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北米

2026.10.11 09:12

テック大手が公教育を取り込むまで──コンピュータ教育の裏側

Adobe Stock

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著書『Coding Kids』で、ジャーナリストのナターシャ・シンガーは、コンピュータ教育がいかにして「IT大手が教室を取り込むための便利な経路」となったかを描いている。

シンガーは、特定の形のコンピュータ教育を教室に導入しようとする動きを、急成長する業界の文脈に位置づけている。業界内では、女性や黒人の比率の低さが指摘される一方で、成長を支える人材をどう確保するかという懸念もあった。

シンガーが特に注目するのは、ハディ・パルトヴィと(2013年に設立された)Code.orgである。彼女は、パルトヴィが「自らの非営利団体を、話題の新アプリを持つスタートアップのように」運営していたと指摘する。迅速で機動的、急速にスケールし、素早く失敗して上に進むことを重視するスタートアップ文化に従うCode.orgは、大手IT企業の関心と提携を引き寄せた。

シンガーは、コンピュータ関連の仕事が経済的な恵みであり、生徒たちの上昇経路として売り出された経緯を描く。これにより、企業は学校でのコンピュータ教育を推進する取り組みを、必要以上の採用候補者層をつくる手段や早期に市場を押さえるためのツールではなく、慈善活動として売り込むことができた。グーグルが学校での取り組みを「将来のユーザーのパイプライン」と呼んだのは、社内文書においてのみだった。

「Hour of Code(コードの時間)」のようなイベントは、グーグル、アップル、マイクロソフトが提供する教材を使い、人気ゲームのキャラクターを登場させながら、全米の著名人や生徒を巻き込んで、コンピュータプログラミングに対する大きな話題を生み出した。

しかしシンガーが指摘するように、こうした業界支援の活動はすべて、テクノロジーの社会的・経済的コストに関するより大きな問いを素通りしていた。本書には、ペンシルベニア大学の教育学教授ヤスミン・カファイのような人物のエピソードも含まれている。カファイは、Hour of Codeが「テクノロジーの肯定的な見方だけを選んで」紹介するものになっていることを懸念していた。彼女は、データ収集の広範な普及に伴う利益とリスクなどを考慮し、メリットとデメリットを検証する「テクノロジー・シビックス(市民論としての技術教育)」の必要性を主張していた。

シンガーが示すように、価値ある経済力としてプログラミングを学ぶというメッセージは、教育を貧困脱出の経路とするオバマ政権のメッセージとかみ合っていた。

シンガーは他の重要な局面も追跡している。たとえば1980年代のアップルの「The Kids Can’t Wait(子どもたちは待てない)」キャンペーンだ。これは、教室にコンピュータを導入する必要があり、避けられない未来の波から生徒を取り残すわけにはいかないと学校側に思い込ませた。

そのキャンペーンの続編となったのが、自社ソフトウェアを教室のコンピュータに参入させようとするグーグルの推進策だった。教員は、グーグルの独自ソフトウェアに関する業界制作の認定資格を取得することができた。シンガーは、ノーステキサス大学のダニエル・クルトカがIT大手と公立学校の間の力の不均衡を懸念していたことを紹介している。クルトカは、グーグルは教育企業ではなく「世界最大のデジタル広告企業」であり、その富の大部分を集めたデータに依存している超裕福な企業だと指摘した。

クルトカは、「テクノロジーについて批判的な問いを投げかけるよう生徒に教えるべき教育者が、代わりに知らず知らずのうちに業界の宣伝役として振る舞っている」と懸念した。

公立学校は資金不足に陥っていることが多く、IT企業の一見寛大に見える姿勢は魅力的だ。同時に、IT企業は自社のエコシステム内でのコンピュータ利用を増やそうとする。そのため、グーグルはグーグルのロゴを作成する「Hour of Code」の無料レッスンを提供している。シンガーによれば、2017年にGoogle.orgは4-Hに対し、グーグルのプログラムによるコンピュータ研修のために150万ドル(約2億3700万円)の資金提供を発表した。IT企業が提供するコンピュータ教育プログラムが、いかに異例なまでにブランド化されているかを、シンガーは繰り返し指摘している。

これは教育におけるIT業界の例外主義の新たな事例だった。学校の美術の授業で、子どもたちにジョー・キャメル(たばこのキャラクター)を描かせることは通常ない。また、学校の調理実習でフライドポテトを使ってマクドナルドのロゴであるゴールデンアーチを再現させるのも異例のことだろう。

シンガーは、コンピュータのAP(アドバンスト・プレースメント/大学先取り履修制度)プログラムの物語に1章を割いている。プリンストン大学に最初に入学した女性の1人であるジャニス・キュニーは、大学のコンピュータ教育へのアプローチには、分野を中流階級の白人男性とアジア系男性に偏らせているいくつかの問題があることを突き止めた。全米科学財団(NSF)からコンピュータ教育におけるジェンダーギャップの解消に取り組むよう要請された際、彼女はその取り組みを多くの過少代表グループへと広げることを選んだ。

NSFは、複数の大学チームによるAPコンピュータコースの開発作業を開始するための助成金を提供した。しかし、カレッジボード(APプログラムを運営する団体)は、コース開発の支援をCode.orgとそのスポンサー企業に依頼した。「私たちがそのコースを作成するために870万ドル(約13億8000万円)を支払ったばかりだというのに、彼らはそれをCode.orgに渡してしまった」とキュニーは語った。

数年後、アップルは主にプログラミングに焦点を当てた独自のAPコンピュータコースを作成した。シンガーは再び、そのブランド化の異様さを指摘する。

  1. ノースロップ・グラマン版のAP物理コースや、ジョンソン・エンド・ジョンソン版のAP生物コース、エクソン版のAP環境科学コースなど存在しなかった。

シンガーが書いているのは、現在に至るまでのコンピュータ教育の歴史だけではない。本書の最後のセクションで、彼女は過去のあらゆるパターンが、教育における現在の人工知能(AI)の波とともに繰り返されていると指摘する。それは避けられないのだ。生徒に経済的な将来を持たせたいのであれば、学校はAIという列車に乗らなければならない、というわけである。

「『Hour of Code』は」とCode.orgのウェブサイトは告知している、「今や『Hour of AI』となった」。これは痛烈な皮肉である。なぜなら、経済的安定への道としてプログラミング教育を受けた人々の雇用機会の多くを、AIが奪ってしまったからだ。

『Coding Kids』は入念に調査されており、物語を活き活きとさせるインタビューや詳細なエピソードに満ちている。シンガーの主張の中心は、企業による教室の取り込みがそれ自体で悪いことだという単純なものではなく、それが業界に対する歪んだ偏った像を作り出したということだ。カリキュラムの多くが業界自身によって執筆されるとき、一体何が起きるのだろうか。

その結果、今日の生徒の一部はコンピュータに関する教育の半分、すなわちIT大手を慈善的で世界を変える革新者として描く、バラ色の楽観的な半分しか受けていない。業界のプログラムは子どもたちにプログラミングやAIの使い方を教えることができる一方で、子どもたちにテクノロジーを崇拝するようプログラミング(刷り込み)を行い、より従順な消費者やIT労働者を生み出しているのかもしれない。

シンガーの描く未来は絶望的なものばかりではない。彼女は、社会の多くを支配する業界に対して、より完全で複雑、かつ批判的な視点を求める多くの人々に話を聞いている。学校においてテクノロジーへの反発が高まり、教室でのテクノロジー利用の制限を求める声が上がる中、シンガーの著書はまさに絶好のタイミングで出版された。自分の子どもが通う学校がコンピュータ教育について何をしているのか、あるいは何をすべきなのか疑問を抱いているなら、本書は私たちがどのようにしてここまで到達したのか、そして代わりにどこへ向かうことができるのかを示す優れたガイドとなるだろう。

(forbes.com 原文)

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