AIは長大な資料を要約し、論旨の整ったレポートを書きあげ、質問に対して的確な答えをすばやく返してくれる。仕事の効率を高める有用なツールであることは間違いない。
一方で、大学などの高等教育の現場や、新入社員が企業や業界について学んでいく過程において、本来ならば試行錯誤を通じて身につけるはずの知識や思考力、そのための機会をAIが奪ってしまうのではないかという議論もつきまとう。
こうした懸念に対して、グーグルはAIを形式的な「解答の代行者」ではなく、人が自ら考え、理解を深めるための伴走者として位置づけようとしている。その考え方を色濃く反映するサービスのひとつが「Gemini Notebook」だ。ユーザーが与えた資料をもとに対話や要約を生成するだけでなく、クイズなどを通じて理解を確かめながら学びを深める機能も備える。
Gemini Notebookの共同開発者 兼 設計責任者であるスティーブン・ジョンソン氏に、高等教育から企業のオンボーディング、ビジネスパーソンの継続学習まで、AIが人の学びとキャリア形成をどのように支えられるのか、その現在地と今後の展望を聞いた。
「答えを与えるAI」から「思考を促すAI」へ
Gemini Notebookにはユーザーのリクエストや質問に答える通常のモードに加え、「ガイド付き学習」モードが用意されている。その基盤には、学習科学の知見をAIに取り込むグーグルの「LearnLM」で培われたコンセプトがある。
LearnLMの原則は現在、独立したモデルとして切り離されているのではなく、Geminiの能力に組み込まれているとジョンソン氏は説明する。
「通常のモードではユーザーがアップロードした資料を参照しながら、質問にできる限り役に立つ答えを返すことを優先します。一方でガイド付き学習モードに切り替えると、チャットの振る舞いが大きく変わります。答えを尋ねても、まず『どうすればそこにたどり着けるか、一緒に考えましょう。あなたがすでに知っていることを教えてください』と、ユーザーに対して反対に問いかけてきます。構造化された対話を通じて、ただ答えを返すのではなく、AIを学習に活かしたいユーザーが、自分自身で思考を重ねながら答えに到達できるようにAIが支援するのです」
クイズで間違えた場合も、正解だけを表示して終わらない。「説明」ボタンを選択すると「なぜ誤ったのか」を解説し、理解に必要な元の資料の箇所をリンクで指し示す。AIはただ近道を導くのではなく、原典を読み返すことによって理解を深められるよう学習者に手を差し伸べる。



