Forbes JAPAN 2026年11月号は、文化の力で世界を駆ける「カルチャープレナー」たちを特集。文化やクリエイティブ領域の活動によって新ビジネスを展開し、豊かな世界を実現しようと試みる文化起業家を30人選出する企画で、今回で4回目となる。今年注目したのは、優れた作品や商品を生み出すだけでなく、流通や人材育成、地域との関係まで含め、文化が続いていくための基盤をつくろうとする実践だ。アニメやゲーム、工芸、食、地域開発など領域を越えて、文化を次の創造へと循環させる挑戦を紹介する。
カルチャープレナーへの注目をはじめ、「文化」の新たな側面、新たな価値に光が当たっている。「この動きの本質とは何か。どこに目を向ければいいか。これからどこへ向かうのか」。立場が異なる5人に聞いた。
「ジャパン・アズ・オンリーワン」時代 カルチャープレナーが証明する
佐宗邦威|BIOTOPEファウンダー
かつて日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれた。経済規模で世界の頂点を競った時代だ。2026年9月に著書『ジャパン・アズ・オンリーワン 文化立国としての日本』を出版したのは、これからの勝ち筋がかつてのような経済規模にはないと考えたからである。同じ土俵で一番を争うのではなく、替えのきかない存在になること。その確信をくれたのが、カルチャープレナーたちだった。
始まりは22年12月の京都。コロナ禍での京都市の有識者会議で「京都をカルチャープレナーの聖地に」と提案した。それがForbes JAPANと京都市の協業へとつながり、23年9月にForbes JAPANで「カルチャープレナー30」企画が始まった。当時、この言葉は誰も知らない造語。日本の文化資産を現代の事業として立ち上げ直す担い手を指す言葉がなかったからだ。言葉がないものは、存在しないのと同じである。
同企画は4回目を迎えたが、この間の社会変化は大きい。訪日外国人客は25年に4,000万人を突破し、為替は1ドル140円から160円近くまで振れた。高市早苗政権が掲げる成長戦略17分野のひとつにコンテンツ産業が入った。「第三のジャポニスム」と呼ばれる潮流が、確かに来ている。
世界から日本の文化への入り口は、アニメ・マンガ・ゲーム。さらに日本文学はイギリスで読まれ、実写映画もハリウッドで評価される。健康ブームを追い風に、日本食や酒、茶も世界へと広がった。そして旅を通じて歴史と現代が同居する街を知り、コンビニで質の高い文具が安く手に入ることに驚き、地方で自然や精神性に触れる。訪日客の6割はすでにリピーターだ。知れば知るほど、日本はほかのどこにもない「オンリーワン」なのである。
経済規模でナンバーワンにはなれずとも、文化の目線でオンリーワンにはなれる。すでに、なりつつある。日本文化を通じて尊敬される国になるという未来は、十分に実現可能だ。
大事なのは、カルチャープレナーが見据える世界のなかの日本の姿に、未来を重ねる視点だ。彼らが目指すのは、文化で稼ぐことではない。稼ぐのは手段で、目的は愛するこのユニークな文化を育て、世界に伝播させることだ。
文化を基盤に、一番になるためではなく、唯一であるために事業をつくる人たち。彼ら彼女らが増え、「束」になったとき、日本は文化大国になれる。すでにもつ強みに投資し、育てていこう。それこそが、私たちの世代が次の世代に残せる最大のレガシー(遺産)ではないか。



