サイエンス

2026.10.27 15:30

複数種のヘビに対応するカクテル製剤、「ナノボディ」を使った新たな組換え型抗毒素の効能

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ヘビに咬まれたときの治療は、これまで標準化や広範な導入が困難だった。しかし最新のマウス実験で、5つの小さな抗体断片からつくられた組換え型抗毒素が、致死量のコブラとキングコブラの毒に対して有効であることがわかり、治療の新たな可能性を示した。

ヘビに咬まれる事故により、毎年数万人規模の人々が命を落としており、世界全体の被害の約半数がインドで起きている。

主な治療法は、馬などの大型動物に免疫を持たせ、その血液から抗体を採取・精製して製造された抗毒素(血清)の投与だ。こうした治療法は、数え切れないほどの命を救ってきたが、重大な限界がある。ヘビの毒は種によって、また同じ種でも個体群によって大きく異なるのだ。ある地域の毒を使ってつくられた血清は、別の地域のヘビに対しては効果が乏しい場合がある。

新たな研究では、動物由来の抗体に依存するのではなく、「ナノボディ」と呼ばれる5つの抗体断片を用いている。5つのナノボディはそれぞれ、コブラやキングコブラの毒に含まれる主要な毒素を標的としている。5つのナノボディを組み合わせることで、インド各地に生息する、医学的に重要なヘビ数種の致死的な毒からマウスを守る、新たな抗ヘビ毒治療薬(組換え型抗毒素)がつくられた。

従来の抗ヘビ毒血清の問題点

従来の抗ヘビ毒血清は、馬をヘビ毒に繰り返し暴露させることでつくられる。馬は、ヘビ毒に対して多種多様な抗体を産生し、それらを採取・精製して治療薬が完成する。こうしてつくった治療薬にはさまざまな抗体が混在しているため、製造ロットごとにその組成が異なる場合もある。さらに重要なのは、必ずしも、すべてのヘビの個体群に含まれるすべての毒素を無毒化できるとは限らないことだ。

これは、インドにおいて特に深刻な問題となる。市販の抗ヘビ毒血清は、主にインドの「四大」毒ヘビ、つまりインドコブラ、インドアマガサ、ラッセルクサリヘビ、ノコギリヘビを対象に製造されている。キングコブラなど、医学的に重要なほかのヘビに対しては、保護効果がほとんど、あるいは全く得られない可能性がある。

5つのナノボディ、5つの標的

ナノボディとは、もともとラマやラクダといったラクダ科動物が持つ特殊な抗体からつくられた抗体断片だ。その小ささから、いくつかの有用な特性を持っている。安定性が高く、細菌に産生させることもでき、動物に依存することなく大規模に製造できる可能性がある。

今回の研究では、インドコブラやキングコブラの毒に含まれる主要な毒素群を認識する5つのナノボディが選定された。そのうちの2つのナノボディは、神経系に作用してマヒを引き起こすさまざまな種類の神経毒素を標的としている。ほかの2つは、細胞や周囲の組織に損傷を与える細胞毒素が標的だ。5つ目は、細胞膜に損傷を与える毒素群を標的とする。

毒のすべての成分を無毒化するよう設計された単一の抗体ではなく、これら5つのナノボディを組み合わせて1つのカクテル製剤とすることで、多くの関連する毒素を一度にカバーすることを目指した。

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翻訳=米井香織/ガリレオ

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