テクノロジーやイノベーションが目覚ましい勢いで進化している現代にあって、ECの顧客体験は驚くほど変わっていない。例えば、衣料品や家電製品をオンラインで購入する際、ユーザーがメニューや画面を辿って商品を探すプロセスは10年前とほぼ同じだ。
こうした状況を変えようとしているのが、サンフランシスコに本拠を置くスタートアップ「Loops(ループス)」だ。同社は10月12日、シードラウンドで350万ドル(約5億5400万円)を調達したと発表した。同社は、ブランドや小売業者向けに独自のAIプラットフォームを開発し、ECの購買体験を根本から変えることを目指している。
「ChatGPTやClaudeが普及した今、消費者はリアルタイムでのインテリジェンスや、パーソナライズされた商品提案を期待している。しかし、小売企業が運営するアプリやウェブサイトでは、そうした体験が得られない。ECの顧客体験は、まるで2015年で時が止まったかのようだ」と、ループスの共同創業者兼CEOであるアリ・ナジルは指摘する。
ループスは、もう一人の共同創業者であるイルケル・セリム・ゾルルオグルが、幼い娘へのプレゼントを買おうとした際に感じた不便さをきっかけに、昨年設立された。「オンラインで良い商品を見つけたものの、販売者に質問する手段がなかった。そこでメールを送ってみたが、返事はなかった」とゾルルオグルは振り返る。
この経験をきっかけに、ナジルとゾルルオグルは、小売業者が消費者に提供するEC体験を変革するため、ループスを開発した。このツールを導入すると、消費者は普段使う自然な言葉でサイト内を検索できるほか、商品を購入するか判断するまで何度でも質問することができる。アパレル商品の購入では、自分の写真をアップロードし、着用した姿を確認できるバーチャル試着機能も利用できる。
消費者にとっては、ECでの買い物をより直感的で、パーソナライズされた体験へと変えるシンプルな仕組みに映るだろう。しかし、こうした機能を実現するため、ループスは小売企業の商品カタログや在庫データを分析し、消費者からの質問に的確に回答するために必要な情報を抽出する大規模なインフラを構築する必要があった。
ECにおける商品探しのあり方を変えようとする企業は多いが、ナジルは、このシステム基盤こそが他社との大きな差別化になると期待している。「よく見られる過ちは、AIを単なる機能の寄せ集めとして捉えることだ」とナジルは指摘する。「小売企業に必要なのは、顧客について部分的な情報しか把握できないAIツールを5つ導入することではない。商品カタログや自社のビジネス、さらには消費者が何をしようとしているのかまで理解できる一つのシステムなのだ」



