Eazeは医療大麻のユーザーと大麻を扱う調剤薬局をつなぐプラットフォームである。会員登録してから1時間以内に私はオンラインで医師の診断を受け、推薦状(医療大麻の許可証)を入手し、1/8オンス(約3.54グラム)の大麻を注文し、玄関で包みを受け取った。
オンデマンド宅配サービスが全盛の今、大麻のデリバリー業者はいくつも存在するが、Eazeの強みは配達以外に携帯電話やPCを使った遠隔医療サービス(EaseMD)も提供している点だ。一方、合法大麻の市場自体も急激に拡大しており、調査会社ArcView Market Researchによると昨年の全米売り上げは推定27億ドル(約3,278億円)。EazeはDCM Ventures、スヌープ・ドッグ、Fresh VCなどから1,250万ドル(約15億1,800万円)を資金調達し、大麻スタートアップ界をリードしてきた。
「購入する姿を人に見られたくない、治安が悪そうな場所にある、といった理由で大麻薬局に行くのをためらっている人は多い。私たちの目標は専業主婦のサッカーマム(教育熱心な中流家庭の母親)にまでマーケットを広げることです」とEazeの創業者兼CEOキース・マッカーティは言う。確かにEazeを使えば、誰でも気軽に医療大麻を手に入れられる。順を追って説明しよう。
まずEazeMDのサイトで会員登録し、申し込みフォームから病歴を含む個人情報と身分証明書の画像を送信する。しばらくすると診察の順番が回ってきて、医師とのビデオチャットが始まる。私の担当医師はロサンゼルスの内科医で、私が慢性の手首の痛みを訴えると、彼は形ばかりの質問をし、3分もしないうちに「痛みの緩和に大麻の適用がふさわしい」と診断。その直後、1年間有効な推薦状のPDFがメールで送られてきた。料金は25ドル。
次にEazeのサイトにアクセスする。既に同社のデータベースには私の診断書がアップロードされており、注文が可能な状態になっている。THC(向精神物質)含有量や香りが様々な大麻が並ぶメニューから、私は1/8オンス55ドルの「Sour Diesel」を注文した。するとなんと5分以内にドライバーがやって来た。たまたま、配達で近所を走っていたのだという。支払いは現金オンリー。
この驚異的な速さからわかるように、EazeおよびEazeMDの売りはスピードだ。マッカーティはアプリを使って短時間で需要と供給を結ぶ同社のサービスをウーバーに例える。ドライバーは薬局に雇われているが、巡回ルートの指示はEazeが行う。注文から配達までの所要時間が28分を超えると、顧客のリピート率が大幅に下がるという。
合法大麻ビジネスはグレーな部分が多く、Eazeも多くの規制に悩まされている。現行の連邦法では大麻関連のビジネスでクレジット決済を取り入れることが難しく、顧客に不便な現金払いを強いている。また、EazeMDは医療系アプリとしてアップルのアプリストアで配布されているが、肝心のEaseアプリは他社の大麻宅配サービスのアプリと同様、物議をかもす可能性があると認識され、配布されない。
だが、マッカーティは機が熟すのを待っている。コロラド州、ワシントン州などに続き、カリフォルニア州で娯楽目的の大麻使用が解禁されるのは時間の問題だ。現在、Eazeの配達地域はサンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、オレンジ郡に限られているが、将来的には「あらゆる場所で展開したい」とマッカーティは言う。規制が解ける時まで、ユーザーに一番近い位置をキープし続ける構えだ。