アジア

2026.10.21 10:14

中国、富裕層の海外資産を狙う20%課税──高級ブランドの売上減と資産移動が始まる

Photo by Nicolas Economou/NurPhoto via Getty Images

Photo by Nicolas Economou/NurPhoto via Getty Images

2026年10月22日は、中国の富裕層にとって重要な期限となる。中国政府が、国外信託に関する過去数年分の税金を、延滞金なしで申告・納付する期限として定めた日だ。

「信託」とは、現金や株式、不動産などの財産を信託会社などに託し、自身や家族のために管理・運用してもらう仕組みだ。資産を家族に引き継ぐ目的でも使われる。中国政府が課税対象とする「国外信託」は、中国国外の法律に基づいて設けた信託や、実質的に同様の役割を持つ仕組みを指す。

政府の政策は変化の先触れになると、私は繰り返し指摘してきた。中国政府による富裕層への締め付けは、すでに目に見える影響を及ぼしている。高級品市場は、変化が早くから表れている市場だ。

中国政府、海外の信託への資産移転や運用益に20%課税

中国財政部と国家税務総局は2026年7月24日、国外信託への資産移転や信託を通じて得る所得が課税対象になると発表した。税率は20%で、資産を信託に移す際の利益、信託が生む所得、信託を清算する際の利益が課税対象になる。資産の移転時には、その時点の時価から取得費などを差し引いた金額に課税される。2025年までに得た所得に関する納税を済ませるため、富裕層には90日間の猶予が設けられた。

地方政府の資金不足が富裕層への徴税を後押し

なぜ中国政府は2026年に富裕層への締め付けを強めたのか。端的に言えば、地方政府の資金不足だ。かつて地方財政の主要な収入源だった土地売却収入は、不動産市場の低迷とともに激減した。中国政府は資金を必要としているが、国内の富裕層は長年、多額の資産を中国当局の手が届きにくい国外に置いてきた。

中国には相続税と贈与税がなく、住宅の保有に対する課税も一部地域での試験的な導入にとどまっている。英金融大手バークレイズと米金融大手バンク・オブ・アメリカのアナリストは、国外の利子所得、不動産売却益、海外株式にまで課税対象が広がると予想する。

香港の金融機関が海外株購入を制限、退職積立金にも税務当局の目

香港の銀行や証券会社も2026年5月以降、中国本土の顧客が海外株式を購入することを制限している。税務当局の関心は、巨額の資産を持つ富裕層だけに向けられているわけではない。

上海を拠点とするジャーナリストのフランク・チェンは、自身が香港の強制積立年金(MPF)に預けた資金について、税務当局から通知を受けた。MPFは香港で加入が義務付けられている退職後に備えるための積立制度だが、チェンの資金は「国外信託の一種」と分類されたという。

税務当局が年金についてまで尋ね始めれば、エルメスの高級バッグ「バーキン」を購入する前に考え直すことになる。

次ページ > 中国人客の支出減が、高級ブランドの業績回復を止める

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事