アップルによるLightning(ライトニング)ポートの導入は、アクセサリーが古い端末にしか使えなくなり、新たな買い替えが必要になるなど、物議を醸した。2023年9月12日に発売された「iPhone 15」シリーズでは、再びポートが変更され、業界標準である「USB-C」ポートが導入された。
本稿は、スマートフォン時代を形作った瞬間を振り返る「iPhoneの30日(30 Days of iPhone)」の29日目である。
消費者保護の法律が、より優れたiPhoneを求めた
この変更は、欧州連合(EU)の「共通充電器規格」をめぐる何年にも及ぶ規制当局との議論の末に実現したものだ。この規格は、2024年末までに特定のカテゴリーの家電製品に対し、独自の充電器を廃止してUSB-C規格を採用することを義務付けるものだった。アップルは、この義務化がデザインの革新を阻害すると主張したが、最終的にはLightningポートと、自社技術の使用を義務付けるライセンスプログラム「MFi(Made for iPhone)」による利益を放棄せざるを得なかった。
重要なのは、アップルが生産を分割して、EU市場向けにUSB-Cポートを搭載し、それ以外の世界向けにLightningポートを搭載するという、生産を細分化してコストを増加させるようなアプローチをとらなかったことだ。その代わりにiPhoneは、iPadやMacシリーズですでに採用されていたのと同じUSB-Cポートを採用した。これにより、Lightningアクセサリーの専門メーカーは、瞬く間に標準的なUSB-C対応のドック、ケーブル、モバイルバッテリーなどへと舵を切った。
iPhoneのLightning収入喪失がエコシステムに恩恵をもたらした
業界が得た利益は計り知れない。アップルの市場シェアにより、Android搭載端末と並び、あらゆる新型スマートフォンでUSB-Cが標準規格とみなされるようになった。マルチメディア分野の例を挙げると、最大10Gbps(ギガビット毎秒)のUSB 3転送速度により、4K映像を市販の外付けUSBドライブに直接保存できるようになり、一般のスマートフォンがプロ用カメラ機材に匹敵する実用性を備えるに至った。
EUが意図した通り、独自規格のケーブルや充電器というストレスの種は解消された。ベースアダプターを備えた1本のケーブルで、ヘッドホンから携帯電話、ゲーム機、スマートウォッチに至るまで、あらゆる機器に給電できるようになった。アップルはライセンス収入を放棄せざるを得なかったが、業界全体でケーブルやアクセサリーの規格が統一されたことで、ユーザーの選択肢は整理され、競争への障壁も低くなった。
本稿は「iPhoneの30日」の29日目である。前回は、iPhoneへの衛星通信機能の導入について検証した。



