透明度の高い海と豊かなサンゴ礁を有し、世界中から観光客が訪れるパラオ共和国。太平洋のミクロネシア地域に位置し、500以上の島々からなる。経済の中心地コロール島のほか、日本の委任統治下にあった第二次世界大戦時には、ペリリュー島やアンガウル島が日米の激しい地上戦の舞台となった歴史も併せ持つ。
総面積は日本の屋久島とほぼ同じ488平方kmで、国民は1万7695人(2024年、世界銀行)。国土・人口の少なさから産業構造も限定的で、燃料や食料の多くを海外からの輸入に頼っている。そのため発電コストの高騰や偏った食事による肥満(世界トップ10に入る肥満率)といった大きな課題がある。
持続可能なインフラの整備や新産業の創出が必要とされるなか、その突破口となるべく日本の「久米島モデル」を参考にした「パラオモデル」の構築が始まっている。
「久米島モデル」は島嶼国の光
久米島モデルとは、沖縄県の久米島で実証実験に成功したモデルで、海洋深層水を利用した海洋温度差発電(OTEC=表層水と深層水の温度差を利用した発電)を軸として、エネルギー、食料、淡水の自給と産業創出をまとめて実現する仕組みだ。
パラオでは2023年からこの久米島モデルをパラオで展開するための基礎調査が日本のODAを活用してスタートした。現在実施中の調査では、パラオ沖での海洋深層水のテスト取水や、日本の民間企業の参画による将来的な事業性を描くための小規模実証も行われており、新たな官民連携ビジネスとして期待が集まっている。
ゼネシスの岡村盡によると、このモデルの最大の特徴は、取水インフラ(冷たい海洋深層水を陸上まで汲み上げるための取水管などの設備)を発電だけでなく、その後も多段階で二次的に利活用できることだ。海洋深層水の「冷熱」「清浄性」「豊富な栄養塩」といった特性を、冷房・農業(水耕栽培)・陸上養殖に活用し、さらには淡水もつくれるなど、一つの資源から多様な価値を生み出せるという。すでに葉物野菜の水耕栽培(HydroCrops社)や牡蠣の陸上養殖(ジーオー・ファーム社)、海水の淡水化(Waqua社)といった日本企業によるテストが行われている。
「米ハワイ州でも大規模な複合利用が行われているのですが、ハワイでも久米島と同様に取水インフラを公共機関が管理・運営して、汲み上げた深層水を民間企業に販売しています。パラオも同様に公共機関が取水を担い、深層水を活用した産業の創出に関しては現地だけでなく日本等の民間企業や関係機関の協力を得つつ次第に現地で自立していくことを想定しています」(岡村)



