させることだ。

企業は候補者の採用、研修の設計、オンボーディング、管理職の巻き込み、指導の調整、コーチングの提供、給与支払いやコンプライアンス要件への対応、パフォーマンス測定、そして最終的には長期雇用へのキャリアパス構築を行わなければならない。米国政府責任調査局(GAO)の2025年のレポートでは、管理上の負担がアプレンティスシップへの企業の参加拡大を阻む最大の障壁として挙げられている。その一方で、米国労働省の研究によると、アプレンティスシップに投資した1ドル(約1万未満円)につき、企業は約1.40ドル(約1万未満円)から1.90ドル(約1万未満円)の利益を得られることが明らかになっている。

したがって重要なのは、アプレンティスシップを事業と「別個のもの」として並列させるのではなく、「事業の一部」として機能させる運用モデルを構築することだ。

事業上の課題から始める

最も効果的なアプレンティスシップ・プログラムは、明確に定義された人材課題から始まる。重要な職種の採用が常に困難であったり、継続的な離職が業務の混乱や繰り返される採用コストを引き起こしていたり、あるいは見込みのある従業員を見つけても体系的に育成する手段が組織に欠けていたりする場合などだ。

そうした課題のレンズを通してアプレンティスシップを捉え直すと、議論の性質が変わる。単なる人材育成施策を超えて、現実の業務課題への実践的な対応となるのだ。

例えば、経験豊富なデータアナリストの採用に苦戦している企業は、必ずしも最初から完璧な即戦力を全員に求める必要はないかもしれない。むしろ確かな基礎力を持ち、自社のシステムを学びながら、次第に高度な業務へとステップアップしていける人材を受け入れるほうが、より大きな恩恵を得られる可能性がある。

アプレンティスシップは、人材の「ポテンシャル」を「成果」へと変えるための明確なプロセスとなる。

運用モデルから摩擦を取り除く

アプレンティスシップを拡大するには、企業がより簡単に実行できるようにする必要がある。現場の管理職に対して、既存の業務負担に加えて研修の設計、見習い(アプレンティス)のコーチング、コンプライアンスの監視、進捗の追跡、プログラムの事務負担まで求めるべきではない。管理職の役割は、アプレンティスが新しいスキルを実務に適用できるよう手助けし、有意義なフィードバックを提供し、パフォーマンスを支援することに集中すべきだ。

その他の責任は、より広いエコシステム全体で分担できる。人材パートナー、アプレンティスシップ仲介機関、研修プロバイダー、人材派遣会社、そしてEmployer of Record(名義上の雇用主)モデルなどがインフラを提供し、企業が一歩を踏み出すのを妨げている実務作業の多くを引き受けることが可能だ。

その一例が、ピープルデータ・プラットフォームCheckrのコミュニティインパクト部門であるCheckr.orgだ。同組織は「フェアチャンス採用(偏見のない機会均等採用)」を通じて、逮捕・服役歴のある人々の雇用機会拡大に取り組んでいる。同組織の「Catalyst Apprenticeship Program」は、エコシステム型のアプローチがいかに企業の摩擦を軽減できるかを示している。人材の発掘と準備、プログラムの登録、雇用管理、コーチングや支援など、それぞれの役割を異なるパートナーが分担する。このインフラがあることで、リフト(Lyft)やアラマーク(Aramark)といった参加企業は、アプレンティスをチームに迎え入れ、実務を通じて育成することに直接注力できるようになる。

重要な指標を測定する

他の戦略的投資と同様に、アプレンティスシップもビジネスの成果によって評価されるべきだ。

従業員はより迅速に生産性を発揮できているか。定着率は向上しているか。採用困難な職種での欠員プレッシャーは軽減されているか。繰り返される採用や離職に伴うコストは削減できているか。

成果を継続的に測定することで、アプレンティスシップの改善、支援、規模拡大が容易になる。さらに重要なのは、アプレンティスシップを本来あるべき位置、すなわち業績向上を目指す他の投資と同等に位置付けられる点だ。

スモールスタートから拡大へ

初日から全社規模のアプレンティスシップ・プログラムを立ち上げる必要はない。まずは1つの職種、1つの事業部門、あるいは慢性的な人材課題から始めるとよい。成功の定義を定め、関与する管理職をサポートし、結果を測定し、そこから得た学びを活用して、より確固たる自信を持って拡大していくのだ。

このアプローチはリスクを低減すると同時に、パフォーマンス、定着率、生産性、管理職の体験、そして長期的な人員ニーズを通じて評価できる具体的な成果をリーダーに提示する。

このアプローチが機能するのを、私たちはあるフォーチュン500企業で目の当たりにしてきた。同社は需要の高い複数の職能にまたがる、わずか5名のアプレンティスからスタートした。組織がこのモデルの経験を積むにつれて、プログラムは拡大。最終的に計27名のアプレンティスがプログラムを修了し、その90%が同社の正社員として採用された。スモールスタートを切ったことで、この企業はモデルを拡大する前に、自社の人員ニーズと照らし合わせて検証することができたのだ。

「外部調達」ではなく「自社育成」を

必要なスキルは変化し続け、経験豊富な人材の争奪戦は今後も続くだろう。外部採用だけに依存する組織は、労働市場が必要な能力を迅速に供給できない状況に直面するたび、脆さを露呈することになる。

アプレンティスシップは別の選択肢を提供する。労働市場に希望通りの人材が現れるのを待つのではなく、自らその能力を育てるのだ。その結果、社内の人材を磨く能力が格段に向上し、完璧な候補者を探すことに依存しすぎない組織が実現する。

現在の採用モデルがどこで限界を迎えているのか、冷静に見つめ直す時だ。人材獲得競争が過熱する市場において、他社から経験豊富な人材を競って買い続けるよりも、自社に必要な役割に合わせて人材を育て上げるアプローチのほうが、持続可能であることが証明されるかもしれない。

(forbes.com 原文)

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