彼の作ったアプリ、Flipagramは写真や動画と30秒の音楽ファイル組み合わせたミュージックビデオ風のクリップ(“Flip”と呼ばれる)が作成できる。10月のリリース以降、Flipagramはランキングを駆け上がり、第二子が誕生した頃には、87ヶ国でiPhoneアプリのダウンロード数で1位を獲得。月間ユーザー数は数百万人に達していた。
モヒットが新規の投資家にコンタクトするよりも前にSequoia Capitalから連絡が入ったが、彼は多忙を理由に面談を先延ばしにした。1月にSequoiaのパートナーでビリオネアのMichael Moritzと同僚のTim Leeがロスアンゼルスにあるモヒットの自宅兼オフィスを訪れ、手作りのペルシャ料理を食べながら話し合ったという。そして2月にはSequoiaに加え、Kleiner Perkins Caufield & ByersとIndex Venturesが総額7000万ドル(約84億円)を出資することが決まった。
これらのVCたちは、次世代の大型SNSを探し求めていた。2014年末時点でFlipagramの月間ユーザー数は3000万人に増えていた。フェイスブックが3年を要し、Snapchatが2年を要した規模に、Flipagramは僅か1年足らずで到達したのだ。Flipagramは今でも米国のiOSアプリの写真/ビデオカテゴリーでトップ3に入っており、作られたFlip数は2014年3Qからの1年間で165%増えた。
この夏、Flipagramの取締役にMoritzとKleiner PerkinsのJohn Doerrが就任したが、2人が同じ企業の取締役会に名を連ねるのはGoogle以来のことだ。「音楽レーベル各社は、Flipagramがメディアを創造し、シェアするサービスとしてTwitterに並ぶ存在になると信じている」とDoerrは言い「モヒットは先見性が優れている」と称える。
Flipagramは人々がYouTubeよりも早く投稿でき、ツイッターのVineやフェイスブックのインスタグラムよりも自由度が高く、深みのある動画が作れるサービスを求めていることを見抜いていた。「どの人にも語るに足るストーリーがある」とモヒットは話す。
Flipagramが他のサービスと大きく異なるのは、何千万もの楽曲リストの中から30秒間の音楽クリップを選び、動画に付け加えることができる点だ。(12月より音楽クリップの長さは60秒に増えている)モヒットは調達した7000万ドルの一部を使い、主要なレコード会社や音楽出版社のほぼ全てとライセンス契約を結ぶことに成功した。一方、インスタグラムはアプリ内で動画に音楽を付け加えることはできないし、Vineは選べる楽曲数が限定されている。Flipagramでは、iTunesやSpotifyのリンクが表示され、動画で使われている楽曲のフルバージョンを購入することができる。
以下、後編に続く。