Forbes JAPAN 2026年12月号の第2特集は、規模は小さくても高い付加価値を誇る中小企業を表彰する「スモール・ジャイアンツアワード」。今回で第10回の節目を迎えた。「グローバル市場の開拓」「地域への貢献」「稼ぎ続ける力」を基準に選ばれてきた受賞企業は、これまで日本経済再生の担い手として語られることが多かった。だが、今回の受賞企業7社が示したのは、それにとどまらない可能性だ。インフラの老朽化、環境問題、人口減少……。社会が抱える難題を解く「切り札」としての力である。中小企業ならではの人的資本経営をたたえる「LOVED COMPANY賞」の2社とあわせ、未来を変える「小さな大企業」の挑戦を追った。
小さな巨人は、なぜ強いのか。そしてどこへ向かうのか。経営学と複雑系科学を背景にブランドを研究する本條晴一郎が、第10回スモール・ジャイアンツアワードから読み解く。
本條晴一郎 東京科学大学 環境・社会理工学院 准教授
今年8月、第10回スモール・ジャイアンツアワードのピッチ・授賞式イベントに初めて参加した。ピッチを聞いて驚いたのは、代替のきかない技術をもつ企業が揃っていることだった。想像以上に「技術起点」のイノベーティブカンパニーの集まりだったのである。
私はブランドについて研究するとともに技術経営の社会人大学院で教育に携わっている。技術とブランドは本来、相性がいい。ブランドには、製品の使用体験が強く反映されるからだ。さらに、なぜその技術が必要なのか、それが社会やユーザーに何をもたらすのか、実現までにどんな苦労を乗り越えてきたのかを語ることで、その技術がもつ意味もかたちづくられていく。
ブランディングとは、製品に価値を「足す」ことではなく、技術とユーザーや社会との関係のなかで、その価値をかたちづくっていくことだ。ブランドとは、技術と社会をつなぐインターフェースと言える。
優れた技術をもっていても、それが社会やユーザーにとってどのような意味をもつのかが言語化されていなければ、その企業の魅力は伝わりにくい。多くの技術者は、技術そのものや社会との関係について語るに値する内容を豊富にもっている。これはブランディング上、大きなアドバンテージである。ところが、自分はブランドとは無関係だと思っている技術者は少なくない。これが、まだ発見されていないスモール・ジャイアンツの課題だ。だからこそ、そうした企業に光を当て、その技術が社会にとってどのような意味をもつのかをともに見いだす取り組みには意義がある。
印象的だったのは、歴代グランプリ企業として登壇したオキサイドの古川保典CEOが、「受賞をきっかけに、製品の良さだけではなくて、会社のストーリーや社会に対するミッションを自らの言葉で語ることの大切さに気づいた」と語っていたことだ。
アワードのピッチは、技術者から実体験に根ざした「本当の話」を引き出す装置として機能する。ピッチが上手である必要はない。「失敗のほうが多いが、100個やれば1個は当たる」と語った流機エンジニアリングの西村聡のように、苦労して難題を乗り越えてきた話を正直に語れば、顧客は「この会社なら自分の難題も解決してくれる」と感じてくれる。



