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アジア

2026.10.12 07:13

インドのビリオネアがクリケットに巨額を投じる理由

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本記事は、Forbesによる「India's Richest 2026」特集の一部である。全リストはこちら。

今年、クリケット界を揺るがす記録的な取引が2件あった。インディアン・プレミアリーグ(IPL)で2度の優勝を誇るロイヤル・チャレンジャーズ・ベンガルール(RCB)は3月、コンソーシアムに18億ドル(約2850億円)で買収された。ロサンゼルスに本社を置く投資銀行フーリハン・ローキーの2026年IPL評価調査によると、これはIPLフランチャイズの単独取引として過去最高額である。買い手には、コモディティ界の大物クマール・ビルラ氏率いるアディティヤ・ビルラ・グループ、メディア大手タイムズ・オブ・インディアのオーナーのほか、米国のビリオネアであるデビッド・ブリッツァー氏、資産運用会社ブラックストーンが含まれていた。

その2カ月後、アルセロール・ミッタルの会長兼最高経営責任者(CEO)である鉄鋼王ラクシュミ・ミッタル氏は、ワクチン富豪サイラス・プーナワラ氏の息子で、セラム・インスティテュート・オブ・インディアCEOのアダル・プーナワラ氏と組み、ラジャスタン・ロイヤルズを買収した。評価額は16億5000万ドル(約2610億円)だった。同チームにはこれに先立ち、ウォルマート創業家のロブ・ウォルトン氏と、米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のデトロイト・ライオンズを所有するフォード・モーター一族の末裔シーラ・フォード・ハンプ氏が関わるシンジケートから入札があったが、その提案は頓挫した。フーリハン・ローキーの推計では、主にこの2件の取引により、IPLの事業価値総額は2023年の154億ドル(約2兆4400億円)から206億ドル(約3兆2600億円)へと急騰した。

クリケットへの大規模な投資の理由について、ビルラ氏は声明で「過去20年でIPLは世界的なスポーツの一大勢力へと変貌し、インドのクリケットの姿を変え、インドに莫大な価値を生み出してきた」と述べた。ミッタル氏にとっては、このスポーツへの情熱と、チームの本拠地である州とのつながりが同じ重みを持っていた。「私はクリケットを愛しており、私の家族はラジャスタンの出身だ」と、同氏はプレスリリースで述べた。

インドでは、クリケットが他のあらゆるスポーツを圧倒している。フーリハン・ローキーによると、同国の年間スポーツ収入2230億ルピー(23億ドル(約3640億円))の89%を占める。毎年開催されるIPLトーナメントは、試合を3時間で行うよう設計された、最短かつ最速の形式であるT20フォーマットに従い、全国各地で2カ月以上にわたって開催される。コンサルティング会社EYとインド産業団体FICCIが3月に共同発表した報告書によると、2025年にはテレビとオンラインで過去最高の12億人の視聴者を集めた。

クリケットの圧倒的な威信は、2007年の開始当初から大富豪たちをIPLに引き寄せてきた。その顔ぶれには、ムンバイ・インディアンズを所有するムケシュ・アンバニ氏のリライアンス・インダストリーズ、パンジャブ・キングスの株式を保有するバーマン家のモヒット・バーマン氏と、ビリオネアであるヌスリ・ワディア氏の息子ネス氏、さらにかつて酒造業で財を成したビジャイ・マリヤ氏が含まれる。マリヤ氏は財務上の問題により、2016年にRCBに対するすべての支配権を合弁相手であるディアジオのインド部門ユナイテッド・スピリッツに譲らざるを得なくなり、同社は今年初めに同チームを売却した。

当時、彼らがチーム取得のために支払った価格は、今日では割安に見える。マリヤ氏によるRCBの落札額は約1億1200万ドル(約177億円)で、アンバニ氏もほぼ同額でムンバイ・インディアンズを手に入れた。「初期投資家にとってはウィンウィンだった」と、ベテランのスポーツコラムニスト、アヤズ・メモン氏は語る。「インドでは、クリケットほどのブランド価値を提供するスポーツはほかにないため、優れた投資であると同時に、虚栄心を満たす遊びでもあることが証明された」と同氏は付け加える。

現在、IPLの10チームのほぼすべてにビリオネアのオーナーがいる。ラクナウ・スーパー・ジャイアンツのサンジブ・ゴエンカ氏、デリー・キャピタルズのG.M.ラオ氏、サンライザーズ・ハイデラバードのカラニティ・マラン氏などである。5年前には、2件の取引が賭け金を大きく引き上げた。世界的なプライベートエクイティおよび投資助言会社のCVCキャピタル・パートナーズが、グジャラート・タイタンズに約570億ルピーを支払い、ゴエンカ氏がラクナウのチームに700億ルピーを投じたのだ。CVCはその後、昨年、保有株式の3分の2をビリオネアであるメータ兄弟のトレント・グループに500億ルピーで売却し、一部資金を回収した。

フーリハン・ローキーのムンバイ拠点の財務・評価アドバイザリー担当ディレクターで、IPL評価調査の著者であるハーシュ・タリコティ氏によれば、コンソーシアムによる所有は、IPLが機関投資家向けの資産クラスになりつつあることを示す明確な兆候である。記録的な価格の一因は、チーム数が限られていることにあると同氏はいう。「私たちが目にしているのは、その背後に真の成長仮説を伴う希少性プレミアムだ」

チームオーナーの中に売却を検討している者はいないものの、数人は一部売却を検討している可能性があると、メモン氏はいう。ニューヨークを拠点とする資産運用会社アレス・マネジメントは、ボリウッドスターのシャー・ルク・カーン氏が共同所有するコルカタ・ナイトライダーズの少数株取得に向けて交渉していると報じられている。メモン氏によると、9月の年次総会で2027年のIPL第20回大会を「盛大に」祝うと発表したインドクリケット管理委員会が、IPLのチーム数を12に増やす可能性があるとの話も出ているという。

フランチャイズの将来について、メモン氏はビリオネアオーナーの次世代が積極的に関与している点を指摘する。アンバニ氏の息子アカシュ氏は、選手オークションでリライアンス・インダストリーズを代表し、弟のアナント氏とともに試合会場で頻繁に目撃されている。マラン氏の娘カビヤ氏は、サンライザーズのCEOを務める。ビルラ氏の新たなトロフィーは、29歳の息子で元クリケット選手のアリャマン氏が監督しており、同氏はRCBの会長に任命された。一方、ミッタル氏の息子で、ボストン・セルティックスのマネージングパートナーであるアディティヤ氏は、ラジャスタンのチームの取締役に名を連ねている。

(forbes.com 原文)

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