Forbes JAPAN 2026年12月号の第2特集は、規模は小さくても高い付加価値を誇る中小企業を表彰する「スモール・ジャイアンツアワード」。今回で第10回の節目を迎えた。「グローバル市場の開拓」「地域への貢献」「稼ぎ続ける力」を基準に選ばれてきた受賞企業は、これまで日本経済再生の担い手として語られることが多かった。だが、今回の受賞企業7社が示したのは、それにとどまらない可能性だ。インフラの老朽化、環境問題、人口減少……。社会が抱える難題を解く「切り札」としての力である。中小企業ならではの人的資本経営をたたえる「LOVED COMPANY賞」の2社とあわせ、未来を変える「小さな大企業」の挑戦を追った。
日本が世界に先駆けて直面する難題に、独自の技術と覚悟で挑む小さな会社がある。その解決策は、やがて世界の答えになる──。
Forbes JAPANが主催するスモール・ジャイアンツアワードは、第10回の節目を迎えた。「グローバル市場の開拓」「地域への貢献」「稼ぎ続ける力」を基準に選ばれてきた受賞企業は、これまで日本経済再生の担い手として語られることが多かった。だが、今回の7社が示したのは、それにとどまらない可能性だ。インフラの老朽化、環境問題、人口減少……。社会が抱える難題を解く「切り札」としての力である。
それが鮮明に表れたのが、インフラの現場だ。2025年1月、埼玉県八潮市で道路が陥没し、走行中のトラックがのみ込まれた。高度経済成長期に集中してつくられた橋やトンネル、下水管は、いま一斉に寿命を迎えつつある。事故後、国が7都府県に求めた緊急点検のうち6件を任されたのは、道路下の空洞を走りながら見つけるジオ・サーチだった。特殊な素材を塗るだけで劣化した構造物の強度を取り戻す染めQテクノロジィにも、下水管の補強で自治体からの依頼が相次ぐ。社会の足元を守る最前線には、小さな会社の姿がある。
グランプリの流機エンジニアリングは、トンネル工事の粉じんが引き起こす「じん肺」から作業員を守ろうと現場に寄り添い続け、山岳トンネル工事用の集じん機で国内シェア90%を占めるまでになった。その技術はいま、PFAS(有機フッ素化合物)の除去など、地球の水と空気を守る挑戦へと向かう。佐賀県多久市の山口産業は、膜構造建築の技術で東日本大震災の復興を支え、被災地にいち早くテントを届ける体制も整える。
人口減少に挑む企業もある。金沢市の石野製作所は、国内シェア7割の寿司コンベアで外食産業の人手不足の解決を担う。人口約3万人の京都府綾部市から世界の富裕層を呼び込むアヤベックスは、訪日客の「地方分散」という課題に答えを示す。一方、大分県別府市の三洋産業は、大手の下請けから脱し、自社ブランド「CAFEC」のコーヒー器具を世界80カ国に届ける。地方の町工場から始まった企業が、世界と直接つながる時代だ。
日本は「課題先進国」と呼ばれる。インフラの老朽化も人口減少も、世界に先駆けて直面しているからだ。裏を返せば、ここで磨かれた解決策は、やがて世界が求めるものになる。なぜ、小さな会社にそれができるのか。東京科学大学環境・社会理工学院准教授の本條晴一郎は、「これまで大企業が労働集約的に担ってきたインフラ保守を、独自の技術をもつ会社が大企業化することなく担えるようになった」と指摘する。経営者の意思が隅々まで届き、変化への対応も速いという。
中小企業ならではの人的資本経営をたたえる「LOVED COMPANY賞」の2社とあわせ、未来を変える「小さな大企業」の挑戦を追った。




