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2026.10.15 13:30

台湾で見て、日本で買う国境を越える「ショールーミング」

円安と訪日旅行の増加で、台湾における日本ブランドの買われ方が変わっている。台北で見た、新たな消費のかたちとは。マクアケ創業者による連載第68回。

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先日、台北へ出張に行ってきた。前回訪れたのはコロナ禍前だったので、およそ7年ぶりの台湾である。そこで多くの気づきがあった。

台湾は親日的で、日本企業の進出も多い。以前からユニクロや無印良品、吉野家などを街中で見かけることは珍しくなかった。それでも今回、久しぶりに台北を歩いてみて驚いたことがある。衣食住のあらゆる場面で、日本発のブランドの存在感が明らかに上がっているように感じたのだ。

2025年には台北・南港に約300店舗が入る「ららぽーと」が開業している。ニトリは18年に台湾30店舗目を出店していたが、現在は77店舗。JINSも今年、台湾100店舗に到達したという。無印良品も商業施設で当たり前のように目にするし、街を歩けばファミリーマートやセブン-イレブンの看板はもちろん、CoCo壱番屋やくら寿司、鳥貴族の看板まで次々と目に入ってくる。

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7年前も日本ブランドは多かった。ただ今回変わったと感じたのは、特定の有名ブランドが増えたというより、衣料、家具、眼鏡、外食など、日本における日常的なお店が、そのまま台湾の生活空間にも溶け込んで「当たり前の風景」になっているのである。あくまで現地を歩いた体感だが、その差はかなり大きいように感じた。

もうひとつ、大きく変わったのが価格面だ。現在(26年8月時点)は1台湾ドルがおよそ5円。2019年の同時期は約3.4円だった。単純計算すると、日本で1,000円の商品は、当時なら約294台湾ドルだったものが、今なら約200台湾ドルで買える計算になる。逆に日本人から見ると台湾の値札は以前よりかなり高く感じるが、台湾の生活者から見れば、日本で買う日本ブランドは相対的にかなり安く見える。同じ為替変化でも、どちら側から見るかで景色が逆転してしまう。もちろん、台湾の店頭価格がそのまま200台湾ドルになるわけではない。物流費や商品によっては関税なども加わる。また、為替差の調整などでさらに現地市場に合わせて値付けされる。現地の商業施設関係者に話を聞くと、ここに興味深い現象が起きているという。

日本旅行が「購買チャネル」になる

台湾から日本への旅行が、かつてないほど身近になっている。日本政府観光局によると、台湾からの訪日客は2019年の約489万人に対し、26年は700万人を大きく超えるペースで推移している。

そうなると、「どうせ年に何回か日本へ行く。日本は近いし、買い物も安い。だったら日本の商品は日本で買えばいい」という行動が自然に生まれる。台湾の店舗で見て、試して、気に入ったら、次の日本旅行で購入する。いわば「国境をまたぐショールーミング」である。

日本の本社から見れば、最終的に自社の商品が売れるので悪い話ではないだろう。しかし台湾の現地法人からすれば複雑だ。ある関係者が、台湾現地の売り上げは順調ではあると前置きしつつ「競合は同業ブランドではなく、もはや訪日旅行かもしれない」と冗談交じりに話していたが、あながち冗談とも言い切れない。ECによってリアル店舗がショールーム化するといわれて久しいが、今回は購入先がオンラインですらない。台湾の店舗が認知や試用を担い、日本旅行そのものが購買チャネルになる。企業が国ごとに引いた組織や損益の境界線を、生活者が軽々と越えているのだ。

為替、物価、移動コスト、ブランド体験。それらが国境を越えて一体になり、店舗の役割そのものを変え始めている。海外店舗は、その国で商品を売る場所だけではなく、別の国で買ってもらうための体験拠点にもなりうる。そんな消費の流れを、7年ぶりの台湾で目の当たりにした。時代がうねっている。


なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズ(現グロース)に上場した。

文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

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