ドナルド・トランプ米大統領は「われわれはAI(人工知能)で中国をリードしている」と言っている。カーネギー国際平和財団の中国専門シンクタンク、カーネギー・チャイナの最新の報告書もトランプの評価を裏づける。「数カ月おきに米国の主要なAIラボが最先端のフロンティアモデルをリリースし、それに続いて、米国のフロンティアモデルに肉薄する中国のオープンウェイトモデル(編集注:学習済みの重みが公開され、ユーザーが自分の環境にダウンロードして実行・改変できるAIモデル)が登場する」
AIは米国が先行し、中国が追う──。こうしたナラティブ(言説)はたしかに心強いものだが、一般に理解されているほど単純な話ではない。
というのも、ほかのあらゆる技術分野と同じように、AIもまた「人」が原動力だからである。ここに、米中のAI競争の現状が心強くもあれば気がかりでもある理由がある。筆者はかねて、「閉鎖経済」と呼べるものがあるとすれば、それは外部の取引相手が存在しない世界経済だけだと繰り返し論じてきた。米国のAI経済はどうか。実のところ、この経済は中国から米国へという、長年ほぼ一方向に流れてきた人材供給から大きな恩恵を受けているのだ。
この人材流入がなければ、中国とのAI競争でトランプが言うような米国のリードは、あったとしても大きくなかったと容易に推測できる。繰り返せば、すべては人にかかっている。カーネギー・チャイナの報告書は「世界のエリートAI人材を最も多く輩出する国として、中国は圧倒的にリードしている」と指摘している。
これは一見、米国にとって心強い分析に思える。AI分野の人的資本の移動が依然、中国から米国へというほぼ一方向の流れになっている以上、AI人材の出身国がどこであれ、米国のAI分野は恩恵に浴することになるからだ。カーネギー・チャイナの報告書は「頭脳流入と頭脳流出という観点で言えば、2025年に米国は研究者2145人の純増、中国は1729人の純減だった」とも言及している。
ここまで読むと、米国人はAIの現在と未来は安泰だと思うだろう。米国のAI分野の「ベスト・アンド・ブライテスト」たちは、おおむね米国内でその能力を発揮している。米国は引き続き中国のトップクラスのAI人材も引き寄せている。上に述べたとおりだ。だからこそ、米国はAIでリードしているというわけだ。



