「サステナグロースカンパニーアワード」が存在することの意義を掘り起こし、サステナグロースを実現できる企業とそうではない企業の分かれ目について論じ合う。本アワードの審査員を務め、ファイナリストの想いに触れた4人がその本質を語り尽くした。
8月20日の授賞式に先立ち、5月19日に船井総研グループの東京本社にて行われたのが「サステナグロースカンパニーアワード2026」の最終審査会だ。今年は28社のファイナリストに対し、Web会議ツールを使って質疑応答を実施。審査会場には船井総研グループ各社の経営層に加えて、審査の公平性や透明性を担保するために外部からも審査員が招聘された。その審査員を代表して、船井総研ホールディングス代表取締役社長 グループCEOの中谷貴之、神戸大学経済経営研究所教授の家森信善、昨年の同アワードで大賞を受賞したシャボン玉石けん代表取締役社長の森田隼人、Forbes JAPANの谷本有香に審査後の所感を聞いた。
この時代のなかでサステナグロースを遂げることの意味を考えてみる
——まずは、外部審査員の皆さんに「サステナグロースカンパニーアワード2026」が存在することの意義についてお聞きしたいと思います。
家森信善(以下、家森):物価高になってきたり、金利が上がってきたりといったことも含めて今、中堅・中小企業の経営環境は非常に厳しくなっていると思います。そうしたなかにおいても中堅・中小企業は挑戦を続けていかなければなりません。挑戦とは、道筋がはっきりと見えていないなかで行う取り組みのことを言います。しかし、うまくいっている企業や努力している企業の取り組みを知ることにより、これから挑戦を行おうとしている企業は勇気をもらうことができますね。そうした貴重な情報を発信しているのが、「サステナグロースカンパニーアワード」です。今年は12社の受賞が決まりましたが、この各社から刺激を受ける企業が数多く生まれていくことも本アワードの大いなる意義ではないかと感じています。
谷本有香(以下、谷本):本アワードにおいては、やはり「サステナグロース」というコンセプト自体が素晴らしいと、私は心から思っています。ここ数十年にわたって欧米的な合理主義に向けて日本も走ってきたという経緯のなかで、スケールすることがいいことだという考えに重きを置いてしまい、サステナブルな精神をないがしろにしてきたという反省を忘れてはいけません。本来、製品の長寿化やサステナビリティといった概念は、私たち日本人が得意としているものなのです。今、自分たちの強みを再び見直すべきときがきています。私は、このアワードの審査会に出席するたびに、宝物を探し当てるかのような気持ちになっています。今年も新たな宝物に出合うことができました。
森田隼人(以下、森田):シャボン玉石けんは、昨年の本アワードで大賞をいただきました。私たちには「半世紀前から持続可能なものづくりを行ってきた」という自負があり、社員は「健康な体ときれいな水を守る。」という経営理念に基づいた仕事に当たり前のように取り組んでいます。それが、約1万2,000社もの選考対象から最終的に大賞を受賞するという高い評価をいただけることだったとわかり、あらためて自分たちの仕事に誇りをもてるようになりました。また、外部に受賞した事実を発信することで、私たちの企業価値を上げていただけたと感じています。
——冒頭の家森さんのお話にもありましたが、今の中堅・中小企業を取り巻く環境について皆さんがどのように分析されているのか、あらためて教えてください。
家森:これから先は人口の減少に伴って、より少ない労働供給でより多くの価値をつくり出さないといけなくなります。つまり、一人ひとりの生産性をいかに上げていくか、付加価値をいかに高めていくかという話になります。はっきりと言うなら、「働き手の方々が生きがいをもって創意工夫をしていく社会」をつくり出さないと、もはや日本はやっていけないわけです。企業においては社長だけが独善的に動いてもダメで、やはり従業員と想いをシェアしながら、みんなで新しい価値をつくっていかないといけません。従業員の一人ひとりが価値を生み出していける環境。これをいかにして生み出していくかに注力すべき時代が訪れています。今日の審査会に参加してみて、いい会社に共通しているのは「人材教育を重視していること」だと感じましたね。
——あらためて人のチカラというものが問われる時代において、サステナグロースを実現できる企業とそうではない企業はどのように分かれていくと中谷様はお考えでしょうか。
中谷貴之(以下、中谷):どのようにして、その時代の「上りのエスカレーター」となる切り口を探していくかでしょう。経営者が上りのエスカレーターへと至る道筋を見つけながら、きちんと人間を中心に置いて、従業員満足を担保し、生産性も担保して、給料もしっかりと上げていく。そうした環境を用意できるかどうかが、サステナブルな企業とそうでない企業の分かれ目になるような気がしています。
谷本:中堅・中小企業の経営者の皆さんは、ものすごい荒波のなかで厳しいかじ取りをされていらっしゃいますよね。本日の審査会でも感じたのですが、受賞企業の経営者の皆さんは大いなる機動力を有して常にフレキシブルに対応されています。荒波のなかにあっても環境のせいにすることなく、それぞれの地域でスピード感とフレキシビリティをもって対応されています。その意味では、大企業よりも中堅・中小企業のほうが有利かもしれないですよね。また、スピード感は今のAIの時代において重要な要素でもあります。
森田:確かに、大きな船だと時代の荒波のなかでは小回りが利きづらいこともあるでしょうね。理念やパーパスといった大きなものを心に抱きながら、小回りの利いたかじ取りで変化に対応していく。ぶれない指針をもちながら、新しいチャレンジに乗り込んでいく。そうしていけば、サステナビリティを目指した難しい航海でも乗り越えやすくなるのではないでしょうか。
家森:ぶれない指針は大事です。ここに行けば利益を出すことができるよと聞けば、本能的には行きたくなるのでしょうけど。それが自社の理念と矛盾している場合には、たとえ利益が出たとしても、ちょっとたったらほころびが生じてしまいます。
——今回の受賞企業のなかで特に記憶に残った企業を、その理由と共に教えていただけますか。
家森:やはり、大賞を受賞した井村屋グループですね。100年超の歴史を有しながら、伝統のうえにあぐらをかくことなく、その時々において必要な変化を内製化できています。新しい変化の方策を社員が出してきたときにもノーとは言わないトップの覚悟があるところがいいですね。最終的にやれるかどうかはともかく、最初から「そんなの無理だ!」と否定せず一緒に考えながら挑戦しています。
谷本:私は、100億企業賞を受賞した筑水キャニコムを挙げたいと思います。まさに信念を有しながらもフレキシブルに機動力を発揮してグローバルで活躍されています。今、国の政治や大企業もこの姿勢を学んでいかなければならないと感じました。さらに言うと、DX・AIが浸透している企業が今回の受賞企業には多かったことに今後に向けての期待感をあおられた気がしています。
やはり、優れた企業は当たり前のようにテクノロジーの力を使いながら、躊躇なく最先端の取り組みを選択しているのだなと、あらためて思いました。サステナグロースを成し遂げるための武器という感じで大上段に構えているのではなく、すでに当たり前のインフラとしてフトコロに収まっている感じが頼もしい。
森田:私も筑水キャニコムが記憶に残りました。筑水キャニコムはシャボン玉石けんと同郷ということもあり、3代目社長の包行(良光)さんとは同世代で個人的なつながりもあります。包行さんの想いが強く、企業特性も強くて、そうした強さの部分はシャボン玉石けんとかぶるところでもあります。また、地元の大学生向けの大規模な就職説明会などの現場でも顔をあわせることがあります。シャボン玉石けんを受けて、筑水キャニコムを受ける学生さんが多いのです。そうした企業がレベルの高いファイナリストのなかから選ばれ、100億企業賞を受賞したことが刺激になりました。
中谷:筑水キャニコムは、人口が約2.6万人の福岡県うきは市を拠点にしていますね。地方に本社を置き、約42億円を投じた新工場も建てたりしながら、世界の57カ国に農業・土木建設・林業用の運搬車などを展開しています。また、地域コングロマリット審査員特別賞を受賞した丸光ホールディングスは、人口が約6万人の熊本県玉名市を拠点にして地域コングロマリット経営を展開し、年商150億円以上を達成しています。この両社は必ずしも大都市や成長業種で事業をしていなくても光は見える、希望はあるということを示してくれています。
多様なBeingとDoingによってサステナグロースを遂げている企業の生きた事例を取り上げ、表彰し、そのストロングポイントやブレイクスルーポイントを全国に知らしめ、次のサステナグロースカンパニーを生み出していきたいと考えている船井総研グループにとって、この両企業の受賞には大きな意味や意義があったと私は考えています。
サステナグロースカンパニーアワード2026
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もりた・はやと◎1976年、福岡県生まれ。2000年、専修大学経営学部経営学科を卒業後、シャボン玉石けんに入社。取締役副社長を経て、07年に30歳で代表取締役社長に。
やもり・のぶよし◎1988年、神戸大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。名古屋大学大学院経済学研究科教授などを経て、2014年から神戸大学経済経営研究所教授に。
なかたに・たかゆき◎1991年に関西大学を卒業後、船井総合研究所に入社。2016年、社長に就任。20年、船井総研ホールディングス取締役専務執行役員。21年、社長に就任。
たにもと・ゆか◎証券会社を経てBloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、米国でMBA取得。帰国後、日経CNBCキャスターなどに従事。2016年、Forbes JAPANに参画。



