一方で、ディーゼル排出ガス不正問題は解決したわけではない。
フォルクスワーゲンは「広範な内部調査や測定値の確認の結果、ほとんどの車種において、二酸化炭素排出量(並びに燃費)は当初公表されていた正規の値に合致していることが確認されました。よって、これらの車種については何の制限もなく販売することが可能と判断いたしました。
また、現在生産されている車両について、燃費数値が違法に改ざんされているとする疑いについては、事実とは認められませんでした。尚、社内で再測定を行った際、9車種のみについて、当初発表数値とわずかな誤差が確認されました」と発表した。
これを受けて、フォルクスワーゲン株はこの日、欧州市場で6%上昇、140ユーロ(約18,400円)を少し上回る水準で取引された。
フォルクスワーゲンは先月、主に欧州で販売された80万台の車両について燃費と二酸化炭素排出量数値を偽装していたと発表、対応費用として、消費者への補償金を含めて少なくとも20億ユーロ(約2,636億円)が必要となる見込みであるとしていた。
この日の発表で、フォルクスワーゲンはこれらの結果をドイツ政府の調査委員会に報告したことも明らかにした。その中で、当初は80万台について偽装の疑いがあると公表したが、これほどの数は確認されなかったとした。
また、同社は「NEDC(新欧州ドライビングサイクル)の規制値が走行100キロメートル当たり約0.1~0.2リットル緩和されたことを受け、問題となるほどの乖離が見つかったのは9車種に限定され、それも二酸化炭素ほんの数グラム分であることがわかりました。該当車種の年間生産数は約36,000台で、フォルクスワーゲンブランドの生産台数の0.5%にとどまります」と述べた。
子会社であるアウディ、チェコのスコーダやスペインのセアトも各国政府に同様の報告を行うことで合意している。
また、発表文書で「消費者が実際に運転した際の数値に変更はなく、車体に対して技術的な変更を加える必要も発生しません。こうした展開の下、当初予想された20億ユーロの対応費用が業績へどのような影響を与えるかはまだ確認できておりません」とした。
金融調査大手Evercore ISIは、これをフォルクスワーゲンにとって朗報だとする。
同社のアナリストアーンド・エリングホーストは「収益への影響をはじめ、フォルクスワーゲンは発表内で終始慎重な姿勢は崩していませんが、リリースは明らかに前向きになっています。そして、二酸化炭素排出量不正問題については、当初予想されたよりも影響を受ける車両数が少なくて済みそうであることを示しています。我々はこれを好材料ととらえており、以前示された対応費用20億ユーロのマイナスについても、これよりもずっと小さく済むと予想しています」と話した。
しかし、ディーゼル排出ガス不正問題を巡る、より大きな問題は未だ手つかずで残っている状態だ。
フォルクスワーゲン幹部は引き続きヴォルフスブルグ本社で対応に追われている。