米共和党の大統領候補、ドナルド・トランプは、イスラム教徒の米国への入国を「完全に禁止」すべきだと発言。波紋を呼んでいる。民主・共和両党の幹部も、その他の大統領候補もトランプを強く非難しているが、米国民はどう考えているのだろうか。
NBCニュース/ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の調査では、57%がトランプの主張に反対。25%が賛成した。また、CBSニュースの調査では、58%が米国は「一時的に」でもイスラム教徒の入国を禁止すべきではないと回答。36%が「一時的禁止に賛成」と答えた。このほか、ABC/ワシントン・ポストの調査では反対が60%、賛成が36%だった。
米国では数多くの分野で、党派による意見の相違がみられるが、この問題でも同じ傾向がみられた。CBSニュースとABC/ポストの調査では、共和党支持者の大半が、「限定的な禁止なら支持」と回答。「完全な禁止」には42%が賛成した(禁止に「反対」は36%)。3件の調査のいずれにおいても、民主党支持者の間では7割以上が、無党派層ではおよそ6割が、トランプの意見に反対だった。
CBSニュースの調査には、「入国禁止には効果があると思うか」との質問が含まれた。その結果、回答者の46%が「禁止してもテロから米国を守ることは不可能」と答えた。(禁止は米国を) 「安全にする」としたのは28%、「より危険にする」としたのは19%だった。
いずれにしても、米国民はテロに恐怖を感じている。自国が直面している最も重大な問題は何であるかとの問いに対し、「テロ」と答えた人が最も多かった。最近のピュー研究所の調査によると、62%がイスラム教徒による世界的なテロの拡散を「非常に懸念」しており、27%が「少し懸念」している。また、民主・共和両党の支持者と無党派に分けてみた場合でも、回答者の大半が「非常に懸念」していると答えた。このほか、米国民の58%が、オバマ大統領の外交政策と国家安全保障問題に関する姿勢に「毅然とした態度が不足している」と答えた。
米国民はまた、寛容でありたいと考えていることが分かった。過去の調査の結果では概して、イスラム教徒全体に対する好意的な見方が示された。2009年と2010年、今年下期に行われたNBCニュース/WSJの調査の結果では、いずれも過半数が、イスラム教徒を好意的にみていた。一方で、CBSニュースの調査では、米国人の約半数がイスラム教徒を知らないと回答。イスラム教徒の「親しい友人がいる」と答えたのは18%、「知り合いがいる」と答えたのは30%だった。
ピュー研究所が最近の調査で、「イスラム教はその他の宗教よりも暴力を支持していると思うか」と尋ねところ、46%が「イエス」、45%が「ノー」と答えた。さらに、回答者の61%は「宗教を理由に、米国に住むイスラム教徒をより厳格な調査の対象とすべきではない」と回答。「より厳しく調べるべき」だと答えたのは32%だった。
これらの結果、多くの米国人が「トランプの発言は自国の掲げる理想にも憲法にも沿ったものではない」と考えていることが分かった。CBS ニュースの調査結果では67%が、「一時的な入国禁止」は米国の「建国の理念」に反すると回答。また、イスラム教徒の米国への入国を禁止すれば、イスラム教国に展開している米兵の命を危険にさらすほか、米国に対する敵意を増幅させる可能性があるとの懸念も示された。
最近の出来事に関する世論調査では、多くの人が「意見を持てるほどよく知らない」と回答する場合が多い。だが、今回は問題発言の直後の調査だったにもかかわらず、明確な傾向を示すデータが得られた。