富裕層が一段と豊かになり、超富裕層の数が増えていることに疑いはない。ナイト・フランクによれば、純資産3000万ドル(約47億4000万円)超の個人であるUHNW(超富裕層)の数は過去5年で29%増加した。プライベート航空はその恩恵を受けるはずであり、少なくとも2026年半ばまでは実際にそうだった。
2025年のWingXのデータによると、全52週のうちプライベートジェットの週間出発便数は46週で前年同週比プラス、3週で横ばい、前年を下回ったのはわずか3週だった。2026年上半期には、前年比で増加が18週、横ばいが2週、減少が6週となった。しかしそれ以降、出発便数が増加した週はわずか4週にとどまり、3週が横ばいとなった。直近13週のうち7週では、2025年の同週と比較してプライベート便の回数が減少した。
飛行時間を追跡調査しているARGUS Traqpak(アーガス・トラックパック)によると、8月の北米における飛行時間は前年同月比0.3%増にとどまり、前年比で最小の伸びとなった。また同社は、9月には業界として2025年初頭以来初となる前年比マイナス成長に転じると予測している。
これまでのところ、個別企業から業績悪化などの逆風を報告する声は上がっていない。
プライベートジェット運航世界最大手のネットジェッツ(NetJets)は、8月初旬に新規顧客向けのリースおよびジェットカードの販売を停止した。需要に対応するのに十分な速さでメーカーから新機材を受け取れていない可能性を示唆する動きだ。同社は当時、「当社では、記録的な高水準の継続率に加え、(フラクショナル)オーナーおよび市場需要の増加が続いている」と述べ、さらに「共有所有という中核事業に注力し、既存の(フラクショナル)オーナーへのサービス提供を損なわないよう、販売については引き続き規律あるアプローチを取っている」と説明した。
中東におけるプライベートジェットの運航は、全体としてイランと米国の紛争に阻まれてきたが、すべての企業にとってそうだったわけではない。ビスタ(Vista)のトーマス・フロール会長はBillionaires Africaに対し、この紛争によって同社のジェットカードに相当する「ザ・プログラム(the Program)」の需要が押し上げられたと述べた。中東で販売された第2四半期の飛行時間は前年同期比68%増だったという。フロールは、この急増を新型コロナ禍の時期と比較しながら、「人々は移動する必要があり、定期航空会社がグローバルな物流インフラを再始動するのは、当社にとってよりはるかに難しい」と語った。
フライエクスクルーシブ(flyExclusive)は第2四半期の決算発表において、飛行時間が前年同期比8%増となり、2025年第4四半期に次ぐ同社史上2番目に高い記録を達成したと明かした。
先月、ジェットカード大手センティエント・ジェット(Sentient Jet)のアラン・ホーリー最高収益責任者(CRO)は、「フライト区間数と飛行時間の双方が増加している。年初からのカード1枚あたりの平均購入額は前年同期比で15%以上増加した。また、航続距離の長期化や大型機への移行も見られる。スーパーミッドサイズ機は前年比で約25%増加している。これには出張需要の力強い回復も一因となっている」と述べた。
ARGUSのシニアバイスプレジデントであるトラビス・クーンはこのデータについて、「8月の運航実績は予想を下回ったが、依然としてプラスを維持した点は注目に値する」と述べる。さらに、「数字を見ると、2つの仮説が考えられる。1つ目は、8月は例年、新学期の開始の影響を受け、一定の減少傾向が見られることだ。ただしその程度は年によって異なる。その観点から言えば、穏やかな8月は正常であり、ある程度予見できたものだ」と続けた。
クーンは、「9月については、年初の予測時点から横ばいになると見込んでいた。主な理由は、昨年9月に7.5%の成長を記録していたことだ。これは、コロナ直後を除けば、10年間で単月として最大の成長率だった。これらを総合すると、これは正常な状態であり、問題はないと考えている」と指摘する。
一方で、ARGUSのデータによると、2026年第1四半期は2025年第1四半期比で4.4%増となり、厳しい冬の嵐がなければ前年同期比5%増となっていたはずだった。クーンは「2026年第3四半期に入り、地政学的要因による輸送コストの高騰が6カ月間続いた後、伸びは横ばいとなっている」と述べ、「各数値の背後にある正確な要因を特定するのは困難だが、業界内での潜在的な影響を無視することはできない。その影響は業界に致命的な打撃を与えてはいないものの、短期的に追い風となっているわけでもない」と付け加えた。
現在の状況の具体的な原因を特定できるかと尋ねられると、クーンは「真相は、季節的な成長鈍化期と一定の景気減速の影響の、おそらく中間に位置するのだろう。全体として、航空業界は引き続き非常に堅調で健全であり、予期せぬ事態が起きない限り、その状態が維持されると見込んでいる」と語った。



