イノベーティヴなシネマプロジェクト
なぜ「ルイ13世」がこの映画をプロデュースしたのか? その答えは、ルイ13世というコニャックの製造過程を見れば、ヒモ解くことができる。グランド・シャンパーニュ産の葡萄のみを使用した1200種類ものオー・ド・ヴィー(原酒)がセラーマスターの手によってブレンドされ、樹齢100年の希少なオーク樽で40~100年という長期間熟成させる。つまり、ブレンドを手がけたセラーマスターは、“自身の作品の完成”を見ることは決してないということになる。まさにルイ13世にとってのキーワードが“100年”という数字なのだ。
記者発表を兼ねたパーティではトレーラーが公開された。しかしながら、作品の詳細は謎に満ちている。100年後の地球。環境破壊が進み、地政学的リスクが高まる昨今において、2人の奇才によって描かれた未来はどんなものであったのだろうか? ジョン・マルコヴィッチに聞いてみた。
「今回のプロジェクトのコンセプトや哲学を聞いたとき、すぐに自分で脚本を書いてみたいと思った。100年後の未来を語る科学者は少なくはないが、人間や地球がどうなっているのか、誰にも分からない。この作品は非常に多くの予言に基づいているのだが、人々が関心を持っていることを考えながら物語を構成した。気候変動やテクノロジーの進化は自然界や人間性にどんな影響をもたらすのか?100年前の価値観、倫理観が今と異なっているように、100年後の人々の心にも大きな違いが生じるだろう。しかし、その変化の中でも恒久的に変わらないものは?
―そんなことを考えながらストーリーの構想を練った。仮定に基づきながら未来を描くことは、クレイジーな作業であった。100年後、人々はどのように過ごしているのか…多分幸せに生きているだろう。人生を楽しむことは重要な意義であり、人間はまた、その目的を達成する状況を創造できるはずだ。同時に、我々は非常に発達した適応能力を持っている。例えば数年前なら、人々は言葉を交わしながら物理的な世界に集中していた。それが今では、皆がスマートフォンでヴァーチャルな世界に身を投じている。人々はヴァーチャルと現実との両方の世界で生きることを学んだといえる。
だから『この先の未来で、何が人々を幸せにするのか?』私はそれを探ってみたかった。 必ずしも昔よりも現在のほうが幸せだ、とは限らない。釣りや狩りをして生活していたころより今が幸せかは分からないけれども、少なくとも人々は時代に適応して、その中でできる限り幸せに生きている」
フィルムに描かれた人類と、それを見る人類にはどんな共通点や相違点があるのだろうか。その結論は、100年後の人々に委ねよう。そして我々が生きている時間には限りがあるが、先人達が築き上げ、受け継がれていくものの価値はその時間を越えていくはずだ。まさにルイ13世の哲学を体現した、意義深いプロジェクトといえよう。参加者には100年後にコニャック地方で実施されるプレミア上映会のチケットが配られたが、誰も本作品を見ることはできない。このチケットもまた、次世代に受け継がれていくのだ。
100年後公開の映画
脚本・主演ジョン・マルコヴィッチ、監督ロバート・ロドリゲス。ハリウッドでも最も注目される奇才2人によるこの映画は、今から100年後の地球を描いた作品である。ただし、この映画の全貌が明らかになるのは、2115年11月18日。作り手、出演者の誰も見ることができない映画は、通常のプロモーションとは異なり、レセプションパーティにおいても、関係者からその詳細が語られることも、試写が行われることもなかった。ある種、奇想天外ともいえるこのプロジェクトを打ち出したのは、世界最高の品質と歴史を有するコニャック「ルイ13世」だ。1874年の誕生以来、長い歴史を受け継ぎ、人生の美学を象徴してきたルイ13世だからこそ、手がけられた未来への遺産。もちろん映画界初の試みとなった。厳重な金庫に収められた本作品フィルムは、100年後の2115年11月18日になると、自動的に開錠される。
ハリウッドでの一大イベント
ビバリーヒルズで行われたレセプションパーティには、世界中からプレスやセレブリティが来訪した。もちろん乾杯は「ルイ13世」。通常食後酒として興じられることが多い最高のコニャックを、星空の下ビバリーヒルズの美しい夜景を眺めながら味わう。乾杯を交わすグラスの音が秋の夜に響き渡り、まさに最高の一杯といえる演出であった。
LOUIS XIII (ルイ13世)¥250,000(税別)/問い合わせ先Remy Cointreau Japan 03−6441−3025
メゾン・レミーマルタンのCEOであるEric Vallatは、日本市場について「ルイ13世にとって非常に重要な市場だ。中国などアジア各国の成長が進む中で日本はWindowであり、引き続きトレンドセッターであると考えている」と語る。このプロジェクトは日本においても、示唆に富み、物事の本質を問いかけるきっかけになるだろう。誰にも分からない100年後の世界、しかしその時を越えてもなお愛されるもの創りを続けているであろうルイ13世は、文字通り「時を越え、幸せを約束する」存在なのだ。