「RIAAは音楽業界を代表して、これまで60年近くゴールド&プラチナム・レコードの賞を授与してきましたが、一アーティストがプラチナム・アルバムを30回も獲得したのは、これが初めてです。『スリラー』はゴールド&プラチナム・レコードの歴史において特別な存在となり、それを祝うことができて光栄です」と、RIAAのCEO、Cary Shermanは声明で述べた。
クインシー・ジョーンズとマイケルが制作した『スリラー』は、グラミー賞で異例の8部門を受賞し、ビルボードのアルバムチャートには2年以上もランクインした。また、「スリラー」「ビリー・ジーン」「今夜はビート・イット」というアルバムからのミュージックビデオは、史上最も影響力のあるビデオとなり、それまでのミュージックビデオの有り方に革命を起こした。
更に、マイケルは黒人アーティストがMTVで活躍するための道を開き、大リーグのジャッキー・ロビンソン(大リーグで初めてプレーしたアフリカ系アメリカ人)のように、ポップ・ミュージック界での立場を不動のものにした。
マイケル・ジャクソンは、アーティストそしてパイオニアとしてその功績が高く評価されているが、筆者が著書『企業としてのマイケル・ジャクソン(Michael Jackson, Inc)』に記したように、晩年の金銭トラブルのせいで、彼のビジネスパーソンとしての実績は、あまり注目されていない。『スリラー』は米国内で3,000万枚、全世界では1億枚以上を売り上げているが、彼のキャリアはそれに留まらない。
主だった実績のひとつとして、ビートルズの楽曲の著作権を1985年に4,750万ドル(約57億6,000万円)で買収したことが挙げられる(マイケルの財団は今も、ソニー/ATVミュージックパブリッシングの株を50%所有している。同社の推定価値は20億ドル/約2,400億円)。また、生涯に11億ドル(インフレ調整後では19億ドル/約2,300億円)を稼ぎ、2009年の急死以降も、10億ドル(約1,200億円)以上を稼ぎ出している。
その他に、彼はクロスプロモーションを行うスターの先駆けとなり、スニーカーや洋服のデザインを手がける一方、映画業界(演じる側と制作側双方)にも進出した。彼は、ディズニーが買収するはるか前に、マーベル・スタジオの買収をも試みたことがある。同社は今や数十億ドル規模のビジネスだ。
ラッパーで俳優、そして起業家でもあるクリストファー・リュダクリス・ブリッジスはマイケル・ジャクソンについて以前こう話した。「私の見たところ、彼は非常に頭がいい。私はビジネスに精通しているからわかります。それに気づいて、彼がしたすべてのことを丹念に調べたくらいです」
生前にマイケルが設立した財団は、彼の死後も潤っている。印税やレコードの売上の他、財団の執行人が彼の死後に新たに結んだシルク・ドゥ・ソレイユのショー2つとニューアルバム、映画『This Is It』の契約のおかげで、生存している最も稼ぐミュージシャンたちの年収を上回ることもよくある。
『Michael Jackson, Inc.』の執筆にあたりベリー・ゴーディにインタビューをした際、彼はこう話した。「マイケルは子どもの心を持った天才でした。愛情に溢れていて、穏やかな口調で話す思想家でした。彼はすべてのことをしてみたかったのです。そして彼にはその能力がありました。ただ、人間が一生のうちにできることには限りがあります」