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2026.10.19 09:06

AIが引き上げる電力需要 市場に必要なのは「善意」ではなく「優れたルール」

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ニューヨークで開催された「クライメート・ウィーク(気候行動週間)」と国連総会の期間中、どこもかしこも「移行(トランジション)」という言葉であふれていた。企業幹部はネットゼロについて語り、各国政府は気候資金やエネルギー安全保障について語った。テクノロジー企業は人工知能(AI)とそれを支えるインフラについて語った。再生可能エネルギー、持続可能な開発、そしてデータセンターの電力需要増加を検証するパネルディスカッションは、終わりのないアジェンダのように思えた。

しかし、そうしたあらゆる議論の背景にある「配分の問題」は、不鮮明なまま残されることが多かった。エネルギーを供給するのは誰か。資本を供給するのは誰か。リスクを吸収するのは誰か。そして最終的に移行費用を負担するのは誰なのか。こうした疑問を抱えたまま、筆者はSTXグループCEOのマライン・ファン・ディーセン氏の取材に臨んだ。

対話は企業の脱炭素化とSTXのアドバイザリー事業「STRIVE」の話題から始まったが、すぐに、より根本的なテーマへと広がった。エネルギー移行は、企業の意欲というよりも市場設計の問題となりつつある。世界が一見すると矛盾する事態に直面しているからこそ、この点が重要なのだ。各国政府や企業が温室効果ガスの排出削減を目指す一方で、AI、電化、産業開発、そして繁栄の追求が電力需要を押し上げている。

データセンターは、その摩擦の最も顕著な象徴となっている。

国際エネルギー機関(IEA)は、世界中のデータセンターによる消費電力が2030年までに倍増し、およそ945テラワット時に達すると予測している。その成長の最大要因と見られているのがAIだ。米国では、データセンターが2020年代末までの電力需要増加の約半数を占める可能性があるとIEAは推計している。しかし、こうした推計があるとはいえ、データセンターを巡る議論は問題の全容というより、単なる症状の1つと捉える方が適切だ。

世界的に見ると、豊かさの向上、電化、冷房、製造業、そして輸送のすべてがエネルギー需要を増加させている。したがって、エネルギー移行は2つのことを同時に達成しなければならない。すなわち、既存のシステムにある高排出エネルギーを代替することと、今なお成長を続ける経済のために追加のエネルギーを供給することだ。ファン・ディーセン氏は、これを成長から後退すべき理由だとは捉えていない。

彼の考え方はむしろその逆である。生産性の向上とさらなる繁栄にはエネルギーが必要だ。追加の需要を全面的に拒否することは、経済発展そのものに対してより大きな判断を下すことと同義になる。課題は、その成長が回避可能な排出を次の世代にわたって固定化させないシステムを設計することだ。

自発的取り組みの限界

企業はこの10年間の大半を費やして、気候目標や再生可能エネルギーへのコミットメント、ネットゼロ戦略を発表してきた。それらのコミットメントは重要だ。しかしファン・ディーセン氏は、移行が自主的な企業行動に依存できる範囲には構造的な限界があると主張する。

ある企業が低炭素生産やよりクリーンな電力、あるいはより高価な燃料に大幅な費用を投じる決断を下したとする。もし競合他社が同等のコストを負担しなければ、その企業は最終的に、投資家や顧客、取締役会に対してその不利な状況を説明せざるを得なくなる。

この問題は、すでに強い規制を受けている産業で特に深刻化する。経営陣は、資本、従業員の時間、経営資源の配分を巡り、相反する要求に直面している。脱炭素化がより複雑化するまさにそのタイミングで、義務的な法的要求に加えて自発的なコミットメントを上乗せすることは、困難になっていく可能性がある。

この問題は、企業内のサステナビリティ部門そのものの内部でも顕在化している。STXグループによると、STRIVEは企業が気候目標の設定から実際の実行へと移行するのを支援するために設立されたという。同社のサービスには、排出量測定、脱炭素ロードマップ策定、再生可能エネルギー調達、サプライヤーエンゲージメント、スコープ3(その他の間接排出量)戦略などが含まれる。同社は、その目的を、排出削減効果とコスト、事業の優先順位、規制上の義務とのバランスを取ることだと説明している。

目標を設定することと、企業が資金を調達し、運用し、経済的に正当化できる経路を設計することは別物だ。この見解を裏付ける研究もある。2024年に『ネイチャー・コミュニケーションズ』誌に掲載されたカーボンプライシング制度に関するメタ分析では、調査対象となった多くの制度で大幅な排出削減が見られた。同時に学術界は、政策設計や文脈によって結果に大きなバラつきがあることも突き止めている。

2026年の『ネイチャー・クライメート・チェンジ』誌の研究は、さらに踏み込んでいる。100カ国以上の1万件を超える気候政策を網羅的に調査した結果、研究者らは炭素税や排出量取引制度が排出強度(炭素集約度)を低下させたことを確認した。しかし、その有効性は、補助金、インフラ、情報政策、その他の規制システムとの相互作用に大きく依存していた。言い換えれば、炭素価格設定(カーボンプライシング)は魔法ではない。市場はルールに反応するが、それらのルールが相互に機能しなければならないのだ。

データセンターが可視化する配分の問題

データセンターを巡る議論は、インフラの要求が緊急であるため、この問題をきわめてわかりやすいものにしている。大規模なデータセンターには、新しい発電設備、送電容量、系統接続、水資源、バックアップシステムが必要となる場合がある。誰かがそれらの資産を建設し、誰かがその費用を支払わなければならない。連邦エネルギー規制委員会(FERC)は、地域の送電網運用者が非常に大規模な新しい負荷をどのように統合すべきかを検証してきた。FERCはまた、送電網運営会社PJMインターコネクションに対し、急速な需要増加に伴うコストの配分方法を見直すよう要請している。

根本的な問いは単純だ。主に新規の大規模電力消費者が求めるインフラ費用を、一般家庭や既存の事業者が実質負担すべきなのだろうか。

テキサス州は、別の方向から同じ問題に直面している。州政府関係者は、データセンターの急速な増加が送電網、インフラコスト、インセンティブ、水需要に与える影響を調査している。他の地域では、異なるモデルの試行が進む。オーストラリアのビクトリア州は、新設のデータセンターに対して再生可能エネルギー発電と蓄電設備の確保を義務付け、系統接続やネットワーク補強に伴うコストを負担させる方針を提案した。問題はもはや、テクノロジー企業が持続可能性に関する公約を掲げているか否かだけではない。これまでにない巨大な需要源によって生じるコストを、電力市場がいかに配分するかにある。

「規制」は市場の代替である必要はない

「規制の強化」という言葉は、多くの場合、政府か市場かという二者択一を連想させる。だがファン・ディーセン氏が提示するのは、両者のパートナーシップに近いものだ。彼は一例として欧州連合(EU)の排出量取引制度(EU ETS)を挙げる。規制当局が排出にコストがかかる枠組みを構築し、企業は適応方法の決定において大きな柔軟性を維持する。

再生可能燃料の義務付けもその一例だ。特定の低炭素燃料に対する需要を政策が創出すると、企業には生産、サプライチェーン、新技術への投資を行う経済的合理性が生まれる。規制要件が個々のプロジェクトをひとつずつ選定するわけではない。プロジェクトが競い合う経済的条件を変えるのだ。

ある地域が炭素コストを課す一方で、別の場所にある競合生産者がそれを課されない場合、規制を受ける企業は単純に競争力を失うことになりかねない。EUの炭素国境調整措置(CBAM)のような貿易措置は、炭素コストの一部を輸入品にも適用することで、この問題に対処しようとしている。生産に伴う環境コストがルールを課す法域の外で発生しているという理由だけで、企業が経済的優位性を得るのを防止することが目的だ。

しかし発展途上国にとって、この問題はより複雑になる。対話の中で筆者は、「公正な移行(ジャスト・トランジション)」を巡る議論で繰り返し生じる摩擦について指摘した。富裕国は往々にして途上国に対し、自分たちが工業化のためにたどった化石燃料依存の道を繰り返すなと語る。

さらなる繁栄を目指す国は、安定的かつ手頃な価格の電力を依然として必要としている。もし低炭素の代替案の導入に時間がかかり、入手しにくく、より高価であれば、政府が最も迅速に成長をもたらす選択肢へと傾くのは目に見えている。これこそが、市場設計が重要であるもうひとつの理由だ。気候政策は、よりクリーンな開発を単に「望ましいもの」とするだけでなく、「経済的に実現可能なもの」にしなければならない。

エネルギー安全保障がもたらす計算の変化

ファン・ディーセン氏の経済的論点は、炭素の問題を超えて地政学的な相互作用にまで及ぶ。化石燃料と再生可能エネルギーの従来の比較は、平均価格に焦点が当てられがちだった。しかしそれでは、地政学的な混迷に直面するリスクという、もうひとつの重大なコストが見落とされてしまう可能性がある。

欧州はそのことを身をもって体験した。輸入天然ガスや石油製品への依存は、戦争や制裁、供給停止によって供給状況が変わった際、きわめて大きな脆弱性を生む。その結果、政府は補助金や減税などの介入を通じてショックの一部を吸収し、家庭や企業は価格高騰の負担を強いられることになる。

これに対する対抗策が、太陽光、風力、水力発電、原子力発電、蓄電、その他のエネルギー源を網羅した分散型・多角化エネルギーシステムだ。それぞれに限界はあるが、単一の技術があらゆる状況下で絶えず電力を供給できるかのように振る舞うことが目的ではない。

このダイナミクスは、気候に関する議論であると同時に、市場におけるエネルギー安全保障についての議論でもある。

米国は自国が天然ガスや石油の主要生産国であるため、歴史的にこの問題を異なる形で経験してきた。生産国であることは、他国が経験してきたような価格や供給の変動に対して一定の安定性をもたらしていた。しかし、データセンターや電化による急速な電力需要の増加により、発電、送電、信頼性を巡る同様の議論を余儀なくされつつある。したがって、本質的な問いは「再生可能エネルギーが化石燃料より常に安価か否か」ではなく、「ボラティリティ(価格変動性)、インフラ、環境コストを含めた場合に、どの資源の組み合わせが最もレジリエントなシステムを構築できるか」という点に移りつつある。

完璧な「意図」ではなく「優れた市場」を

企業は心から排出量を削減したいと考えているかもしれない。テクノロジー企業は再生可能エネルギーの調達やクリーンな発電への投資方法を模索しているかもしれない。しかし善意だけでは、送電網のアップグレード費用を誰が支払うのか、あるいは電力会社が新規発電のコストを新規参入のデータセンターから回収するのか、それとも既存の家庭から回収するのかは決まらない。企業のコミットメントだけでは、輸入品が国内製品と同じ炭素制約に直面するかどうかを確立することはできない。

それこそがガバナンス(統治)の役割である。ルールは、脱炭素化を競争、発展、そして増加するエネルギー需要と両立させるインセンティブを生み出さなければならない。より広範な試金石は、各国政府が、より多くの電力、より大きな繁栄、そして排出削減を同時に求める世界のために、エネルギー市場を設計できるかどうかにかかっている。

ファン・ディーセン氏は楽観的な視点を示している。彼は長期的な視野に立っているのだ。気候政策はこれまでも政治的サイクルを通り抜けてきた。環境商品市場もまた、供給過剰やセンチメントの冷え込みの時期を経験してきた。それでも、再生可能電力、よりクリーンな燃料、その他の移行分野への投資は継続している。

彼の見解では、長期的な方向性は揺らいでいない。AIやデータセンターがこの課題を生み出したわけではないかもしれないが、無視できないものにしたことは間違いない。

(forbes.com 原文)

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