経済・社会

2026.10.19 09:30

中国の貿易黒字、約190兆円で最高更新記録へ──それでも国内で負けている理由

Photo by Andrew Harnik/Getty Images

Photo by Andrew Harnik/Getty Images

2026年の中国経済は、画面を2つに分けて別々の映像を映しているかのようだ。世界経済を見渡しても、これほど目を引く光景はない。

中国の輸出は9月に36%増、6年目に入った不動産不況

一方の画面に映っているのは、絶好調の輸出である。9月の輸出は前年同月比36%増と急伸した。大幅な伸びを記録した月はこれまでにも数多く、9月もその1つに加わった。この勢いからみて、2026年の中国の貿易黒字は、2025年に記録した過去最高の1兆2000億ドル(約190兆円)を上回りそうだ。しかもこの急増は、関税が課され、世界の主要国で金利が上昇している中で起きている。

もう一方の画面には、習近平国家主席が抱える国内経済の問題が急速に深刻化していることを示す材料が、次々に映し出されている。不動産不況は、主要70都市の住宅価格が前月比で全体として小幅な下落に転じた2021年9月から数えて、6年目に入った。家計の需要は弱く、地方政府の財政は目も当てられない状態だ。若者(在学生を除く16〜24歳)の失業率も2026年8月に18.9%と、算出方法を改めて以降で最も高かった2025年8月に並んだ。アジア最大の経済大国である中国に、打撃が立て続けに降りかかっているのだ。

AIとEVが追い風でも、中国を襲う逆風はかき消せない

中国は人工知能(AI)の波に乗り、電子機器や、レアアース(希土類)などの原材料・部材を売り込んでいる。中国本土の電気自動車(EV)メーカーや自動車部品メーカーも、世界で一躍脚光を浴びている。

だが、もはや誰の目にも明らかなように、輸出という原動力だけでは、中国経済にのしかかる国内の逆風をかき消せなくなっている。しかも、その逆風は増える一方だ。輸出の急増によって、習近平指導部がデフレを過去のものにできるわけでもない。

財政出動は見込めても、人民銀行はなぜ利下げをためらうのか

結局のところ、中国政府は今後数日から数週間のうちに、景気を下支えする新たな手を打つとみられる。新たな財政支出や債券発行の枠の拡大、中国人民銀行(中央銀行)による追加の資金供給が見込まれる。人民銀行がときおり利下げに踏み切る場面もあるかもしれない。

もっとも、利下げに踏み切るとは言い切れない。中国人民銀行の潘功勝(パン・ゴンション)総裁が、これまで金融緩和にきわめて慎重だったからだ。潘がこれほど慎重な理由は、いくつかある。1つは、人民銀行が、何年もかけて進めてきたデレバレッジ(経済全体の債務の圧縮)の成果を無駄にしたくないと考えていることだ。もう1つは、利下げで人民元安が進めば、不動産開発会社が海外で借り入れた外貨建ての債務の返済負担が重くなり、大型のデフォルト(債務不履行)が起きるリスクが高まりかねないことだ。

3つ目の理由は、ほかならぬ最高指導者の意向にある。重大な局面を迎えている貿易交渉のさなかに、ドナルド・トランプ大統領の政権を刺激したくない、という習の思いである。米国との「グランドバーゲン(包括的な合意)」の締結を習が急いでいないのは確かだ。とはいえ、人民元安が進めば、米国に新たな関税を課す口実を与えかねない。習は、そこまでの危険を冒す意味はないとみている。

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翻訳=酒匂寛

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