テクノロジー

2015.12.26 07:00

シェアリングエコノミーの旗手が語る 工業資本主義の終焉と気候変動問題

Rawpixel.com / shutterstock

万国の労働者よ、団結せよ。あなた方は「空きキャパシティ」の他に失うものはない。カール・マルクスの共産主義宣言を模して、カーシェアリングサービスZipCar(ジップカー)の共同創業者ロビン・チェイスは、パリで開かれたCOP21気候変動会議でこう呼びかけた。

そして、「我々がシェア(共有する)するこの世界の未来は、もはや工業資本主義の世界ではないのです」と、気候変動サミットに集う各国代表、活動家やレポーターから成る何百人という聴衆の前で宣言した。「インターネットの力を利用できる今日、私たちは資産をシェアすることによってこそ最大の価値を創り出すことができるのです」。

ここでチェイスが例に引いたのは、自身の経営する有名なカーシェアリング会社ではなく、いくつかの有名な宿泊シェアリングの会社だった。

例に引いたのは、65年間かけてクラウンプラザやホリデイイン等複数ブランドを展開して世界100ヶ国に645,000室の宿泊施設をつくったインターコンチネンタル・グループでもなく、彼らの競合である。立ち上げから4年目には650,000室を提供していたAirBnBと、9年目にして250万室を提供していたCouchsurfingだ。

「世界は変化したのです」とチェイスは述べた。「全く新しいパラダイムに入っていて、そこでは、たった4年で世界一のホテルチェーンと同じ規模のチェーンをつくり上げることができるのです」。

この変化は、空きキャパシティを利用して実現したものである。チェイスはこの空きキャパシティを、実際に存在する設備能力で、既にコストが償却されていて、未使用の価値を有しているもの、と定義している。

例えば、フランスのスタートアップBlablaCarは、ヨーロッパ内をクルマで走行する人の車内の空き席という空きキャパシティを、乗り合いするためのプラットフォームを作ることで価値に換えた。BlaBlaCarは創業から6年で2,000万人のメンバーを擁するに至り、月間400万人が利用しているが、これは高速鉄道列車10,000台かボーイング747のジャンボジェット10,000機相当の輸送量に相当する。

「BlablaCarは線路も引いていなければ、電車車両も航空機も購入していません」

空きキャパシティの活用は、ある意味で物理学の法則に反するように感じられるかもしれない、とチェイスは述べた。

「2007年に、私が4年間で650,000室の客室を作り、世界一のホテルチェーンを作るのだと言ったら、誰もが物理的に実現不可能だと言ったでしょう」とチェイスは続けた。

しかし、インターネットがこれを物理的に可能にしたのだ。そして、今この新しいパラダイムが、古いパラダイムの本丸である経済の仕組みに挑んでいる。

「シェアされた資産は、これまでの常識で定義する資産よりも常に高い価値を生み出します」とチェイスは話す。これは、資産をより効率的に活用し、利益を抽出することによって実現される。

ところで、なぜチェイスは気候変動に関する会議でこの話をしたのか。それはシェアされた資産がエネルギー効率を高めるから、というだけではない。

チェイスは、こう続けた。「どのようにして気候変動と向き合うべきか、と私が考えた時、この枠組みが必要だと確信したのです」。そして、ソリューションのクラウドソース(インターネットを利用して不特定多数の人の寄与を募ること)、著しく速いスピードでの学習、そしてグローバルな創意工夫が必要になるのだと解説した。

編集=Forbes JAPAN 編集部

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