8月20日、グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて「サステナグロースカンパニーアワード2026」の授賞式が開催された。本アワードの主催は船井総研ホールディングス、運営は船井総合研究所だ。本稿では「サステナグロースを生み出す強さと優しさ」について考察する。
1970年に前身となる日本マーケティングセンターとして創業した船井総研ホールディングスは、中堅・中小企業を中心に業種別のきめ細やかなコンサルティングを行い、成長への実行支援の実績を積み上げてきた。現在、船井総研ホールディングスは「サステナグロースカンパニーをもっと。」をパーパスに掲げている。サステナグロースとは「サステナブル(持続的)」と「グロース(成長)」をかけ合わせた造語だ。
このサステナグロースを成すために必要なものは、ふたつの要素に集約される。どのような状況でも企業業績を伸ばし、持続的に向上させていく強さがあること。より広いステークホルダーを思いやる優しさを兼ね備えていること。そうした強さと優しさの両輪で駆動していくところにサステナグロースの神髄があると船井総研グループは考えている。
日本の企業群のなかで99%を占める中堅・中小企業がサステナグロースカンパニーとして地域で、業界で著しい存在感を発揮していけば、そのポジティブな波及効果はやがて社会全体・国家全体にまで届いていくだろう。山積する課題、迫りくる変化を契機ととらえて果敢にチャレンジしていくサステナグロースカンパニー。その質と量を充実させていくことこそ、船井総研グループが果たすべき役割なのだという。
「サステナグロースカンパニーアワード2026」は、船井総研グループが自身の役割を果たし、強さと優しさを兼ね備えた企業が地域、業界、社会、国家を変えていくことを見据えて開催されている。選考対象約1万2,000社から45社がノミネートされ、最終審査に進んだ28社のファイナリストのなかから12社が受賞企業として決定した。その「各賞の名称」および「受賞企業の顔ぶれとトップマネジメントの哲学」を一望してみれば、今の日本に存在する課題も希望も知ることができるだろう。
本稿では本年度の受賞企業のなかから3社を取り上げて、サステナグロースを成し遂げるための強さと優しさの内実について考察していきたい。
強さと優しさが企業を変える、そのメカニズムに着目したい
100年企業賞を受賞したのは、1912年に東京・虎ノ門で文具店として創業したオカモトヤだ。同社社長の鈴木美樹子が4代目となる。オカモトヤは文具四宝と呼ばれる商材(紙・硯すずり・筆・墨)の販売を祖業としながら、時代の変化に合わせてオフィス文具サプライ事業やオフィス空間構築事業(空間+ICT)へと果敢に進出。さらには女性が社会で活躍していくことを推進する事業も立ち上げている。これらの根底には、「自社の歴史や強みを俯瞰したうえで今、なすべきことは何か」と問い続けてきた鈴木の歩みがある。
また、鈴木は「サステナグロースカンパニーが有する強さとは、チャレンジする勇気があることだ」とも語っている。愚直なまでに問い続けた日々が新たな事業にチャレンジする勇気へと結実するとき、100年企業の新たな歴史が始まるのだ。
IPO賞を受賞した田村ビルズグループは2026年3月、東京証券取引所の「TOKYO PRO Market」と福岡証券取引所の「Fukuoka PRO Market」に上場した。田村ビルズグループは、1879年に食料品店「田村屋」として創業。6代目の田村伊幸が率いる現在は、「ともに豊かに」という理念を掲げて「建築・不動産事業」と「環境リサイクル事業」を収益の柱としている。
創業から147年を迎えて成し遂げた上場は、資本主義のあり方そのものが問い直されている現代に涼やかな鐘の音を鳴らした。同社の選択は、一般市場のように個人の短期売買による株価の乱高下が起きにくい特定投資家向けの市場(PRO Market)で上場企業としての信用力を高めながら、「ともに豊かに」という理念を一段階上のレベルで追求していくことが狙いと言えるだろう。
同社は、すべてのステークホルダーに「よかれかし(「良くなってほしい」の意)」とする「社会性」を兼ね備えた企業を目指している。サステナグロースカンパニーに必要とされる優しさを、さらにブーストするためにIPOがなされたのだ。
エンプロイーサクセス賞を受賞したのは、アパレル企業のマザーズインダストリーだ。創業者の笹野信明が会社を立ち上げる際に最初にした仕事は「ファッションで人を笑顔にする」「人を育て、会社を永久存続させる」というクレド(信条)を掲げることだったという。そして、「企業とは人と人とがつながっていくコミュニティである」という考え方を経営の核に据えた。社員一人ひとりから得られる信頼と共感を経営の基盤にしてきたのだ。
そうした思想は今、絵空事に終わっていない。船井総合研究所が行った「経営・組織力診断」では、従業員による「理念への共感が98点」「仕事への誇りが94点」という高スコアを記録。2003年の会社設立以来、服はもちろんのこと、生地やボタンといった素材ひとつに至るまで廃棄処分をしたことがないというサステナブルな姿勢は、従業員との向き合い方にも表れている。
満足感と共に長く着られて笑顔になれる服、満足感と共に長く働けて笑顔でいられる従業員。このふたつの笑顔がマザーズインダストリーをドライブしていくことにより、同社はコロナ禍という危機・転換期さえも乗り越えながら持続的に売り上げを伸ばしてきた。
また、こんなエピソードもある。あるご夫婦が店舗を訪れ、「病気の母に『何がしたい?』と尋ねたら、『MARcourtに行きたい』と言った。どんな店なのか、自分たちも見てみたくて」と話したという。旅行など多くの選択肢のなかで、ひとりのお客様の「行きたい場所」として店の名が挙がったことは、笹野の心に強く残った。商品だけでなく、店やブランドとの時間が人の記憶に残る。そこに、これからのファッションの価値がある。ファッションによって人に届けられるものがあるとして、その可能性をどこまで広げていけるのか。そうした思想や美学を磨くことと、経営のノウハウを集めることは、まったく別の営みだ。
AIが即座に答えてくれる時代だからこそ、人間は一朝一夕には身につかない思想や美学と向き合う必要がある。その地道な積み重ねこそが、人に、企業に、強さと優しさをもたらすのだ。
サステナグロースカンパニーアワードとは
本アワードは、船井総研ホールディングスが主催する優良中堅・中小企業表彰。同社は「サステナグロースカンパニー」を、どのような状況でも業績を伸ばし、企業業績を持続的に向上できる「強さ」と、より広いステークホルダーを思いやれる「優しさ」を兼ね備えた企業と定義している。こうした企業を選定・表彰することで、個々の企業だけでなく、地域や業界、さらには社会や国家にもより良い影響をもたらすことを目指す。審査では、船井総研グループの取引先および外部からの一般エントリー企業約1万2,000社の選考対象から、審査基準に照らして業界のモデルとなる45社をノミネートし、最終審査に進んだファイナリスト企業28社の中から特に優れた12社の受賞が決定した。
サステナグロースカンパニーアワード2026
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