AI(人工知能)は、新薬開発プロセスに変化をもたらしつつある。製薬におけるAIの最も有望な利用法の一つは、治療用抗体の改良だ。抗体は、体内にある特定の標的分子を認識し結合するタンパク質であり、がん、自己免疫疾患、感染症などの治療ですでに用いられている。
しかし、有用な抗体の発見は、依然としておおむね実験的なプロセスに依存している。抗体は、標的分子に強く結合しなければならず、また薬剤として利用するのに必要な物理特性を備えていなければならない。
AIは、抗体を実際に製造してラボで実験する前に、特に有望な配列を特定することで、このプロセスを迅速化できる可能性がある。
新たな研究で、AIを用いた現行の手法により、抗体をどれだけ効率的に設計できるかが検証された。この研究では、「AIntibody」と題した匿名のコンペティションが開催され、29の組織が参加し、AIが設計または選択した511種の抗体が提出された。その後、抗体が実際に製造され、実験による効果検証が行われた。
その結果、AIが最も役に立つのは、「有用な特性を備えた既存の抗体の改良」であることがわかった。一方、最も有望な抗体の特定や、ゼロからの治療用抗体の設計では、AIは安定した成果を残せなかった。
AIの予測を実験で検証
AIntibodyコンペティションでは、抗体開発を3つの段階に分けて検証が行われた。最初のテストでは、AIモデルは既存抗体の改良に取り組んだ。第2のテストでは、複数の類似した候補のなかから、最も効果的な抗体を特定する課題が与えられた。第3のテストの課題は、もとの実験データセットにはない、新たな抗体の配列を設計することだった。
どのテストでも、設計する抗体の標的分子は同じで、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)のタンパク質の一つだった。
参加チームには、コンペティションが終了するまで、開発した抗体のテスト結果の情報は与えられなかった。テストでは、抗体の重要な特性が2つ評価された。一つは親和性、すなわち抗体が標的分子にどれだけ強固に結合したかであり、もう一つは開発可能性、すなわち有用な薬剤となり得る物理特性を備えているかどうかだ。
抗体は、たとえ標的分子と極めて結合しやすかったとしても、不安定であったり、他の分子にも結合したり、抗体同士で凝固しやすかったりといった場合には、薬剤の候補としては見込みが薄い。



