資産運用

2026.10.15 14:15

金融ではなく、AIの最前線へ──Sakana AIリサーチエンジニア 江口航志が企業分析で得た「スタンスを取る力」

Sakana AIリサーチエンジニア 江口航志

Sakana AIリサーチエンジニア 江口航志

日本の資本市場が歴史的な転換期を迎え、新NISAによって資産運用がより身近なものとなる中、就活を控えた大学生にとっても、証券業界や資産運用業界への関心が高まっている。しかし、日本は海外に比べ、実践的な金融教育の機会が決定的に不足している。この課題に挑むのが、日本最大級の大学生企業分析コンテスト「Gyoseki Competition(Gyoseki大会)」だ。本連載にこれまで登場した過去の出場者は、いずれも金融機関の第一線で活躍している。だが、大会に集うのは金融を志す学生ばかりではない。東京大学大学院でコンピュータサイエンスを学んでいた江口航志は、第2回大会で優勝したチームの一員だ。しかし卒業後に選んだのは、金融ではなく、AIスタートアップのSakana AIだった。江口に、異分野から見た大会の価値と、AI時代に人間が持つべき強みについて聞いた。 

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──学生時代の専攻はコンピュータサイエンスだったそうですね。金融や投資に興味をもったきっかけを教えてください。

江口航志:大学院1年のときに入った「identity academy」です。ゴールドマン・サックスで20年ほどトレーダーを務めた方が、投資を通じて大学生に意思決定を教える学外の講座で、無料で参加できました。それまではアルバイト代でつみたてNISAをしている程度で、金融とはまったく縁がありませんでした。

大学では電子工学科に所属し、コンピュータサイエンスを学んでいました。研究テーマはAIではなく、大量の計算をいかに効率的に実行するかという高性能計算でした。identity academyには、情報系や生物系など私と同じ理系の院生の友人が入っていて、面白そうだと思ったんです。大学で実践的な投資を学ぶ機会はまずありませんし、自分がやってこなかったことを学べるのは良い機会だと考えました。

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コンピュータサイエンスと投資は、ある意味でかなり近いと思っています。人間には理解しきれない複雑・膨大な情報の中から、人間が解釈できるインサイトを引き出す。私はその種の営みが好きなのだと思います。

──第2回Gyoseki大会には、どのような経緯で出場したのですか。

identity academyに参加したのは、エネルギーのある人たちとつながりたいという動機も強かったんですね。Gyoseki大会に誘ってくれたのもそんなエネルギーに満ちあふれた同期のふたりでした。ひとりはこの連載の第4回に登場した柳翔太さんです。ふたりとも本当に優秀で、「彼らと一緒に何かできれば必ず学びがある」と。出場の動機は知的好奇心だけでした。

当初は、自分の強みで貢献しようと考えていました。AIでモデリングをしたり、プログラムを書いて自動で情報を集めたり。でも結論からいえば、その必要はなかった。ふたりがひたすら優秀だったんです。分析の進め方を教えてもらいながらExcelでモデルを組み、フィードバックをもらう。「こういう世界があるのか」と、心から面白いと思いました。

「無知の無知」から抜け出す

──門外漢として分析に臨み、どんな苦労がありましたか。

前提知識がないので、何を知らないのかすら分からない「無知の無知」の状態でした。どこまで学べばキャッチアップしたことになるのか、判断する審美眼がないんです。とにかく大量に情報を集めて読む。どの作業が効率的なのかも分からないまま、手探りで進めました。 

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文=中居広起 写真=米田麻里子

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