オマーン湾で原油を積み込む超大型原油タンカー(VLCC)のアジア向け航海で先週、1日あたり約101万ドル(約1億6000万円)の用船(チャーター)契約が成立した。別の契約でも、1日あたり約116万ドル(約1億8400万円)の運賃で合意されたと報じられている。ブルームバーグ・インテリジェンスによると、超大型原油タンカーの運賃指標は10月6日、1日あたりの用船料換算で90万7635ドルと史上最高値を更新し、10月末までに100万ドルの大台を超える可能性もある。
筆者は今年3月、海上輸送運賃の急騰を背景に海運株が思わぬ恩恵に浴していると書いた。当時、多くの人と同じように筆者も、イランとの武力紛争は激しいものになるにしても短期間で終わると見込んでいた。だが、この紛争は筆者やウォール街の大方の予想よりもかなり長引いており、海運業界はひと時の恩恵どころか、史上まれにみる高収益期間を迎えている。
数十の航路の原油輸送コストを追跡する英バルチック海運取引所のダーティータンカー指数は6日、7444をつけた。1年前に比べると6倍超に上昇しており、2010年までさかのぼるブルームバーグのデータを通じても最も高い数値だ。
迂回や港の混雑で輸送能力が制約されている
何が運賃高騰を引き起こしているのか。ひと言で言えば、効率の悪化だ。
中東の海上交通の要衝であるホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡は、どちらも依然として脅威にさらされている。現在、ペルシャ湾から運び出される原油の大半は、米海軍の護衛を受けて小型タンカーで運搬され、オマーン湾で超大型原油タンカーに積み替えられている。また、多くの船が引き続き、アフリカ大陸を大回りする航路をとることを余儀なくされている。
こうした迂回のため、輸送船が一度の航海に要する期間は通常よりも数日ないし数週間長くなる。海上で足止めされたり、いかりを下ろして沖合で停泊したりしている船は、次の貨物を輸送できない。米物流大手のCHロビンソンによると、現状、港湾の混雑だけで世界のコンテナ船能力の12%程度が拘束されている。
工場も港もフル稼働している
混乱だけですべてが説明できるのなら、海運業界の現在の活況には筆者も懐疑的にならざるを得ない。ところが、いまは需要も堅調なのだ。
9月のJPモルガン世界製造業購買担当者景気指数(PMI)は53.0に上昇し、2022年2月以来の高水準になった。このPMIを算出しているS&Pグローバルは要因として、AI(人工知能)インフラや防衛装備品への支出に加え、一段の供給混乱への懸念から企業が在庫を積み増していることを挙げている。輸出向けの新規受注は、この5年あまりで最も速いペースで増えている。



