経営・戦略

2026.10.16 11:15

伝説のバンカー・大櫃が語る、伸びるリーダーの条件(第3回)ネットプロテクションズ・柴田の「ティール経営」

みずほ銀行でスタートアップ支援を率いた大櫃直人が、ネットプロテクションズを初めて訪ねたときのことだ。オフィスの入り口で目に飛び込んできたのは、若い人が働きたい職場として表彰されたときのトロフィーだった。社長の柴田紳は言った。

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「優秀な若い人が入ってくるのは、働きやすいからなんです」

その後も柴田は、事業の話をほとんどしなかった。語り続けたのは、若い社員のことだった。同社は管理職を廃止した「ティール組織」の代表企業として知られるようになる。

「NP後払い」をはじめとする後払い決済サービスを手がけるネットプロテクションズは、21年に上場し、26年3月期の連結営業収益は252億円に上る。その間、大株主が替わっても、柴田は20年以上社長を務めてきた。連載第3回は、現在は同社の顧問も務める大櫃が、10年以上間近で見てきた柴田の一風変わった経営流儀を語る。

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「主流にはならない」と見ていた事業

2000年創業のネットプロテクションズは、日本における後払い決済サービスの草分け的存在。02年に始めた「NP後払い」は、ネット通販の商品を受け取った後にコンビニなどで代金を払える仕組みです。いまや当たり前となったこの決済を、早くから広めてきました。

11年に企業間取引向けの「NP掛け払い」、17年に個人向けの「atone」を投入し、18年には台湾で個人向けの後払い決済「AFTEE」の提供を開始しています。同じく18年に持株会社のネットプロテクションズホールディングスを設立し、21年12月に東証一部(当時)へ上場。現在はプライム市場に籍を置いています。

26年3月期のグループの連結営業収益は252億1400万円、営業利益は28億4800万円。年間約1500万人の個人と約85万社の企業が、同社のサービスを利用しています。サービス全体の流通取引総額(GMV)は7643億円に達し、27年3月期は営業収益278億円、営業利益36億円を見込んでいます。

同社代表取締役の柴田紳さんは、自ら会社を興した創業者ではありません。1998年に日商岩井(現・双日)へ入社し、01年に転じた投資会社のITXから、出資先だったネットプロテクションズへ出向しました。ところが当時、後払い事業の構想があるだけで、中身はまだ何もなかった。その仕組みをゼロからつくり上げたのが柴田さんで、04年に社長に就任します。

出資元のITXはその後、オリンパスの子会社となり、ネットプロテクションズもオリンパスグループのもとで事業を続けました。そして12年、オリックスが株式の約75%を取得し、16年には投資会社アドバンテッジパートナーズが運営するファンドが同社を傘下に収めます。21年に上場を遂げていまに至るまで、幾度も大株主が入れ替わるなか、柴田さんは20年以上、社長として会社をつくり続けてきたのです。

そんな彼と私が出会ったのは、みずほ銀行の渋谷中央支店で支店長を務めていた13年ごろのことです。当時、ネットプロテクションズの事業の中心は、通販向けの後払いでした。

クレジットカードを持たない若い女性などは、安全面の懸念から、玄関先で配達員と対面して代金を渡したくない。そのニーズをすくい取り、大手コンビニと連携してシステムを築いた点は見事でした。ただ、正直に言えば、銀行員だった私には、それが決済手段の主流になるとは思えなかった。一定のニーズを満たすニッチなサービス。それが、私の最初の評価だったのです。

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文=加藤智朗

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