私がこれまで見てきた後継者育成計画はいずれも、名前が枠内に並んでいるだけだ。だが、その名前の人物にリーダーシップを教えたのは誰なのかを説明したものは、ひとつもない。
そこにギャップがある。研修のギャップでも、人材のギャップでもない。メンターのギャップだ。そしてこれが、すでに解決済みと多くの組織が思い込んでいる後継者育成を、静かに崩壊させている。
誰も口にしない数字
Gallupによると、職場にメンターがいると答えた従業員は約40%にとどまる。さらに少ない23%しか、スポンサー、つまり自分の昇進を積極的に後押ししてくれる影響力のある人物を持っていない。一方、MentorcliQの調査によれば、Fortune 500企業の98%が公式のメンタリングプログラムを導入している。
この矛盾を少し考えてみてほしい。ほぼすべての大企業がインフラを整えているにもかかわらず、それを実感している従業員は半数にも満たない。プログラムは人間関係ではない。カレンダーの予定は指導ではない。組織は器にばかり資金を投じ続けながら、なぜ中身が空のままなのかと首をかしげている。
メンタリングが実際にもたらす価値
これは「あれば望ましいソフトスキル」といった生ぬるい話ではない。経済的なレバー(テコ)なのだ。
経営幹部の75%は、自身の成功にメンターが直接的な役割を果たしたと認めている。メンターを持つ従業員は、会社を辞める可能性が49%低い。メンティーは、メンターを持たない同僚よりも明らかに高い割合で昇進している。
この計算を、自社の離職率や昇進の数字に当てはめてみるとよい。メンターギャップは、研修予算の項目には表れない。離職レポートや後継者候補層のスライドに表れる。つまり、準備が整った人材よりも、名前が入った枠の数の方が多い後継者計画を示している、まさにそのスライドである。
プログラムは管理し、メンターは変革する
多くの組織がここで順序を取り違えている。問題を解決するためにプログラムをつくるのだ。
プログラムは名前を組み合わせることができる。面談の頻度を設定することもできる。しかし、自分がその段階にいたときの姿、話し方、考え方と似ていない人の中にある可能性を、シニアリーダーに見出させることはできない。メンタリングへのアクセスに関するデータが、すでに権力を持つ人々に似た人たちに大きく偏っている理由の一端も、ここにある。
メンターは、プログラムではつくり出せないことをする。相手に対して、具体的かつ個人的に「あなたの中には伸ばす価値のあるものがある」と伝えるのだ。その一言こそが、リーダーとしてのアイデンティティのギャップを埋める。人はセッションに参加しただけで、リーダーとしての自己認識を育てるわけではない。信頼に足る誰かが先にそれを見いだし、言葉にしてくれたからこそ、その自己認識へと成長していくのである。
私がそれを実感した場所
ペロー・システムズ(Perot Systems)在籍時代、当社の医療保険支払者向け部門を率いていたEVPが、私を導いてくれた。彼のところに問題を持ち込んでも、彼が答えをくれることはほとんどなかった。代わりに別の問いを投げかけ、自分で考え抜いて正しいアプローチにたどり着くまで、私を押し続けた。彼が何をしていたのかに気づいたのは、ずっと後のことだ。彼は私の業績を管理していたのではない。私の判断力を育てていたのである。
解決策は、より大きなプログラムではない
必要なのは、より小さく、より意図的な仕組みだ。
何組マッチングできたかでメンタリングを測るのはやめよう。代わりに、シニアリーダーが部下の中に何を見ているのかを具体的に言葉にできるか、そしてそれを本人に実際に伝えているかで測り始めるべきだ。これは取締役会に報告するには難しい指標だ。だが、後継者計画が本当にリーダーを生み出すのか、それとも名前入りの枠を生み出すだけなのかを予測できる唯一の指標でもある。
後継者危機を解決している組織は、最も洗練されたメンタリングプログラムを持つ組織ではない。シニアリーダーが、相手がそう信じる理由をまだ持たないうちに、名指しで「あなたにはこれができる」と伝えることを、個人の習慣にしている組織である。



