重要なお知らせ 「Forbes」の名称を使用した営業活動にご注意ください

AI

2026.10.10 08:32

プライベートクラウドはAI支出の抑制に貢献できるか? HPEはそう考えている

Adobe Stock

Adobe Stock

AIのコストは膨らみ続けている。自動化プロバイダーのEsker(エスカー)の調査によると、財務リーダーの72%が、過去1年間において自社のAI関連支出が計画を上回ったと認めている。しかし、多くの組織が支出をより適切にコントロールするため、プライベートクラウドに目を向けている。

ブロードコムの「Private Cloud Outlook 2026」レポートによれば、企業の56%がプライベートクラウド上で本番環境のAI推論を実行しているか、実行を計画しており、83%がワークロードをパブリッククラウドからプライベートクラウドへ戻すことを検討している。

プライベートクラウドに大きく賭けている企業の1社が、エンタープライズテクノロジープロバイダーのHPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)だ。2026年度第3四半期に過去最高となる122億ドル(約1兆9300億円)の売上高(前年同期比34%増)を発表した同社のCFO(最高財務責任者)マリー・マイヤーズは、決算説明会で、同社独自のプライベートクラウドAI(PCAI)のオープンソースおよびオープンウェイトモデルで構築したエージェンティックAI(自律型AI)プラットフォームの導入が成果を上げていると述べた。

このプラットフォームはプライベートクラウドとインテリジェントルーティングを活用し、各ワークロードのリクエストを最も費用対効果の高いAIモデルに振り分ける。マイヤーズによれば、この手法により社内では、パブリッククラウドと比べてトークンコストを最大60%削減できている。定型業務はオンプレミスで処理し、最先端の「フロンティアモデル」はより複雑な作業に限定しているという。

プライベートクラウドへの投資

企業がAI活用を極限まで推し進めようとするなか、テック業界では大量のトークンを消費する「トークンマキシング(tokenmaxxing)」が一般的になっており、メタやウーバーなどの企業が大量のトークンを消費している。ウーバーに至っては、わずか数カ月でAI予算を使い果たした。

こうした教訓を受けて支出への監視が厳しくなるなか、コストを抑えるために効率化やモデルルーティングに目を向ける組織が増えている。HPEのプライベートクラウドAIへの投資について、マイヤーズはビデオインタビューで、「コストを管理する」ために、「自社のプライベートクラウドへの投資こそが、エンタープライズAIの導入を真に加速するための正しい道だ」と判断したと語った。

これは、同社における将来的なトークンへの投資額が、従来の少なくとも2倍から3倍に増加すると予想されたことも一因だ。同時に、オンプレミスインフラへの投資は、従業員がプロンプトを実行するたびにトークンをクラウドへ送信する必要がないことを意味する。

HPEのAIジャーニー

HPEの財務部門でも自律型ツールへの移行が進んでおり、マイヤーズによると、彼女のチームは約1年半前にデロイトと共同で「CFO Insights」と呼ばれるオンプレミス型のエージェントを構築した。これはHPEのプライベートクラウドAI上で動作するAIエージェントで、既存の財務報告プロセスの自動化に役立っている。かつては、毎週の業務レビューのために、社内の100人以上のスタッフが巨大なパワーポイントの資料作成に追われていた。

HPEはAIを中心にそのワークフローを再設計した。現在は、1人の従業員が実行するエージェントが、3億件以上の明細を含む組織全体のデータを分析し、チームが議論するための正確なブリーフィング資料を推奨事項とともに自動生成している。

「私たちはパワーポイントをやめた。非常に大きな効果があった」とマイヤーズは述べた。「エージェントは基本的に日曜日にメモを作成し、パワーポイントを見て詳細を理解しようとする代わりに、会議で何に集中すべきかを正確に教えてくれる」。かつて3時間かかっていた会議が、今では1時間半もかからなくなったという。より広く見ると、デロイトの報告によると、このツールによりHPEの財務報告サイクルは約40%短縮され、処理コストは25%削減されたという。

また、HPEは戦略の一環として、「OpsRamp(オプスランプ)」と呼ばれるオブザーバビリティ(可観測性)レイヤーを開発し、トークンコストの管理と把握を単一のプラットフォームで行えるようにした。

AIに「心酔」するCFOたち

CFOは、企業内で最も「AIに心酔している」エグゼクティブになりつつある。自律型企業プランニングを提供するBoard(ボード)が、年間売上高1億ドル(約158億円)以上の組織のCFO、CIO(最高情報責任者)、COO(最高執行責任者)300人を対象に実施した調査によると、CFOの48%が、自身の判断と対立する場合でもAIの推奨に従うと回答した。これに対し、CIOは33%、COOは11%にとどまった。

こうしたインテリジェンスへの需要が高まるなか、プライベートクラウドへの投資は、長期的な導入サポートとコスト管理に貢献しうる。「インフラを自社で所有するか、ローカルにホストする場合、一般的にトークンごとの料金は発生しない。インフラの運用コストは支払うことになる。無料ではないが、その方が費用対効果が高いかもしれない」と、Info-Tech Research Groupのコンテンツ&リサーチ担当シニアディレクター、ジェレミー・ロバーツはメールで語った。

「これを効率的に行えるなら、車を所有するのと、タクシーに走行距離分の料金を支払うのとの違いに似ている。どちらのアプローチにも一理あるが、頻繁に運転するのであれば、車を所有する方が経済的に劇的に有利だ」とロバーツは言う。「これはHPEが主張しているのと同じ論理だ。プライベートクラウドでローカルにサービスを実行し、目の前のタスクに対して最も効率的なモデルにルーティングすれば、トークンへの支出を劇的に削減できる可能性がある」

ロバーツは、Anthropic(アンソロピック)やOpenAIのフロンティアモデルは非常に高価である一方、オープンソースモデルをローカルで実行する方が劇的に安価であると付け加える。同時に、パブリッククラウドでのAIの運用コストが上昇するなか、すべてのリクエストに最も高価なモデルを使用するよりも、タスクに適したモデルを使用する方が安価であり、毎回フロンティアモデル以外のモデルを使用するよりも効果的である。

財務業務の自動化

コスト効率の最適化を目指すだけでなく、財務リーダーは業務の主要なセグメントの自動化も模索している。例えば、ソフトバンク・ビジョン・ファンドのCFO調査によると、CFOの90%が財務プロセスの自動化にAIツールを使用しており、前年の72%から上昇している。その他のAIのユースケースとしては、予測、取締役会向けプレゼンテーションのドラフト作成、社内レポート、決算発表などがある。

「決算説明会の準備をするCFOは、通常、データの抽出、システム間での数字の照合、経営陣向けの説明シナリオの作成に何日も費やす。その全体像が取締役会に届くころには、数週間前の状況を反映したものになってしまっている」と、Boardのチーフ・プロダクト・オフィサー、デビッド・マーマーはメールで指摘した。

「自律型AIはそのワークフローを変えつつある。エージェントがERP(企業資源計画)、CRM(顧客関係管理)、購買システム全体にわたる業務シグナルを継続的に監視し、逸脱が発生した時点で検出し、予測の更新、差異調査、シナリオの更新といった次のステップを開始する。財務チームは分析作業自体を行うことから、それを評価することへとシフトするのだ」とマーマーは言う。

さらにマーマーは、かつて決算説明会に臨むCFOはデータ準備プロセスを自ら抱え込んでいたが、今では会議が始まる前にエージェントが照合、前提条件の検証、差異に関するコメントのドラフト作成までこなしてくれる、と付け加えた。

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事