経済・社会

2026.10.16 08:15

銃殺刑の生中継、ヘグセス氏に潜む北朝鮮との等質性

diy13 - stock.adobe.com

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米国防総省は8日、米軍が12月3日に予定する銃殺刑の執行をライブ配信すると明らかにした。執行が予定されているのは、2009年にテキサス州のフォートフッド陸軍基地で銃を乱射し、米兵ら13人を殺害し、32人にけがを負わせたニダル・マリク・ハサン死刑囚(56)。2013年に軍事法廷で死刑判決を言い渡されていた。米国内で反発や疑問の声が上がり、トランプ米大統領は15日、「(ライブ)配信は行われない」と発表した。

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ヘグセス国防長官はインタビューで、銃乱射事件が起きたフォートフッド基地で、事件と同じ木曜日の午後1時ごろに刑を執行する考えを示したうえで、「人々が視聴できるようにする。こうした行為には深刻な結果が伴うことを理解する必要があるからだ」と語った。この発想は、処刑を住民への威嚇や「教育」に利用してきた北朝鮮の公開処刑を想起させる。

北朝鮮では数十年にわたって公開処刑が行われてきた。国家反逆罪などの重大な政治犯罪に問われた人物に加え、近年は韓国ドラマやK-POPなどの映像・音楽を大量に配布した若者が公開処刑されたとの脱北者証言もある。複数の証言によれば、当局は関係者や地域住民、時には子どもまで処刑場に集め、罪状を読み上げた後、銃殺刑を執行する。処刑を目撃させることで、同様の行為を思いとどまらせる狙いがあるとされる。

いわば、「処刑されたくなかったら、言うことを聞け」と脅すやり口だ。ハサン死刑囚の場合、軍事司法の手続きを経た刑罰ではある。ただ、死刑制度そのものへの賛否とは別に、執行のライブ配信を「公開の見せしめ」にすることには、米国内の専門家からも重大な倫理的疑問が示されていた。公開処刑は人々に大きな心理的負荷をかける。脱北者によれば、公開処刑を目撃した住民の中には、失神したり、嘔吐したりするなど、深刻な精神的ショックを受ける人がいたという。

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「嫌な人はライブ配信を見なければよい」という主張があるかもしれない。しかし、為政者たる者、一般の人々に無用な心理的圧力をかけるべきではないはずだ。ヘグセス氏の発言からは、刑の執行を厳罰姿勢の宣伝に利用し、反対意見を力で封じようとする危うさも感じられる。その構図は、住民への威嚇を統治の手段としてきた北朝鮮と重なる。

また、公開処刑は処刑される人の尊厳を必要以上に傷つけることにもつながる。米国防総省の民間人保護センターで民間人被害評価を担当したウェス・ブライアント氏は「ヘグセス氏は何よりも殺傷力と殺害を優先している」と語る。同氏がかかわった、戦闘による民間人被害を抑えるための取り組みは、人員削減や予算停止で大幅に機能を弱めたと、国防総省監察総監も指摘している。ブライアント氏は、米軍によるカリブ海などでの「麻薬運搬船」に対する攻撃や、イラン南部ミナブの学校施設に対するミサイル攻撃などは、国際人道法などに違反する可能性があると指摘する。

ヘグセス氏は2025年1月に発足した第2次トランプ政権で反DEI(多様性、公平性、包摂性)の方針を推し進め、2026年には原則として30歳以上の男性軍人を対象に、テストステロン欠乏の検査を義務づける指針を導入するなど、「肉体的な強さ」を前面に出す政策を進めてきた。長期化するイラン戦争への展開中、空母エイブラハム・リンカーンを中心とする空母打撃群では8人が自殺を図ったことが海軍によって確認された。これに先立ち、ヘグセス氏は艦内の状況を伝えた報道について「完全に誤って伝えられている」と反論していた。ブライアント氏は「トランプ政権は、見せつける暴力を進めている」と懸念する。

共和党内でも、ヘグセス氏の国防長官就任に反対票を投じたマコーネル上院議員が国防予算や同盟国への姿勢を批判し、就任を支持したティリス上院議員も、ヘグセス氏は「辞める必要がある」として弾劾への支持を示唆している。11月3日の米中間選挙で民主党が上下両院の多数派を握れば、すでに共和党議員から弾劾条項を提出されているヘグセス氏が、主要な追及対象の一人になる可能性は高い。

文=牧野愛博

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