経営・戦略

2026.10.15 10:43

顧客の78%は「ブランドが消えても気にしない」 パーパスを事業成果に変える方法

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もし、あなたの会社が明日消えてしまったらどうなるだろう。誰かが気づくだろうか。ほとんどのブランドにとって、正直な答えは「ノー」だ。ハヴァス(Havas)の2025年ミーニングフル・ブランド調査によれば、人々の78%はブランドが消滅しても気にしないという。企業内部に目を向けても、状況は同様に深刻だ。ギャラップのグローバル・ワークプレイス報告書2026年版によると、従業員の80%がエンゲージしていないか、あるいは主体性を完全に失っている。また、ヘレン・トリッキーとフィリップ・レーカーが先週出版したベストセラー書籍『Purposeful Growth: Turning Purpose Into Business Performance(パーパスフル・グロース:パーパスを事業業績に変える)』のための調査では、自社の戦略に共感できているリーダーはわずか23%にすぎないことが明らかになった。顧客はほとんどの企業がなくなっても困らない。リーダーは自社の計画を信じておらず、従業員は実質的に意欲を失っているのだ。

過去10年間、企業のパーパス(存在意義)は特効薬としてアピールされてきた。しかしその後、疲弊感や政治的反発が生じ、「パーパス」という言葉自体からの静かな撤退が始まった。多くの経営陣はパーパスが失敗に終わったと結論づけた。だがトリッキーとレーカーは、失敗したのはパーパスそのものではなく、ビジネスにおけるその理解のされ方だと考えている。

ロンドンを拠点とするトリッキーは、アディダス、レゴ、コカ・コーラなどの企業に対し、パーパスを商業的・文化的価値に転換するための助言を行ってきた。一方、ロサンゼルスを拠点とするレーカーは、ギャップ(Gap Inc.)におけるパーパス主導の事業再生をはじめ、フォーチュン500企業の経営陣に対して成長と変革のコンサルティングを行っている。2人は共同でPurposefulGrowth.Coを設立。18カ月間にわたり、グローバル企業の経営幹部(Cスィート)への取材とリサーチを重ねてきた。著書の中で2人は、パーパスへの関心が薄れつつあるこの時代にあえて、「正しく実践すれば、パーパスは企業が持つ最も強力な成長ツールのひとつになる」と主張している。

「パーパス」をめぐる誤解

パーパスは間違った部門に閉じ込められてしまった、と2人は指摘する。それは社会的責任やサステナビリティ、あるいはDE&I(多様性・公平性・包摂性)の代名詞となってしまったのだ。そうした取り組みも重要ではあるが、パーパスそのものとは異なる。

「パーパスという概念は常に誤解されており、ビジネスにおける真のポテンシャルを発揮できていないと感じていました」とレーカーは語る。彼によれば、パーパスはそれらの機能よりも上流に位置するものであり、「企業が世界において生み出そうとしている価値を明確に言語化したものであるべき」だという。

トリッキーは第1波で何が間違っていたのかをより痛烈に指摘する。彼女は映画『ウィキッド』の一場面を引き合いに出す。登場人物が、理解もしていない人々を、持ってもいないスキルで助けようとしたことを咎められるシーンだ。そのセリフは、この10年間の善意に基づく企業の取り組みを象徴している。「パーパスという旗印のもとで、人々が本当に必要としているものを理解せず、持っていないスキルで人々を助けようとした優秀な人材が数多くいました」と彼女は話す。パーパスは企業の得意分野から離れて慈善活動へと漂流し、結果として「ビジネスの核心ではなく、周辺的な活動になってしまった」のだ。

著者が提示する解決策は、道徳的というより経済的なものだ。企業は自社が独自に解決できる最大の課題を見つけるべきである。「ビジネス上の成功とは、価値創造に対する報酬にほかなりません」とレーカーは言う。「解決する課題が大きければ大きいほど、ビジネスとしての価値も高まります」。利益にしか関心がないリーダーであってもパーパスを重視すべきであると本著は論じる。なぜなら、パーパスは単なる量の成長だけでなく、質の高い成長をもたらすからだ。

始まりはトップから

本書では、この成長モデルを「パーパスフル・グロース・フライホイール(弾み車)」と呼んでいる。その4つの推進要因である「リーダーシップ」「カルチャー」「イノベーション」「ブランド」が、順に次の要素を駆動していく仕組みだ。

最初に位置するのはリーダーシップだ。先述の23%という数字がその理由を裏付けている。「意味が感じられなければ、戦略そのものが無価値になります」とレーカーは述べる。「人に戦略を実行させたいのであれば、それに意味を持たせなければなりません」。パーパスがなければ、リーダーは誰の心にも響かない計画を発表することになってしまう。

そうした失敗が個人的な影響を及ぼすのがカルチャー(企業文化)だ。トリッキーの記憶に深く刻まれている話がある。ある男性がリストラ対象となった。コンサルタントが入り、経営陣は人員削減を純粋に数値だけで正当化した。かつてその会社には、存在理由に関する明確なストーリーがあった。しかし今のメッセージは「金、金、金」ばかりだった。退職までに彼にはまだ4カ月の勤務期間が残されていた。

「もし会社がパーパスや自社の存在理由を語り続けてくれていたら、退職の受け止め方も違っていたはずです」と彼は彼女に語った。「そうすれば、次のステップへ移るのもずっと容易だったでしょう」。

「本当に考えさせられる瞬間でした」とトリッキーは振り返る。去りゆく人にとって意味が重要であるならば、残る人々にとってはなおさら重要だ。ギャップでは、経営陣がパーパスのもとに足並みを揃えると、カルチャーがそれに続いた。「カルチャーの推進力は全開になりました」とレーカーは語る。

エンゲージメントの高いカルチャーは、第3の推進要因であるイノベーションに取り組む勇気を企業に与える。大企業が自らを破壊することは滅多にない。パーパスはそれを推し進める方向性とエネルギーをもたらす。ネットフリックスが自らのビジネスモデルを劇的に変革できたのは、「世界を楽しませる」という自らの役割が明確だったからだ。

マテルはその勇気をバービー人形に見出した。体型や肌の色の異なるドールや、障害を持つバービーは、まさに同社のパーパスから生まれたものだとレーカーは言う。それらは一つひとつが、家族にとってのブランドの意味合いを深めた。「バービーのストーリーを含めれば、マテルの事例はフライホイールの完全な体現と言えます」。

意味が希少になりつつある時代において、イノベーションはブランドに語るべき言葉を与える。トリッキーは、AIの台頭による混乱を、自社の存在理由(Why)を見失う「絶好の温床」と呼ぶ。マーケティングにおいて、アルゴリズムはすべてのブランドをInstagramやTikTok上の同じ購買シグナルへと誘導する。「それがクリエイティブな差別化を平坦化してしまうのです」とレーカーは指摘する。自らの倫理的中心を理解しているブランドは、他社と一線を画すことができる。そしてその中心を見つけることは、人間ならではの作業だ。「パーパスが提供する意味は、依然として代替不可能なものだと私たちは考えています」。

「ただ確認したいだけ」

パーパスは政治的な反発に直面することもある。トリッキーは執筆当初から本書の前提を再検証していた。「私は一度原点に立ち返り、『成長は本当に良いことなのか?』を追求すべきだと主張しました」と彼女は語る。レーカーの答えは即座にイエスだったが、彼女のスタンスは「ただ確認したいだけ」というものだった。そのため、彼らはエコノミストに取材を重ね、脱成長に関する章を追加した。

最終的に彼らは、ビジネスにおいて成長は歓迎されるべきであり、人々の生活に真の価値を与えることも同様であるという確信に至った。パーパスは、その2つが交わる場所に存在する。「それは政治的な概念ではありません」とトリッキーは言う。保険会社はスプレッドシート上の取引データのように見えがちだ。しかしレーカーはそれを「人々を災難から守り、より良い生活への上昇を可能にする仕組み」と表現する。

ある経営幹部は著者に対し、自社が1年で4回目の変革に取り組んでいると明かした。トリッキーは、大手コンサルティング会社が「なぜこれらを行う必要があるのかという理由を、経営陣や組織全体に提示できた例をまだ見たことがない」と話す。

「本書は、パーパスに取り組んでみたもののうまく機能せず、疲れ果ててしまった人々のための本だと感じています」と彼女は語る。

本書が彼らに提示するのは、異なるゴールだ。著者らが取材したギャップでは、現在パーパスが組織全体に浸透している。CMO(最高マーケティング責任者)、サプライチェーンの責任者、そしてサステナビリティの責任者が皆、同じストーリーを実現するために協力している。「パーパスはすべてを包み込みます」とレーカーは語る。「だからこそ、全員が同じミッションに取り組むパートナーになれるのです」。

(forbes.com 原文)

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