1966年、シュープリームスは『You Can't Hurry Love(恋はあせらず)』をリリースした。ビジネスについての楽曲ではないが、これと同じ原則が組織にも当てはまる。
組織における多くの要素は効率化の恩恵を受ける。多くの場合、速いことは良いことだ。しかし、決して急ぐことができないものもある。その最たるものが、自分が率いる人々に対する深く真摯な、そして心からの思いやり(ケア)だ。
筆者はこれを「変革的ケア(transformational care)」と呼んでいる。単なる日常的な気遣いや好意を超えたものだ。人間関係を強固にし、信頼を築き、人々が潜在能力を最大限に発揮できるよう支援するケアである。人や組織を変革するのは、まさにこうしたケアなのだ。
ケアには時間がかかる
難しいのは、現代の職場がしばしば、変革的ケアを育むには不都合なペースで動いていることだ。リーダーには迅速な意思決定、立て続けの会議への出席、メールへの即答、そして絶え間ない生産性の推進が求められる。こうした活動は効率を向上させるかもしれないが、カルチャーを構築し、心理的安全性を確保し、エンゲージメントを高める行動を排除してしまう可能性もある。
信頼は会話を重ねるたびに育まれる。人間的信用は日々のやり取りを通じて獲得される。そして心理的安全性は、一貫性や敬意、気遣いを繰り返し示すことによって生まれる。どれも急かすことはできない。
ここに、リーダーシップの根本的な緊張関係が生じる。組織には効率性が必要だが、人間関係には時間と労力の投資が必要なのだ。リーダーは迅速に動くよう求める圧力に対処しつつ、思いやりのカルチャーを築くために必要な余白を作り出さなければならない。しかし、リーダーシップの大きなパラドックスの一つは、人に投資するために十分に歩みを緩めることが、結果的にチームや組織をより速く前進させることにつながるという点である。
ケアのギャップ
ほとんどのリーダーは従業員を気遣っているように見えるが、多くの従業員はそれを確信できずにいる。
最近の意識調査によると、信頼と支援に満ちた職場において従業員は高い能力を発揮できるという。メンタルヘルス・アメリカによる2024年版の意識調査『Mind the Workplace』レポートでは、信頼と支援の上に成り立つカルチャーが、より強い帰属意識、心理的安全性、エンパワーメントにつながることが示されている。しかし同調査では、組織が透明性のあるコミュニケーションを推奨している、あるいは公平で支援的なマネジャーの育成に投資していると回答した従業員は半数未満にとどまった。
このギャップは、従業員、リーダー、組織のいずれにとっても機会損失を意味する。このようなギャップが生じる理由の一つは、思いやりは単に「あるはずだ」と推測できるものではなく、実感される必要があるからだ。従業員が実感するのはリーダーの意図ではなく、実際の行動なのだ。
したがって、効果的なケアは二つの要素にかかっている。第一に、本物でなければならない。リーダーは自分が率いる人々を心から気にかけなければならない。第二に、それが表現されなければならない。
どちらも重要である。表現されない本物のケアは、気づかれないかもしれない。一方で、本心が伴わない上辺だけの表現は、ほぼ効果がない。変革的ケアは、真摯な関心が時間をかけて継続的に示されて初めて育まれる。
ケアは本物として感じられなければならない
従業員は本物かどうかを見抜くことに極めて長けている。彼らはリーダーの行動パターンや決断、優先順位、日々の関わり合いを通じて、リーダーの意図を常に汲み取っている。こうした観察を経て、従業員はリーダーが自分を1人の人間として心から大切に思っているかを判断する。
あいにく、心からの関心が常に存在するとは限らない。職場環境によっては、リーダーシップがあまりにも取引的になり、ケアがパフォーマンスとは無関係なものとして扱われることもある。また、ストレスやバーンアウト、危機、精神的な疲弊によって、人に投資する余力を失ってしまうリーダーもいる。さらに根本的な問題として、適切なロールモデルや経験に恵まれなかったために、思いやりのある関係を築く方法を学んだことがないリーダーもいる。
原因が何であれ、結果は往々にして同じだ。リーダーの無関心を感じ取った従業員は、不信感を募らせ、コミットメントやエンゲージメントを低下させていく。
関連する問題として、ケアがパフォーマンス(形ばかりのポーズ)化してしまうケースがある。心の中では思っていなくても気遣っているフリをするリーダーもいるが、従業員は真摯な関心と、慎重に繕われた表向きの態度の違いを大抵見破る。
ケアが欠如していても、あるいは演技であっても、信頼は揺らぎ、リーダーは自身が持つ最も強力な影響力の源泉を失うことになる。
ケアは効果的に表現されなければならない
しかし、心からの気遣いだけでは不十分だ。リーダーが従業員をどれほど真剣に思っていても、それが伝えられなければ、従業員にはそれを証明する根拠がほとんど残らない。
ここで、効率向上と人間関係の構築との間の摩擦が無視できないものとなる。スケジュール帳は埋まり、会議が増加し、メールが溜まり、生産性向上への要求は加速する。こうした相反するプレッシャーの渦中では、思いやりを伝える行動は「緊急性」を感じにくいため、後回しにされがちだ。
真摯な思いやりが表現されないままだと、従業員は「存在しない」と判断してしまう可能性がある。信頼関係の構築は遅れ、人間関係はより取引的なものになり、エンゲージメントは低下する。その結果、リーダーは深く気遣っているつもりでも、従業員側はそれを実感できないという職場環境が生まれる。
「変革的ケア」の実践例
変革的ケアは、それが表現されるずっと前から始まっている。継続的にケアを実践できるリーダーは、他者を支援する自らの能力が、自分自身の身体的、感情的、人間関係的な幸福(ウェルビーイング)に大きく依存していることを理解している。自分自身をケアすることで、共感、思いやり、そして支援への余力が生まれるのだ。
思いやりのあるリーダーは、自身の注意力や行動、優先順位を通じてケアを可視化する。相手に意識を完全に向け、貢献を認め、困難に直面した際にはサポートを提供する。障害を取り除き、成長を後押しし、従業員の成功を助ける。
最も重要なのは、思いやりのあるリーダーが従業員を単なる「成果を生み出す存在」としてではなく、「1人の人間」として心から関心を持つことだ。彼らの個人的な抱負を理解し、重要な節目を祝い、意味のある対話のために時間を作る。
個々に見れば、こうした瞬間は取るに足らないように思えるかもしれない。しかし時間とともに、こうした一見小さな行動が積み重なり、信頼、コミットメント、エンゲージメント、そして変革的な成長を生み出す助けとなる。
「あえてスピードを落とすこと」が結果的に進展を速める理由
変革的ケアを育み、表現するには時間がかかる。制度によって強制したり加速したりできるものではない。人間同士の真のつながりは、意図的なやり取りを繰り返すことで築かれる。しかし、この投資は大きな見返りをもたらすことに気づくはずだ。
筆者の経験上、強い信頼と敬意で結ばれたチームは、より効果的に協働する。保身に使う時間を減らし、課題の共同解決により多くの時間を割くようになるため、意思決定が加速するのだ。大切にされていると感じている従業員は、フィードバックや変化を受け入れやすくなる。コミュニケーションはより率直になり、エンゲージメントが高まり、離職率は低下する。
効率化はプロセスを改善できる。しかし、人を変革するには変革的ケアが必要だ。そして、組織の成功を最終的に支えるのは人であるため、時間をかけて思いやりのカルチャーを育むリーダーは、驚くべき真実に気づくことになる。すなわち、「結果として、他のあらゆる物事が速く動き始める」ということだ。



