フランス、スペイン、イタリア、ギリシャ、トルコに広がる地中海沿岸は、世界で最も人気のある観光地のいくつかを擁している。
これは大きな経済的価値を生み出す一方で、環境的に敏感な沿岸の比較的狭い地域にインフラ開発や消費が集中する要因にもなっている。
観光ブームは、水不足、生息地の劣化、沿岸侵食、海洋生態系への圧力など、これらの地域にすでに存在する環境問題をさらに悪化させる可能性があり、気候変動によってその傾向はさらに強まっている。
こうしたなか、経済や観光の成長と環境保護の両立を目指し、周辺環境への負荷をより小さく抑えられる可能性のあるエコツーリズムモデルを導入するホスピタリティ事業者が増えている。
低密度で自然と一体化
トルコのファラリヤの断崖に位置する小規模ブティックリトリート「Perdue(ペルデュ)」は、低密度の地中海観光の価値を示している。建築は周囲に押しつけるのではなく、むしろそれに適応するという哲学のもと、このホテルは自然そのものを最大の魅力に変えている。
これには古代の松、オリーブ、柑橘類などさまざまな樹木の保護に加え、アカウミガメやアオウミガメ、チチュウカイモンクアザラシ、ギョジェクサンショウウオといった繊細で脆弱な種を含む多様な野生生物への配慮も含まれる。
「私たちにとって、真に低負荷な観光とは節度から始まります。ホテルがどれだけのエネルギーや水を消費するかだけでなく、そこに存在するためにその場所をどれだけ変えてしまうかが問われるのです。この低密度は意図的なものです。建築ではなく、景観こそが体験を特徴づける要素であり続けることを可能にします」と、Perdue創業者のハック・ゲルミヤンオール氏はForbesへのメッセージで語った。
サファリグランピングのコンセプトでスイートはわずか17棟。テントは半恒久的な構造物で、完全に解体・撤去可能なよう設計されており、自然環境への恒久的な影響を最小限に抑えている。
そのため、すでに侵食、地滑り、落石が起きやすい脆弱なファラリヤの断崖をさらに弱めるようなコンクリート基礎は使用されていない。
水、電気、廃棄物処理のためのユーティリティラインは一時的に残るものの、これらも従来のレンガやモルタル造りのホテルと比べれば、森を自然の状態に戻すためにはるかに容易に撤去できる。
屋根葺き用の川草、竹、地元産木材の骨組みなど、再利用性が高い、または生分解性のある素材も用いられている。
テントや小道、その他の構造物は斜面の既存の輪郭に合わせて成形され、この地域の古い松やアボカドの木、自然の岩石形成を可能な限り損なわないようにしている。
同様に、人工の砂浜を造る代わりに、海岸線は自然の岩場のままに保たれている。
自然とのつながりをさらに深めるため、ホテルは自家菜園のオーガニック果物、蜂蜜、放し飼いの鶏、ハーブ、野菜を使用し、海産物は地元漁師から仕入れることでフードマイレージの削減にも貢献している。
その他の食材はフェティエ地域の市場から調達し、地域経済の支援にもつなげている。
同ホテルはすでにトルコ持続可能な観光基準の第2段階要件に適合していることが確認されており、土壌保全、再植林、文化遺産に取り組む非政府組織TEMAとÇEKÜLへの貢献も行っている。
サステナブルな建築と地産地消
クロアチアのフヴァル島にある「Valamar Amicor Green Resort(ヴァラマール・アミコール・グリーン・リゾート)」は、サステナブルな建築と地元・地域からの調達を実践することで、地中海エコツーリズムのもう一つのモデルを体現している。
リゾートのヴィラは、持続可能な木材や石材など、天然素材、リサイクル素材、再生素材を使って建てられている。将来の解体やリサイクルを見据え、プレハブ工法やモジュール式の建築技術も採用されている。
同リゾートはドイツ持続可能建築協議会のゴールドDGNB認証を取得しており、クロアチア初のファミリー向け認証エコリゾートである。
リゾートは敷地内で生成される100%ソーラーエネルギーで稼働し、照明の85%は省エネLEDが使われている。
また、消費量を追跡する客室内の「エコディスプレイ」を設置することで、節水や省エネの取り組みに旅行者を巻き込んでいる。ヴァラマールは敷地内で電気自動車のみを使用している。
食材の約77%は地元および国内の生産者から調達され、オーガニックの敷地内菜園や昆虫ホテルも設置されている。
新鮮な果物と野菜は隣接する歴史的農業景観「スターリ・グラード平原」から、持続可能な海産物はコミジャ漁師協同組合とのパートナーシップを通じて得られている。同様に、本格的なクロアチアチーズ、蜂蜜、ハーブも地元農場から調達されている。
観光を通じた海洋生態系の保護
一部の事例では、ホスピタリティ事業者がエコツーリズムモデルを通じて海洋生態系をよりよく保護しようと試みている。
ギリシャのクレタ島北岸にある「Fodele Beach and Water Park Resort(フォデレ・ビーチ&ウォーターパーク・リゾート)」は、保護連合、宿泊客主導の持続可能性イニシアチブ、積極的な環境管理を通じて、海洋生態系の保護に取り組んでいる。
同リゾートはギリシャ諸島海草連合の正式メンバーであり、地中海のポシドニア・オセアニカ海草藻場の保護と再生を支援している。これらの藻場は、炭素を貯蔵し、水質改善に貢献し、海岸線を侵食から守ることができるため、海洋環境にとって極めて重要である。
そのためリゾートでは、自然に打ち上げられた海草の葉を浜辺に残して健全な沿岸生態系の維持を助けるなど、責任ある取り組みも実施している。
これに加え、「Tourism Cares: Unite for Cleaner Destinations」といった、スタッフと宿泊客の有志によるビーチクリーンアップ活動も開催している。これらはホテルの海岸線と隣接する未管理の海岸区域を対象とし、プラスチックや海洋ゴミの削減を目指している。
さらに、宿泊客向けに侵食防止、沿岸植生、海洋植物の重要性に関する教育プログラムやワークショップも実施している。
同リゾートは国際自然保護連合(IUCN)とも提携し、浜辺にあるウミガメの巣を直接地図化・隔離・監視している。
同様に、土壌の安定化と沿岸地の劣化防止のため、地域固有の絶滅危惧植物数種を栽培・繁殖している。
フォデレ・ビーチ・リゾートは、高い環境基準、沿岸の清潔さ、水質に対して贈られる国際環境認証「ブルーフラッグ」も定期的に受賞している。
地中海エコツーリズムの課題
地中海沿岸で複数のホスピタリティ事業者がエコツーリズムモデルを採用しているとはいえ、いくつかの壁は残っている。
最大の課題の一つは、厳格に監視されていても、自然に根ざした活動は依然として敏感な生息地、脆弱な湿地、営巣地にダメージを与えるという点である。
特にギリシャ、イタリア、スペインなど人気の観光地では、オーバーツーリズム抑制の最近の取り組みにもかかわらず、観光客数が依然として非常に多い状況が続いている。
これらの地域は慢性的な干ばつ、山火事、水不足にも苦しんでおり、気温上昇や夏の高需要がそれに拍車をかけ、地元の水供給と電力網の双方に負担をかけている。そのため、真のエコツーリズムが掲げる低負荷という目標は、達成が困難な場合も多い。
多くの沿岸拠点や島々は基本的な廃棄物管理にも苦労しており、ピークシーズンには観光客のゴミ量が地元の処理能力を急速に上回っている。
地中海沿岸の多くはすでに都市化され、あるいは高密度のマス観光拠点として開発されているため、新たに真の低負荷エコツーリズムを展開する余地はかなり限られている。
より持続可能な沿岸観光に向けて
地中海沿岸はここ数年、著しくオーバーツーリズムの状態にあり、特にイタリア、スペイン、ギリシャといった人気スポットは、近年急増する観光客数への対応に苦慮している。
一部のホスピタリティ事業者は低密度モデル、より持続可能な建築、沿岸保全を通じて影響の低減を試みているが、観光客数全体の多さといったより広範な課題には、依然として地域レベル・国家レベルの介入が必要である。
最終的に、長期的な視点で地中海沿岸を保護するためには、国境を越えたより優れた観光客管理や環境規制に加え、観光産業、地域社会、政府の連携した取り組みが必要不可欠となるだろう。



