AI

2026.10.15 08:47

AIの本当の強みは「低コストなコンテンツ」ではなく「低コストな実験」だ

Adobe Stock

Adobe Stock

何十年もの間、プロダクトマーケティングを縛ってきた障壁は、「物を売るには、まずそれを手元に持っていなければならない」ということだった。プロモーション動画を撮影する前に、自ら購入するか、サンプルが届くまで数週間待つ必要があった。

筆者はTikTok Shopに参入する前、Amazonで商品を販売していたが、この制約はどちらのプラットフォームでもついて回った。宣伝できる商品は、購入できる資金の有無と、自宅の玄関に届くまでの待ち時間によって制限されていた。しかし、商品の画像から動画を生成し始めると、プロセスのなかから実物が消え去った。目の前に実物がなくても、ソファを宣伝できるようになったのだ。

AI生成広告への移行によって企業が得られるもの

この変化は広告業界全体で起きている。インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー(IAB)が今年1月に発表した調査によると、広告業界のエグゼクティブの83%が制作プロセスのどこかでAIを導入していると回答した。これはIABの2024年の調査における60%から上昇しており、最大のメリットとして最も多く挙げられているのがコスト効率だ。従来の戦略をベースにしつつ、より低コストで、より大量のアウトプットを生み出せるようになった。

だが、この変化の本質は制作面だけにとどまらない。「実験のコストの低減」こそが重要なのだ。かつて商品のテストには、商品そのもののコストがかかっていた。購入し、到着を待ち、撮影を行い、そこで初めてその商品に需要があるかどうかを知る。テストの費用が高くつくため、自ずと「予測」に頼らざるを得なくなる。入念にリサーチし、確信を持てる2〜3の商品を選んで注力する。失敗のコストが高すぎるため、何度も間違えるわけにはいかないからだ。

ハーバード・ビジネス・スクールとデューク大学の研究者らは、学術誌『マネジメント・サイエンス』に掲載された論文で、実験コストが低下した際に何が起きるかを追跡した。ビジネスアイデアのテストコストを削減する技術であるA/Bテストを導入したスタートアップを調査したところ、導入した企業の業績は1年後に30%から100%向上していた。ただし、この技術を導入した企業自体は比較的少数だった。パフォーマンス向上をもたらしたのは、より多くの新商品を投入し、見込みのあるものを拡大し、否定的な兆候が見られたら即座に撤退するというサイクルを高速化させたことだった。

筆者のアカウントでその移行が完了するまでには約18カ月かかった。今年前半、単月で300以上の商品をプロモーションしたある事業者を分析した。30日間で300個のサンプルを受け取れる人など存在しないため、従来のルールでは不可能な数字だ。彼がヒット商品を選ぶ能力において特別優れていたわけではないだろう。彼は自ら選ぶことをやめ、結果に選ばせるようにしたのだ。

手元に商品が必要なくなると、狙うべき商品の種類も変わってくる。所有することが障壁だった時代、最も手に入りにくい商品、つまり誰もマーケティングしようとしなかったのは、高額なアイテムや大型の家具、あるいは1個のサンプルも出荷されていない発売後数日しか経っていない新商品だった。これらのカテゴリーは長年開拓されないまま放置されていたが、それは買い手が不在だったからではなく、撮影の苦労が大きすぎたからだ。

現在リサーチを行う際、筆者は発売日でソートし、大手ブランドが2日前にリリースしたばかりのものに注目する。大半の人は反対の方向、つまり「すでに売れている商品」を探す。しかしそこには、他のすべてのセラーがすでに群がっている。商品をプロモーションする側ではなくブランドを運営する側の場合も、同じロジックが逆向きに働く。誰も取り上げてくれなかった重い商品、高額な商品、火曜日に発売したばかりの新商品が、初めてプロモーションの対象になり得るのだ。

「探索」が「予測」に勝るとき

ここは慎重に述べたい。「もっとテストを回す」は、すぐに「もっと粗悪なものを作る」へと変わり得るからだ。探索が予測に勝るのは、2つの条件がある場合に限られる。

第一に、結果を評価・分析する仕組みが存在しなければならない。筆者のチャネルで言えば、コンバージョン率が高いものへとブランドの予算を自動的に配分する広告システムの存在を意味する。成果が出たテストは拡散され、失敗したテストは自然に消滅する。このフィードバックループを排除してしまえば、大量生成は単なるコストの垂れ流しになる。

第二に上限の存在であり、プラットフォーム側が制限を課している。TikTokは2026年7月、30億本の動画をAI生成としてラベル付けし、AIスパムの投稿を目的としたアカウントに対する検出精度の向上をテストしていると発表した。YouTubeも2025年7月に、量産型および反復的なアップロードを「不誠実なコンテンツ」として再分類した。

しかし、どちらのプラットフォームもAIの利用自体をペナルティの対象にしているわけではない。YouTubeがポリシー変更を発表した際、「クリエイターがストーリーテリングを強化するためにAIツールを利用することを歓迎しており、コンテンツでAIを使用するチャンネルも収益化の対象であり続ける」と述べた。ただし、現実的なコンテンツが改変または合成されたものである場合は明示することが条件となる。規制対象の例として挙げられたのは、表層的な違いしかないナレーション付きストーリーや、すべて同じナレーションを共有するスライドショーなどだった。TikTokも自らの立場を同様に説明している。

AIコンテンツのリスクは実在し、具体的な状況で発生する。それは、前の作品のほぼコピーであるコンテンツを大量に投稿することや、合成コンテンツを自分で撮影したものとして偽ることだ。そうではなく、AIの使用を明示し、あらゆるコンテンツにおいて一定の品質基準を保つことが求められる。

広範なテストを行うことは戦略だ。しかし、スパムのように溢れかえらせる行為は配信枠を失う原因となる。筆者は競合に負けるよりも、この方法でアカウントを失った事業者を数多く見てきた。重要な規律は、それぞれが品質基準をクリアするテストを数多く実行し、失敗作を迅速に破棄することだ。大半の人が苦労するのはこの後者の部分だ。100個のものを生成するのは今や容易だが、そのうちの90個を捨てるのは簡単ではない。

今年、制作コストが低下したあらゆるビジネスリーダーは、自社の意思決定プロセスが何のために作られたものなのかを問い直すべきだ。委員会、需要予測、どの選択肢を支援すべきかを全員で議論する会議——これらすべては、「物を作るのにはコストがかかる」という前提に基づいている。会議を開く費用で20個の選択肢をテストできるのであれば、会議こそが高コストな部分なのだ。ツールはとうに変わった。しかし、それらを何に向けるかを決定する私たちの手法は、まだ変わっていない。

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事