20年以上にわたり組織の内部で働くなかで、筆者が気づいたことがある。リーダーシップチームに対して、うまく機能していない部分を明確に示すと、彼らはそれを認知することが多いということだ。人々はうなずき、「ええ、分かっていました」と言う。誰かがようやくそれを言葉にしてくれたことに、明らかな安堵の表情を浮かべることすらある。
そして、そこから険しい道のりが始まる。
わかりやすい例えが「運動」だ。やるべきことは別段、謎めいたものではない。定期的に体を動かし、筋力をつけ、心拍数を上げる。AIを活用すればさらに一歩進んで、個人の興味やスケジュール、制約に合わせた運動計画を立てることもできる。しかし、私たちの多くはそれを継続することに苦労している。
何をすべきかを知ることは、1つの課題である。実際にそれを行うための習慣と準備を築くこと、特に途中で挫折した後にそれを続けることは、また別の課題だ。ビジネスリーダーシップの文脈では、その習慣と準備をチーム全体、あるいは共に働く方法を変えなければならない数百人、数千人の規模で築く難しさが加わる。
AIは、そうした取り組みに向けて、組織に強力なインプットをもたらし始めている。その中には、1人では見えないパターンを浮かび上がらせる能力も含まれる。AIは膨大なデータを要約し、意思決定が組織内をどのように進むのか、情報がどこで滞るのか、どのようなチームの力学が成果を制限しているのかといった点について洞察を引き出すことができる。さらに進んで、そうしたパターンを生み出している要因、何が助けになるのか、前進に必要な対話にどう臨むべきかまで、リーダーが理解する手助けをするようになることも想像できる。
こうした洞察は、チームを変化の入口まで導くことができる。しかし人々はなお、学んだことを受け止め、それが共に働くあり方にとって何を意味するのかを考え抜かなければならない。AIによって組織に関する洞察がますます手に入りやすくなる中で、筆者は、この適応力がリーダーシップの一層重要な要素になると考えている。つまり、人々が理解したことをもとに、異なるあり方を実際に生きるよう支援する力である。
適応に必要な3つのこと
筆者の経験上、リーダーシップチームが変化にうまく適応するために必要なことは3つある。
1. チームが共に意味を見いだすために必要な時間を確保する
同じ組織課題を10人の前に置けば、10通りの見方が出てくるかもしれない。CEOは実行の問題と捉える。COOはプロセスの問題と見る。CHROはキャパシティの問題と見る。筆者がこうした場で見てきたのは、各人がそれぞれ真実の一部を見ている可能性が高く、同時に誰も全体像を見ていないということだ。
そうした解釈の違いこそが、組織改革が行き詰まりやすい要因の1つだ。人々は異なる視点から業務にあたっており、互いの認識がどれほど乖離しているかに気づいていないことも多い。十分な共通理解を形成する前に解決策へ飛びつくと、後々になって別の問題を引き起こすことになりかねない。
筆者の経験では、共に意味を見いだすには、他者が何を見ているのか、なぜそう見ているのかに対する好奇心が必要である。特に、その解釈が自分のものと異なる場合はなおさらだ。また、多くの組織が予算化していない忍耐も必要になる。チームには、解釈が同じでなくても共に前進できる程度の共通した意味を得るための、十分な時間が必要だ。そうした余地を設けることで、人々が変化の中で自分の位置を見いだし、自分の参加に何が求められるのかを理解する時間も増やすことができる。
2. 人間関係を「変化のためのインフラ」と捉える
組織の変化は、ほぼ例外なく人間関係に負担をかける。意思決定の方法、相反する優先順位の交渉の仕方、意見が対立した際の対応などが変化するからだ。組織の業務の多くは人間関係を通じて推進されるため、人間関係こそがインフラだと言える。
綿密に設計された変革アプローチが失速するのを筆者は何度も目にしてきた。それは、新しいモデルの内部にある人間関係が、そこにかかる重圧に耐え切れなかったからだ。優れた戦略の成否は、実行に伴う負荷を乗り越える人々の能力にかかっているのが現実なのだ。
変革への取り組みを進める前に、いくつか重要な問いに答えてみてほしい。自社のメンバーは、他者の視点に真の好奇心を持ち続けながら、自分の意見をどれだけ正直に伝えることができるか。自己防衛に走ることなく、自分の責任を認められるか。意見の違いを敵対関係に変えることなく、相反する利害を交渉できるか。問題が発生した際、何が起きたのかに好奇心を持ち、修復すべき関係を修復し、業務に立ち戻ることができるか。
新しいプロセス、構造、オペレーティングモデルは目に見えやすい。しかし、その内部にある関係性の質こそが、実際にどれほどうまく機能するかを形づくることが多い。
3. 試行錯誤を通じて学ぶことを覚悟する
明確な方向性と強固な人間関係があったとしても、変化が一直線に進むことはめったにない。たとえば、新しい意思決定プロセスは、あるチームにとっては役割を明確にするかもしれないが、別のチームにとっては未解決の疑問を表面化させるかもしれない。人々が密かに回避してきた対立が露呈することもあれば、情報がどこで滞っているかが浮き彫りになることもある。新しいやり方で働き始めると、人々は古い習慣や相反する優先順位、日々の業務のプレッシャーにも直面することになる。
実行のプロセスは、組織および変化そのものに関する新たな情報を生み出す。そうした情報に気づき、活用する能力自体がリーダーシップの力量だ。筆者の経験では、そのためには変化が始まった後も注意を払い続ける必要がある。何が定着しつつあるのか。人々はどこでやり抜くことに苦労しているのか。どのような緊張が繰り返し表面化しているのか。元の理解に何を加え、あるいは複雑にする学びがあるのか。
その姿勢は継続的なものだ。何かを試し、何が起きるかに気づき、調整し、再び試す。時間をかけて、この実践は組織の適応力を強化し得る。筆者の経験では、人々は新たな情報が現れたとき、パターンを認識し、前提を見直し、思慮深く対応することが次第にうまくなる傾向がある。1つひとつの変化は、組織が次の変化に活用できる能力を築く機会になり得る。
洞察から適応へ
AIは今後も、組織のより鮮明な姿を示す力を高めていくだろう。私たちに不利に働いている可能性のあるパターン、ギャップ、力学を明らかにするのである。それは有用だ。そうした洞察に真剣に向き合うリーダーや組織は、何に注意を向ける必要があるのかをよりよく見極められるようになる。
とはいえ、その姿を見ることは始まりにすぎない。長く残る課題は、人々の集団が理解したことを受け止め、共に異なる場所へ向かうために必要な共通の意味、関係性の力、学びの姿勢を築くのを支援することにある。
洞察は、私たちに変化の方向を示すことができる。適応こそが、その方向へ進む方法である。



