フィンランドの首都ヘルシンキが「クリーンな熱供給システム」の新たな取り組みを打ち出した。システムを稼働させる電力の供給源を辿ってみると、原子力、風力、水力発電を主要電源とするフィンランドの送電網に行きつく。これまでと異なるのは、ここからだ。発電された電気はデータセンターに引き込まれ、人工知能(AI)を動かすチップの動力となる。しかし、そこで発生したサーバーの熱が、廃熱として冷却ファンで大気中に放出されることはない。温水となってデータセンターから送り出され、断熱パイプを通って市内の家々を暖めるのだ。
これは、オーストリアのウィーンに拠点を置くデータセンター開発企業のOnZero(オンゼロ)と、ヘルシンキの市営エネルギー企業ヘレン(旧ヘルシンキ・エネルギー)が今年8月31日に締結した契約の内容である。OnZeroはヘルシンキ市内に「AIヒートファクトリー(熱工場)」と呼ばれる施設を建設し、2027年から年間最大52万5000メガワット時の熱供給を見込んでいる。約7万戸の家庭の暖房をまかなえる見通しだ。
今回の契約では、AIブームの最大の課題である膨大な電力消費と廃熱が「化石燃料ゼロ」をめざす都市にとって資産となりうるかを実証する。また、環境に配慮した取り組みの経済的採算性も検証する。両社はそれが可能だと踏んでいる。成功すれば、OnZeroは新たな収益源を得られ、ヘレンは木質バイオマスや天然ガスを使った火力発電より低コストの熱源を確保できる。
「データセンターを単なる電力消費者ではなく、電力網と熱供給網をつなぐエネルギーシステム資産と捉えることにより、データセンターに対するあらゆる批判やそれに伴う問題を解決できる。これが狙いだ」と、OnZeroのアリ・シディキ最高経営責任者(CEO)は説明した。「水使用の問題、廃熱処理の問題、排出量プロファイル(温室効果ガス排出量の内訳)の問題──これらすべてが解消するのだ」
熱を屋外へ捨てるデータセンター、2028年までに米国電力の12%を使う恐れ
現在、ほとんどのデータセンターが発生する熱を廃棄物として扱っている。サーバーは消費電力のほぼすべてを熱に変換し、その熱を屋外へ排出するために、さらに多くの電力を費やしてファンや冷却装置を稼働させている。また、大規模施設の多くは冷却塔を備え、水を蒸発させて気化熱で温まった冷却水を再び冷やしている。グーグルによると米アイオワ州カウンシルブラフスにある同社の米国最大規模のデータセンターでは、2025年に約49億リットルの水を消費した。1日当たりに換算すると、牛乳パック約1360万本分の水が毎日使われたことになる。
そして、電力料金は値上がりする一方だ。ローレンス・バークレー国立研究所によると、米国内では2023年に電力の4.4%がデータセンターによって消費された。2028年までには12%に達する可能性があり、家庭や工場と電気を取り合うことになる。だからこそ、データセンターの廃熱は売り物になるとOnZeroは見込んでいる。



