数字の大きさに、もはや現実味がない。アマゾン、マイクロソフト、グーグルの親会社アルファベット、メタの4社は、2026年に合わせて約7000億〜7250億ドル(約110兆6000億〜114兆5500億円)を設備投資に投じる見通しだ。過去最高だった2025年の4100億ドル(約64兆7800億円)から、およそ75%の増加である。
アマゾン1社だけでも、会社予想は約2000億ドル(約31兆6000億円)にのぼる。マイクロソフトは約1900億ドル(約30兆200億円)を見込み、アルファベットは予想の幅を1800億〜1900億ドル(約28兆4400億〜30兆200億円)に引き上げた。メタも予想を1250億〜1450億ドル(約19兆7500億〜22兆9100億円)に上方修正している。ウォール街の金融機関のなかには、4社の支出の合計が2027年に1兆ドル(約158兆円)を超えると予想するところが複数ある。
この巨額の支出こそが、現在の市場を動かす最大の力である。半導体企業の業績も、電力会社の需要予測も、さらには債券の利回りまでもが、この支出に左右されている。米連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長も、米国時間9月16日の記者会見で、米国債の利回りが上昇している理由の1つとして、AIインフラの整備に伴う資金の奪い合いを挙げた。
投資家にとって問われるのは、AIが重要かどうかではない。これだけの資金から生まれる経済的な価値を、実際に手にするのは誰なのか。そして、どれだけのリスクがすでに株価に織り込まれているのか。問うべきはこの2つである。
クラウド大手は設備投資の約4分の3をAIへ、潤う半導体とメモリー
まずは、お金がどこに向かうのかを見てみよう。社債などの信用分析を手がける調査会社CreditSights(クレジットサイツ)のアナリストの推計によると、2026年のハイパースケーラー(巨大なデータセンター網を運営し、クラウドサービスを大規模に提供する企業)の設備投資は、そのおよそ4分の3がAIインフラに充てられる。GPU(画像処理半導体。AIの計算に広く使われている)や各社が独自に設計した半導体、サーバー、ネットワーク機器、そしてそれらを収めるデータセンターである。残りは、従来型のクラウドなど、ほかの事業に回る。
この内訳を見れば、どの企業が恩恵を受けるのかが、サプライチェーン(供給網)に沿ってはっきりと見えてくる。その頂点に立つのは、半導体の設計会社とファウンドリー(半導体の受託製造会社)だ。メモリーメーカーも、あまり目立たないものの、大きな勝ち組になっている。
マイクロソフトは、2026年の設備投資予算のうち約250億ドル(約3兆9500億円)が、部品価格の上昇によるものだとしている。サプライチェーンをさらに下ると、ネットワーク機器メーカー、電気設備メーカー、冷却設備の専門企業、データセンター向けの電力需要を取り込んでいる電力会社が並んでいる。
データセンター増設を阻む電力不足、送配電や変圧器メーカーが成長株に
投資家が、最大手のテック企業の株をただ持つより一歩踏み込んで考えられるのは、ここである。いわゆる「つるはしとシャベル」の投資、つまり金を掘る人ではなく、道具を売る側に投資する手法は、どの採掘者が金を掘り当てるかに賭けることなく、ゴールドラッシュから利益を得る方法として、昔から知られてきた。
現在、AIの拡大にとって最も厳しいボトルネックとして浮上しているのが、電力である。そのため、かつては地味な存在だった電力会社や送配電設備のメーカーが、成長株として注目されるようになった。変圧器や開閉装置(スイッチギア)、冷却システムを手がける企業は、何年も先まで受注残を抱えている。



