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宇宙

2026.10.23 15:00

軌道上よりも地球上でこそ「宇宙農業技術」が重要になる理由

NASA

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宇宙で食料を栽培することは、多くの面で大きな課題となり得る。宇宙飛行士は、宇宙船内のスペースが限られ、生鮮食品が傷みやすいことから、大量の新鮮な食料を持ち込むことができない。そのため、長期ミッションでは、投入資源、水、空間、乗員の介入を最小限に抑えて食料を生産する必要がある。

現在、宇宙で食料を育てるための技術が数多く開発されている。NASAの「ベジ」システムではすでに、国際宇宙ステーション(ISS)内でレッドロメインレタス、ミズナ、ドワーフ(わい性)ミニトマトなどを栽培することに成功している。また、NASAの高度植物生育装置(APH:Advanced Plant Habitat)は、180以上のセンサーや制御機器を備えた、より高度な自動栽培チャンバーを提供している。しかし、こうした技術の開発は、重要な問いを提示している。地球上でも制約が強まりつつある環境下の農業に、これらの技術を応用できるのか、という問いである。

宇宙で食料を育てることが難しい理由

宇宙で食料を安定的に栽培することは極めて難しい。主な理由は、微小重力が水、空気、根の相互作用を乱すためだ。

重力がなければ、水は自然に流れたり排出されない。その代わり、水はまとまって無重力空間を漂うか、器や機械の表面に強く張り付いてしまう。場合によっては、植物の根に水が付着することで酸素の取り込みが妨げられ、実質的に植物を窒息させることがある。

重力がなければ、植物が成長する方向も狂わせてしまう。植物はどちらが下かを判断するために重力を利用している。そのため微小重力下では、根や芽が方向を見失い、ランダムな方向に伸びることがある。熱い空気が上昇し、冷たい空気が下降する自然対流がなければ、葉の周囲に空気が停滞するポケットが生じることもある。これにより蒸散が低下し、植物が過熱する可能性がある。

また、放射線量の高さも大きな課題となる。宇宙船内や他惑星の表面では、植物が宇宙放射線や弱い磁場にさらされる場合があり、細胞成長が損なわれたり、種子の発達の仕方が変化したりする可能性がある。大量の地球の土を運ぶことも、重すぎるうえに費用がかかる。一方、地球外の土壌であるレゴリスには、窒素のような必須有機栄養素が不足しており、成長をさらに妨げる鋭利で有毒な化合物が含まれることもある。

宇宙農業技術はこうした制約にどう対応しているのか

NASAや欧州宇宙機関(ESA)、民間企業などでは、土を使わない高度な自動化システムや生物再生型システムを開発し、長期ミッションの間に食料を育てている。それらの中で最も重要な技術の1つが水耕栽培だ。これは土を使わず、水をベースにしたミネラル栄養液を用いて植物を育てる方法で、微小重力下で根に水と酸素を直接届けるために使われる。

NASAの「ベジ」や「高度植物生育装置(APH)」のようなシステムは、毛細管現象や、「ピロー」と呼ばれる特殊な培地パック、多孔質チューブ、制御された気流などを利用して、微小重力環境での野菜栽培を実現している。これにより、根を清潔な状態に維持しつつ、精密に調整された養分、水、酸素を受け取ることが可能となる。閉鎖循環システムは水を再利用し、重い土を不要にする効果もある。人工LED照明と閉鎖型換気は、太陽光と自然の風に代わって光合成を促している。

噴霧耕(エアロポニックス)というシステムもある。根を空中に吊るし、栄養豊富な水溶液を定期的に噴霧することで、高濃度の酸素に触れさせて植物の成長を促すのだ。他にも研究者らは、トリコデルマ属や菌根菌のような菌類を用いて、栄養分に乏しい月や火星のレゴリスを、作物を支えられる基質へと処理・変換する方法を探っている。

NASAの「適応型栄養供給構想」のような新しい施策は、深宇宙における栄養供給の課題に対応することを目的としており、環境制御型農業に発酵、菌類栽培、閉鎖循環型の栄養リサイクルを組み合わせている。欧州宇宙機関においては、微小重力や高放射線環境下での培養肉や、細胞ベースの食品の実現可能性を検証するプロジェクトを支援している。

これらの技術は地球の農業にどう応用できるのか

環境制御型農業のような宇宙農業技術は、地球上でも食料安全保障、資源保全、持続可能性を高める大きな可能性を持っている。気候変動によって異常気象や栽培シーズンの変動がますます激しくなっている現状においては、これらの技術は特に有用となるだろう。

次ページ > 宇宙農業技術は、すでに導入されつつある。

編集=鈴木喜生

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