CEOとして、自社がどのように運営されているかという真実を知る機会は、取締役会の評価や360度評価、コンサルタントから得られることはめったにない。その教訓は、2週間の休暇中に現れる。意思決定が途切れなく行われていれば、機能しているシステムを構築できている証拠だ。しかし、あなたが戻ってくるまで全ての予定が保留され、会議がキャンセルされるようなら、依存のシステムを作り上げてしまったということだ。
必要とされることが効果的なリーダーシップのように感じられるため、これにひそかに優越感を覚える経営者もいる。しかし、それは間違いだ。真のリーダーシップとは、サービスを提供することにほかならない。通信接続を提供する電気通信業界を例に考えてみよう。この分野の企業は目に見えない場所で機能しているため、顧客はサービスが停止したときにしかその存在に気付かない。稼働率(アップタイム)を維持することこそが業務の全てであり、ネットワークチームが得られる最高の賛辞は、顧客の日々の苦情リストから自らの名が消えることだ。
リーダーであることもこれと非常によく似ている。役職によって得られるのは、信頼を獲得するためのたった一度の機会だ。もし失敗すれば、滴り落ちるように少しずつチームに溜まった信頼は、バケツをひっくり返したように一気に失われる。あなたは上司かもしれないが、従業員、取締役会、顧客といったあらゆる人々に対して責任を負い、支援を提供する。それこそが、あなたをサービスプロバイダーたらしめる理由だ。
リーダーは成功の土台である
マッキンゼーの組織健康度指数(OHI)は、有効性を決定づける9つの主要領域として、説明責任、方向性、調整と統制、外部志向、リーダーシップ、イノベーションと学習、能力、職場環境、モチベーションを挙げている。このうち最も大きな影響を持つのは、説明責任、方向性、リーダーシップである。これは、職場環境が資産であり、それを形づくる人物がレバレッジであることを示している。
これが意味することの1つは、リーダーであるあなたの機嫌が、会社全体に影響を及ぼし得るということだ。あなたがストレスを抱えて出社すれば、昼食時までには少なくとも3つのチームが同じようにストレスを感じている。あなたのエネルギーは、すべてのチームが日々受け取る唯一のインプットであり、エンゲージメントの低下は下へと波及する。その代償は大きい。ギャラップの年次報告書「State of the Workplace」によれば、2025年には、エンゲージメントの低さによる生産性の損失で、世界経済からおよそ10兆ドル(約1580兆円)が失われたという。
真のリーダーシップとはヒーローになることではない
ネットワークエンジニアなら誰もが、単一のノードに依存するシステムは強靭ではなく、トラブルの発生を待つだけの設計上の欠陥だと指摘するだろう。したがって、CEOがどの場においても常に最も優秀な人物であるなら、それは問題なのだ。
最高経営責任者の座は易しくなるどころか困難を増している。PwCの「2026年世界CEO意識調査(2026 Global CEO Survey)」によると、今後12カ月間の売上高成長に自信を持っている最高経営責任者は3分の1未満にとどまる。また、コーン・フェリーの2026年「CEO & Board Survey」によると、新任CEOの55%が時間とエネルギーの配分の調整に苦慮していると回答している。そのため、CEOの平均在任期間が2023年の9.2年、2024年の7.7年から、6.8年に短縮したのも偶然ではないかもしれない。
CEOになるにあたって最も困難なのは、その立場に登り詰めるまでに得た成功パターンを手放す(アンラーニングする)ことだ。その場の誰よりも賢くある必要はもうない。それどころか、自分がその場にいようといまいと、他の人々が成功を収められるような環境を整えなければならない。この取り組みにおいて確立すべき重要な要素は、信頼、明確さ、環境の3つだ。
• 信頼:これは強力な職場環境を支える構造的な土台であり、どのような肩書であっても生み出すことはできない。振る舞いによってのみ獲得できる。少しずつ権限を委譲していくことで信頼を得ることができる。自分が心地よいと感じるよりもわずかに大きな決定権を任せ、それを取り戻したいという衝動に耐えてみよう。
• 明確さ:人々が必要としているのは、水曜の午後に与えられる場当たり的な刺激ではない。何を、なぜ、いつまでにやるべきかを知る必要がある。
• 環境:チームメンバー、とりわけ高い成果を上げる人材は、監督なしに動き回り、探索できるべきである。
優れたリーダーは文脈を提供する
文脈(コンテキスト)は拡張を生み、管理(コントロール)は停滞を生む。自分の3つ下の階層でなされる判断の質は、その判断に使われた情報の質に左右される。したがって、真の仕事とは自らの思考プロセスを伝達することだ。何を達成しようとしているのか、何をしないと決めたのか、そして「良好な状態」とはどのようなものか。結論だけを渡せば、人々は明日も次の結論を求めて戻ってくる。しかし、文脈を渡せば、あらゆる判断であなたを頼る必要がなくなるのだ。
経営者が自問すべき3つの質問
このテストを行うのに、休暇を待つ必要はない。3つの率直な質問をすれば、あなたがサービスを築いたのか、それとも依存を築いたのかは今日わかる。
1. あなた自身の稼働率(アップタイム)はどれくらいか? もしあなたが1週間以上連絡がつかなくなった場合、どの意思決定が停滞するだろうか? その答えの一つひとつが、あなたが組織の実行を支援するのではなく、自分自身でまだ作業を行ってしまっている箇所だ。
2. 社員があなたから最も多く「消費」しているものは何か? それが「承認」であるなら、あなたはボトルネックになっている。それが「文脈(コンテキスト)」であるなら、あなたは環境を育む安定した気候のような存在だ。あなたはサービスとなっている。
3. あなたが部屋を退出したとき、その場のエネルギーはどう変化するか? あなたがいなくなった瞬間に低下するなら、あなたがエネルギーを供給していたということだ。低下しないのであれば、あなたはエネルギーの源を構築できたということだ。
電気通信業界はずっと以前から、人々が愛するネットワークとはその存在すら忘れてしまうようなものだと教えてくれている。リーダーシップも同じ方向へ向かっている。リーダーの価値を測る尺度は、自らが指揮を執る場ではなく、自らが去った後に残る場なのだ。



