トロント大学の研究機関シチズン・ラボが2026年10月15日に公表した報告書によると、イスラエル企業2社が、報道機関アルジャジーラの記者を狙った監視活動を実施した。グーグルなど大手IT企業の広告配信サービスを利用し、標的の端末にマルウェア(悪意のあるソフトウェア)を送り込んでいた。悪質な広告が画面に表示されるだけで感染する「ゼロクリック型」の攻撃で、クリックなどの操作は必要なかった。
広告をクリックしなくても感染、広告ブロックが防御策に
報告書の共著者である研究者ウォルフィー・クリストルは、オンライン広告を表示した利用者なら、監視企業が誰でも攻撃対象にできることを調査結果が示していると説明する。
クリストルはフォーブスの取材に、「悪質な広告から継続的に身を守るのは難しく、ほとんど不可能といってよい。広告ブロックは、サイバーセキュリティーにおける標準的な防御策とみなすべきだ」と語った。
広告取引で集めたデータから標的を選び、スパイウェアを送り込む仕組み
攻撃の中心となったのは、イスラエルのテルアビブに拠点を置くディスカバー・テック(Discover-Tech)だ。ディスカバー・テックは広告主向けに、適切な広告の配信先を探し、グーグル、マイクロソフト、ヤンデックスなどの広告枠に入札する正規サービスを提供している。
シチズン・ラボによると、ディスカバー・テックは「コントロリウム(Controlium)」というサービスも提供している。スパイウェア企業は、ディスカバー・テックが広告の提携先から集めたデータを使い、攻撃相手を選ぶことができる。選ばれた相手が利用するウェブサイトやアプリに悪質な広告を送り込み、パソコンを侵害する仕組みだ。
カンディル、アルジャジーラ従業員のWindowsパソコン最大45台を攻撃
シチズン・ラボは、イスラエルのスパイウェア企業カンディル(Candiru)がディスカバー・テックの仕組みを利用したと報告した。カンディルは2024~2025年にマルウェアを仕込んだ広告を配信し、アルジャジーラ従業員が所有するWindowsパソコン最大45台を攻撃したという。カンディルは2025年初め、米国の小規模なプライベートエクイティー投資会社インテグリティ・パートナーズに買収された。ディスカバー・テックとカンディルは、フォーブスからのコメント要請に回答しなかった。
カンディルは以前にも、2021年にロンドンのニュースサイト「ミドル・イースト・アイ」が受けた攻撃などで、記者の監視との関係が指摘されている。カンディルのマルウェアには、感染端末のメッセージや通話、位置情報を監視する能力がある。カンディルは以前、顧客がマルウェアをどのように使っているか知らなかったとフォーブスに説明していた。



