トレンドに乗ることも、バイラル現象を起こすこともないが、業界内で絶大な信頼を獲得している企業が存在する。一般の大衆にはその名を知られていなくとも、重要な関係者からは揺るぎない信頼を寄せられているのだ。
日々の業務の中で、筆者はこのことについて頻繁に考える。出会う企業の多くがそれとは真逆、つまり「まずは知名度」を求めているからだ。しかし、最も耐久性があり、強固なブランドを持つ企業が、知名度によってそれを築いたケースはまれである。彼らは認知度を高める前に信頼を構築した。そのため、業界外の人々がその存在に気づく頃には、その評価はすでに事業を支える強固な土台となっていたのだ。
「認知」よりも「評価」を優先する
成長段階にある多くの企業の本能は、認知度(アウェアネス)を追求することだ。人々の目につき、知られ、話題になることを目指す。知名度は進歩のように実感しやすく、信頼とは異なり数値化が可能であるため、そうした衝動は理解できる。
しかし、購買者が洗練されており、購入に時間的制約が伴うことが多い分野──特にインフラ、産業サービス、専門物流、さらにはプロフェッショナルサービスなど──においては、一般社会での認知度はほとんど重要ではない。重要なのは、実際に意思決定が行われる場で名前が挙がる存在になることだ。そのようなブランド構築は、コンテンツの配信によるものよりも遥か前に、一貫性、確実な実績、そして口コミによって実現する。これらをPRプランに組み込むのは容易ではない。
経済学者はこれを「隠れたチャンピオン(ヒドゥン・チャンピオン)」と呼ぶ。一般への知名度はきわめて低いものの、市場をリードする(多くはB2Bの)企業のことだ。バンズル(Bunzl)は英国における最も端的な例の一つである。同社はFTSE100種総合株価指数の構成銘柄であり、数十億ポンドの売上高を誇る。何千もの企業が毎日利用する包装材、安全用品、清掃用品といった不可欠な製品を供給しているが、大半の消費者はその名を聞いたことがない。英国のインフラ分野も同様のパターンに満ちている。送電網の再構築、住宅建設の計画、エネルギー転換──これらはすべて、大多数の人々がその名を知ることもなく、また誰もが知るブランドになることを想定もしていない専門業者のレイヤーなしには機能しない。例えば、主要なインフラ、エネルギー、送電網プロジェクトを支援する重量物吊り上げ・規格外貨物輸送の専門業者であるカーター・コントラクティング・サービス(Carter Contracting Services)(要登録)が挙げられる。同社のような高度に専門化されたB2B企業は、消費者からの認知ではなく、主として自身がサービスを提供する業界内での評価によってそのブランドを築いている。
極めて優秀であり、そして重要な領域においてその優秀さで知られていること──これ自体が立派な戦略である。ただ、多くの創業者が手渡されるプレイブック(手引書)とは全く異なるアプローチというだけだ。
目立つブランドが「見えないブランド」から学べること
皮肉なことに、世間的な知名度を追い求める創業者は、最初から知名度を求めなかった企業から多くのことを学ぶことができる。その教訓の一部を以下に挙げる。
1. 一貫性の効果は、コンテンツよりも速く複利で増大する
「見えないブランド」は、一貫性のないサービス提供を隠すためにSNSのバズに頼ることはできない。あらゆる仕事が次の仕事へのプレゼンとなる。観客がいる仕事だけでなく、あらゆる成果物一つひとつをブランド構築として捉えるその規律は、消費者向けビジネスが見失いがちな点であり、あらゆる業界のあらゆるビジネスに応用できる教訓である。
2. 「信頼」は「関心」よりも狭い市場だが、価値ははるかに高い
商業的には、無関係な50万人に知られるよりも、適切な500人に知られることのほうが価値がある。認知度を追うブランドは、適合性(レレバンス)を最適化すべきところで、往々にして到達数(リーチ)の最適化を図ってしまう。
3. 最高の評価は「ナラティブ」ではなく「実績」の上に築かれる
アテンション・エコノミー(関心経済)においては、華やかな新しいウェブサイトや新しいロゴといった自身で発明するものをブランドだと考えてしまいがちだ。しかし、一般消費者の認知や小売パートナーシップに頼らないセクターでは、ブランドとは業界が代わりにそれを語ってくれるようになるまで、繰り返し実行するものなのだ。
「アピール型のブランド」を築く創業者への教訓
これは決して、認知度を追求すること自体を否定しているわけではない。筆者自身、ストーリーを上手に語る創業者はそうでない創業者よりも優れた実績を上げるという信念のもとでキャリアを築いてきた。しかし、陰で静かに活動する企業は、「なぜそもそも認知度を高めようとしているのか」を再確認するための有益な指標となる。もしストーリーが実体を先行してしまえば、誰かが確認した瞬間に崩壊する。一方で、実体が陰でしっかりと機能していれば、最終的にストーリーを語る際に、揺るぎない根拠を持つことができる。
BtoC企業であろうと、完全に黒衣に徹する企業であろうと、最高のブランド戦略は同じ問いから始まる。「自社が確実に長けている強みは何か?」。まずこの問いに答え、その上に「見せる層」を築き上げる企業こそが、永続的な評価を獲得する企業なのだ。



