IonQの受注残が、いま重要なのはなぜか
IonQにとって最大の懸念は二つある。売上高の拡大に伴って営業利益がそれ以上の割合で伸びる効果を示す「営業レバレッジ」と米国会計基準(GAAP)での純損失である。直近12カ月の純損失は約14億ドル(約2210億円)に膨らんだ。現金の出入りを伴わないワラント(新株予約権)の評価替えと、合併に伴う費用が大きく響いた。これに対して、同じ期間の売上高は約2億ドル(約316億円)にすぎない。最近の株価下落を経てもなお、同社の時価総額は売上高の61.7倍に当たる。S&P500では、この倍率は3.1倍である。
こうした状況で、将来の売上高が実際に立ち上がりつつあることを最もはっきりと示すのが、契約済みの受注である。経営陣は8月の決算説明会で、IonQの2026年の売上高見通しを2億8000万〜2億9000万ドル(約442億〜458億円)に引き上げた。この見通しには、SkyWater Technology(スカイウォーター・テクノロジー)の分が含まれていない点に注意したい。IonQが18億ドル(約2840億円)で買収した、半導体の受託製造会社(ファウンドリー)である。
とはいえ、受注残が厚いからといって、利益が出るとは限らない。IonQが実際に計上している売上高の利益率は、縮小している。売上高から原価を差し引いた利益が売上高に占める割合である「売上高総利益率(粗利率)」は、直近12カ月で29%と、1年前の54%から低下した。売上高は伸びているのに、売上高1ドルから同社の手元に残る粗利益は、以前より低下していることになる。
IonQの受注には、どんなリスクがあるのか
受注が売上高に変わるのは、納入したときだけである。そして、IonQの最新の契約のなかには、まだ稼働していない機種を対象にしたものがある。フロリダ国際大学との契約も、米国時間9月21日に韓国の量子技術企業SDTと結んだ契約も、対象の機種としてSuperion 256を指定している。量子コンピュータが計算に使う「量子ビット」を256個備えた先進機である。経営陣は8月の決算説明会で、256量子ビットのシステムを2027年に稼働させ始める計画だと説明していた。
DARPAとの契約にも、この契約ならではの不確定要素がある。「最大3億ドル(約474億円)」という金額は上限であって、支払いが保証されたものではない。最初に拠出される分を超える資金は、将来の政府予算しだいである。
顧客は実際にこうした機械を発注している。一部の契約は、納入のマイルストーンをいつ迎えるかによって時期が前後するものの、2026年下半期の売上高から、その影響が表れ始める見通しだ。もしIonQが報告する2026年の単体の売上高(SkyWaterの分を除いたもの)が、見通しの下限である2億8000万ドル(約442億円)を下回れば、それは三つのうちのいずれかを示している可能性がある。納入の遅れ、ハードウェアの検収(納入された機械を顧客が検査して受け入れること)にかかる期間の長期化、そして、節目の達成に応じて計上する売上高の先送りである。


