起業家なら誰しも、どこかの時点で資金繰りの逼迫を経験している。次の給与を支払えるか、明日を生き延びるための手元資金を確保できるかと不安に駆られることほど、つらいものはない。資金が底をつくという恐怖は人を追い詰め、窮地を救ってくれる者なら誰からでも資金を受け入れたいという気持ちにさせる。しかし、そうした資金を受け入れることが意図せぬ結果をもたらす場合がある。長期的な影響を考慮していれば、振り返ってみて絶対に受け取らなかったはずの資金だ。本ケーススタディは、自らの事業で同様の過ちを犯さないための教訓となるだろう。
ケーススタディ──「今」を生きるケース
ブティック型のジュエリーショップをチェーン展開するある小売業者に出会った。同社は、人口の多い大都市圏の富裕層が多く住む郊外に店舗を構えることを好んでいた。しかし、消費支出の落ち込みに伴い売上が低迷し始め、資金繰りが悪化。銀行口座に余裕資金はなく、事業を救うために急いで投資家を見つける必要に迫られた。
幸いにも、切望していた資金を注入してくれる投資家が見つかった。しかし、その資金には条件がついていた。その投資家は店舗のファンで、自分の住まいから近い場所に新しい店舗を開設することを望んだのである。会社にとって問題だったのは、その投資家が都心から約30マイル離れた、それほど裕福ではない地方のコミュニティに住んでいたことだ。経営者はその場所で新店舗が成功するとは到底思えなかったが、喉から手が出るほど資金を求めていたため、出資契約をまとめるべく、自らの新規出店戦略に例外を認めてしまった。
良いニュースは、会社の銀行口座に必要な資金が注入され、生き残って戦いを継続できたことだ。一方、悪いニュースは、1年後に投資家の地元にオープンした新店舗が、開店前から失敗することが目に見えていたことだ。その地域には、高級ジュエリーに興味を持つ富裕層が単純に不十分だった。調達した資金の半額をこの新店舗に投じ、立ち上げに1年という時間を費やした末、会社は開店から約3カ月でその店舗を閉鎖せざるを得なくなった。これにより、会社は1年前と全く同じ状況、すなわち何の成果も得られないまま資金繰りに困窮する状態へと逆戻りした。
しかし、今回はさらに事態が悪かった。2度目に投資家に声をかける際には、なぜ最新の店舗オープンが失敗し、開店直後に閉鎖せざるを得なかったのかを説明しなければならないという、面目を失う状況に置かれていた。新たな投資家たちは、最適な出店場所を見極める彼女の専門性に疑問を抱き始め、成長計画におけるすべての新規出店の前提条件に懐疑的になった。そして、事業計画に新たな不確実性が生じた際、多くの投資家はどう行動するか──通常、何もしない。まさにそれがここで起こったのだ。同社は2回目となる資金調達に失敗し、廃業を余儀なくされた。なんという惨状だろうか。
ケーススタディ──「未来」を見据えて生きるケース
もしこの経営者が「今」ではなく「未来」を見据え、自身が定めた新規出店戦略を固持する覚悟を持っていれば、この事業は生き残っていたかもしれない。彼女は最初の投資家に対し、「一等地ではない」市場に出店したくない理由を説明すべきだった。そうすれば投資家は、成功する店舗チェーンを運営するための彼女の明確な規律を目の当たりにし、より一層の敬意を払っただろう。その投資家は立ち去ったかもしれないが、それで全く問題ない。直感的に間違った決断だと分かっているような不要なハードルを課してこない、新たな投資家を探せばよいだけの話だ。
ここでの核心の1つは、「すべての資金が同じ価値を持つわけではない」ということだ。事業に悪影響を及ぼすと知りながら受け取る条件付きの資金は、資金などではなく、このケースが示しているように、実質的に死刑宣告の前兆となり得る。
おわりに
事業を運営することはチェスに似ている。常に10手先を考えなければならない。そうでなければ、目先の火消しに追われた挙句、知らず知らずのうちに自分の首を絞める結果になりかねないからだ。すべての行動には結果が伴う。良い結果もあれば、悪い結果もある。「木を見て森を見ず」に陥らないよう聡明であり、十分な先を見据えた計画を立てることで、意図せぬ大火災を引き起こさないようにすることが重要だ。
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ジョージ・ディーブ(George Deeb)はRed Rocket Venturesのパートナーであり、『101 Startup Lessons-An Entrepreneur's Handbook』の著者である。



